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学校編1

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 県立国邑高校。
 県境部に近い県立の高校で広い地域から多くの生徒が通う。
 伊庭一刀と天宮雅もここの生徒であり、毎日通っている。
 二人は放課後に校舎の中を一緒に歩いていた。
 人気の無い場所、音が漏れず、人が入ってこない場所を探すために。

「一刀、ダメだよ」

 顔を蒼白にした雅が言う。
 いつも笑顔で明るく、同級生からも信頼されているクラスの人気者だが、今日は一日中顔が悪かった。

「だけどしないとダメだろう」

 一刀の言葉に雅は言い返せなかった。
 二人は高校生だが天宮神社の見習い神職でもある。
 そして天宮神社は古より密かに妖魔の討滅を行ってきた一族だ。二人もその役目に関わり幾度も討滅を行った。
 しかし、何回か前の討滅の時、討滅に失敗しかけた。そのため雅は自らの身体の中に妖魔を封じ込め封印した。
 一時的に成功したが、度々封印の力が弱まり身体を乗っ取られる事が頻発している。

「精気を分けるのに必要なんだよ。分けないとまた封印が解ける」

「……うん」

 弱々しく雅は認めた。
 人間の精神力であり妖魔に対して相互に強く干渉する精気。妖魔はこれを好んで食べるが影響を受けやすく、上手く使えば封印に使える。
 雅は天宮神社歴代巫女の中では有数の才能の持ち主だが、今は精気が少ない。
 封印が度々解けるのも精気が少ないからだ。
 そのため精気に溢れる一刀が度々雅に分ける必要がある。
 今日も学校の授業中、顔色が悪く精気が少ないのは明らかだった。
 神社に戻るまでの余裕も無いと判断した一刀は学校の中で移す必要があると判断して、精気を移すことが出来る場所を探していた。
 二人はやがて人気の無い使われていない倉庫、少子化により生徒が減少し使われなくなった教室の前にやって来た。
 この辺りは職員室や主要な教室などからも離れている上、階段の陰になっており、人が来ることは殆ど無い。
 扉は通常の教室の物と同じだが、室内に物を乱雑に置いているため、外に音が漏れる事は少ない。
 二人は教室に入るとその奥へ向かった。
 使われていない机を見つけ軽く埃を払うと、一刀は自分の制服、学ランをその上に置いて雅をそこに座らせた。

「それじゃあ行くよ」

「うん」

 一刀は人差し指と親指で雅の細い顎を持ち上げ、自分の顔に向けさせるとゆっくりと唇を重ねた。
 精気を移すには濃厚な接触になるほど精気の供給量が多い。
 ただキスをしているのではなく、それを介して精気を移している。より濃密にするため舌を絡ませ合うのも必要な事であった。
 一刀は更にセーラー服の中に手を入れて形の良い大きな雅の胸を掴む。
 艶やかな肌で指が埋まるほど柔らかいが、強く握ると奥で跳ね返るような弾力がある。
 非常に気持ちの良い胸だ。
 先端が堅くなってきたところでもう片方の手をスカートの中に入れて鼠径部を撫でた後、ショーツ越しに裂け目の縁をなぞる。

「あうっ」

 雅が色ぽい艶声を上げた。直後に緊張しているのか身体が強ばる。
 一刀は一度、スカートに入れた手を離して緊張を解そうと雅の髪を優しく撫で指で梳く。
 すると緊張がほどけこわばりが無くなり一刀は愛撫を再開する。
 精気の移動量は双方の感情の高ぶりにも比例する。お互いに感情の高ぶりが高いほど移動量が増える。
 更に雅の感情を高めるように一刀は更に愛撫しようとした。

「! 誰か来る!」

 しかし、遠くから人が来る足音を聞きつけて一刀は愛撫を止めた。
 精気を操る術は一刀も心得ており、感覚を鋭敏にする能力はある。この時も人の接近を知るために聴覚を高めており、遠くから接近してくるのを探知した。
 一刀は雅を守る様に両手で抱き寄せ、耳を澄ませる。
 足音が近づいてくる。
 入った痕跡がないように気を付けていた。それでも中にいるのを気が付かれないよう、静かにする。
 万が一入ってこられても捜し物をしていたように装うつもりだ。
 扉が開くまでは、雅と一緒に息を潜めて留まる。
 やがて足音は階段の方へ去って行き、離れて行った。

「気が付かれなかったようだ。雅?」

 話しかけても返事が無かったので見て見ると雅は顔を真っ赤にして俯いていた。

「大丈夫」

「う、うん。もう良いから」

 そう言って雅は立ち上がると自分の荷物を持って、部屋を出て行こうとした。

「待てよ、まだ精気を十分に送っていない」

「もう大丈夫。十分貰ったから」

 それだけ言い残すと雅は部屋から出て行った。

「触られちゃった」

 部屋から出て下駄箱へ向かう途中、雅は呟いた。
 一刀の愛撫は非常に気持ちよく、何時までも撫でて貰いたいと思えるほどだった。
 しかし、触られる度に身体が玉兎に乗っ取られたときのことを思いだす。
 自分には出来ないほど積極的に一刀に求めていく。
 消極的な自分には決して出来ない。
 一刀は優しい、こんな自分にも優しく気遣いをしてくれる。
 未だに抱かれて緊張する自分を察して髪を撫でて緊張を解してくれた。
 足音が響いたとき守る様に抱きしめてくれた。その時の自分の心臓と一刀の心臓の音が共鳴しているように感じて幸せだった。
 だが、それが余計に雅の心に突き刺さった。
 玉兎も前に同じ事を行っていた。
 自分の身体なのに自分が乗っ取られている間の方が、一刀との関係を進めている。
 自分の存在価値が無くなっているように雅は思えて、情けなくなり一刀の下から一刻も早く離れたかった。
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