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神社編3

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「って何をしているんだ!」

 雅の身体を乗っ取り、一刀の部屋に入ってきた玉兎は、衣装ダンスに手を伸ばす。

「服を着ろと言ったのはお主じゃろう」

「雅の部屋のやつを選べよ」

「か弱い女子を裸で外に放りだすとは、お主は薄情じゃな」

「裸で入って来てよく言えるな」

 よよよよと泣く真似をする玉兎に言った後、一刀は疲れを感じでベッドに座り顔を下げた。
 ずっと雅の事を考えて悶々としていた上に、玉兎が入って来てから、振り回されっぱなしだ。

「どうじゃこれは? 適当な物が無かったのでこれにして見たが」

 尋ねられ顔を上げると、一刀のシャツの袖に腕を通して羽織っただけの玉兎がそこにいた。
 袖は長すぎて袖口からは手が出て居らず途中で力なく垂れる。
 ボタンを締めず正面は開いたままで、両胸はかろうじて隠れているが真ん中の谷間は丸見え。秘所などすべすべの肌を余すことなく見せつけている。
 肩はシャツが掛かって隠れているが、鎖骨は半分だけ出ており色っぽい。
 いわゆる裸ワイシャツだ。
 自分のワイシャツを雅の身体を乗っ取った玉兎が羽織ると普段とのギャップから良い扇情的な光景となる。

「どうじゃ?」

 袖に隠れた右手でポニーテールを掻き上げ左手は腰に当て片目を瞑り腰ポーズを決める玉兎。

「それを貸すから早く雅の部屋に戻って服を着ろ!」

 どストライクすぎて襲わないように目を逸らした一刀は玉兎に命じた。
 まだ養父母は隣接する社務所にいる。理性が崩壊して玉兎の結界が破れたらバレてアウトだ。
 目を逸らして隣の雅の部屋に戻そうとする。

「しょうがないのう。では向かうか」

 素直に玉兎が言う事を聞いて一刀は一安心した。しかしそれは束の間の安息だった。
 玉兎は座っている一刀の手を掴み、引っ張り上げる。

「今の世の服装は分からぬ。お主も来て、何を着れば良いか教えてくれぬか」

「はあ?」

 思いがけない言葉に一刀は素っ頓狂な声を上げる。
 裸ワイシャツの幼馴染みの部屋で二人で彼女の服を選ぶ。
 玉兎に操られているとはいえ、勝手に入って服を物色するのは倫理的に問題がありすぎる。

「自分で選べ」

「つれないのう。そこまで言うのならしょうが無い。しかし自分で選ぶには自信がない、この身体の母親に頼んでみるかの。おー母上、頼みがあるのじゃが」

「一緒に来い!」

 大声で養母を呼ぼうとする玉兎の手を握って隣の雅の部屋に入る。
 玉兎の結界が効いているのか養父母が来る気配は無かった。

「半裸の女子を部屋に連れ込むなどお主も結構スケベじゃのう」

「裸で男の部屋に入ってきたお前に言われたくない」

「ほほほ、では選んで貰おうかのう」

「う……」

 許嫁とはいえ、死守運気の少年である一刀にとって女の子である雅の部屋に入るは畏れ多い。
 雅は気にしていないが、女の子の部屋はどうしても神聖不可侵な聖域のように思えてしまう。
 なので足を踏み入れるだけで緊張するのにそこに有る服を選べというのだ。難易度が高すぎて一刀には妖魔の死闘よりも厳しい戦いとなる。
 一刀は白い衣装ダンスに目を向ける。
 まともに入ったことは無いが、長年一緒に住んでおり大体何処に何を入れているかは分かっている。しかし、一刀自身が開けるとなると抵抗がある。
 タンスを前にして一刀の身体は固まった。その時白い衣類が一刀の頭に落ちてくる。
 手に取ると見覚えがある。自分が登校用に来ているワイシャツだ。そしてほのかに香る雅の甘い香りと玉兎の淫靡な香り。

「その衣にも飽きた。早く選んでくれんかのう。風邪を引いてしまうぞ」

 ワイシャツを放り投げた腕を上げたままベッドの上に半身を横たえた玉兎が促した。

「お前な、前を隠しておけよ」

「何度も脱がしておいて今更じゃのう」

 傍らにあった雅お気に入りの大きな熊のぬいぐるみを抱き寄せて前を隠すように後ろから抱きしめる。
 玉兎の上半身ほどもある大きなぬいぐるみで上半身を隠すことが出来た。
 しかし玉兎がぬいぐるみの左側から顔を出し両側から白く細い両手を回して抱き寄せ、細く長い両脚で作った胡座の上に載せると、扇情的でしかない。

「さっさと選ばぬと結界を壊し、両親を呼ぶぞ」

「一寸待っていろ」

 一刀は目を逸らして目の前の作業に集中した。タンスの引き出しを引くと、そこには女性の下着が丁寧に畳まれておかれている。
 雅らしい殆どが白いショーツとブラ。機能性重視で装飾は無い。
 ただ、ショーツは全て小さく、雅の下半身の細さを想像してしまう。
 一方のブラは巨大すぎる乳房を包むために大きく、圧倒的な存在感を示しており、視線を思わず別方向に回さなければ理性が吹き飛ぶ。

「なっ」

 だが、向けた場所が悪かった。
 引き出しの奥に異彩を放つモノが存在していた。
 真っ黒な布地を際どいカットにして過剰なほどのフリルが入ったショーツとブラのセット。
 雅がこんな物を買っていたとは知らなかった。

