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神社編1

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「せいっ!」

 天宮神