「ほほほ、良いものを見つけたのう」

 いつの間にか隣に来ていた玉兎が耳元囁くと、一刀の手からいつの間にか持っていたブラとショーツを奪うと身につけ始めた。
  スラリと長い足を片方ずつショーツの中に入れて指先で引っ張り上げて行く。クロッチが秘所の部分に当たると、両端のゴム部を限界まで伸ばして布地を身体に食い込ませてから離す。
 ブラも両腕に腕を通したあと、身体を捻り胸を反らし背中が見えるようにして後ろのホックを留めた。

「どうじゃ?」

 ブラの位置を両手で調整しながら玉兎は一刀に尋ねた。

「サッサと服を着ろ」

「相変わらずむっつりじゃのう。横目でチラチラと見とるくせに。ガン見してよいのじゃよ」

 コロコロと笑って煽る玉兎に一刀は耐える。

「服も選んでくれぬかのう」

  一刀は目を逸らして両開きのタンスを開いた。普段から地味な服を着ているため、無難な物を選ぶ事は簡単だ。
 勝手に服を取り出す罪悪感はあるが、幾分かマシだ。
 ジーンズと黄色いシャツに白のブラウスを選んで渡そうとする。

「ほほほ、これは面白そうじゃ」

 一刀の選択を無視して、衣紋掛けに掛けてあった小袖と袴に手を伸ばす。
 素早く袖を通し、帯を締めて手慣れた手つきで袴を履く。

「どうじゃ?」

 腰を捻り髪を掻き上げる仕草をして一刀へ流し目で尋ねる。
 サラシや襦袢を身につけていないため、少しはだけた小袖から黒のブラが顔を覗いている。
 下履きを履いていないため、ショーツの端が袴の開口部から見える。
 何より雅の身体で彼女が絶対にしない誘うようなポーズと瞳で一刀に尋ねてくる。
 いつも見慣れている雅の巫女姿なのに玉兎がラフに着ると扇情的な姿に見えてそのギャップに一刀の心はざわめく。

「着崩して着るな。しわになる」

「出雲阿国を真似してみたのじゃが、似ておらんかのう」

 玉兎は左右の腕を振り、その場で回転してみせる。
 小袖の袖が風をはらんで大きく広がる。途中で逆方向に回転を変えて布地は旗のように揺れ動き、着崩された小袖は更に開いて肌とブラを見せ、開口部からショーツの黒が揺れる。

「止めろ、下に響く」

 別棟でも二階で五月蠅くすると社務所に届いてしまう。結界があるとはいえ聞こえないか一刀は心配だった。

「妾の舞はつまらぬか。まあ、かつて妾を討滅しようとした姿をするのは妾とて面白くない。他の衣類にしようぞ」

 玉兎は来ていた巫女服を乱雑に脱ぎ、身につけていた衣類を宙に放る。ヒラヒラと舞いながら衣類に移った玉兎の香りが回りに漂る。揺れる衣類のはためきもあって幻想の世界に一刀を誘った。そのため行動が遅れ床に散らばった巫女服を回収する。
 一方、裸に戻った玉兎はタンスの中に手を入れた。
 出して来たのは雅が登校の時に着るセーラー服だ。
 白地に少し明るい青の襟に赤いリボンが付いておりアクセントになっている。
 スカートは襟と同色。
 古くからある、オーソドックスなものだ。

「どうじゃ?」

 着替え終わった玉兎は両手を広げて室内で一回転して一刀に見せつける。
 回転によってポニーテールと一緒にセーラー服もふわりと浮かぶ。
 袖口からは健康的な腋とブラの一部がチラリと見え、短い丈のスカートが舞い、ショーツのクロッチが見え隠れする。
 セーラー服も下をスカートに入れていないため、裾が舞ってブラが見え隠れする。
 回転が終わり、ゆっくりと布地が下がるが巨大な乳房に押しとどめられ、身体との間に大きな空間を作り、カーテンのように揺れる。

「中々、魅力的じゃろう」

 カーテンの揺れが収まる前に玉兎は身体を前に折、一刀の顔を下から覗き込む。
 逆三角形の胸元からスカートまで見える奥深い谷間が覗き、一刀は咄嗟に顔を背けた。

「ふむ、まだ足りぬか」

 玉兎はタンスの引き出しを開けると、中から黒いタイツを取りだして履き始める。
 純白の白く細い足が縮みきった黒タイツの中へ入っていく。
 つま先に引っ張られたタイツはピンと伸びて足のラインを弛みなく完璧になぞり、足を徐々に包み込んで黒光りする彫像に変えて行く。

「どうじゃ」

 両手でスカートの両側の裾を摘まんで足をクロスさせて見せる。
 先ほどと殆ど変わらないのに、タイツを履いただけで、ウサ耳も無いのに玉兎のバニーガール姿が一刀の視界で被る。
 目の前の姿と記憶と想像の相違に一刀は目眩を覚える。

「ほほほ、かなり来ているようじゃの。もっと堪能せぬか?」

 玉兎は一刀の左腕に両腕を絡めて胸を押し付け顔を肩に乗せて上目遣いで尋ねてくる。
 さらに足を一刀の素足に密着させてタイツ越しに自分の体温を伝える。
 玉兎の連続攻撃に一刀の頭は沸騰寸前となる。

「雅! 一刀!」

 だが下から響く養父の声で瞬時に血の気まで引き、冷や汗が流れた。
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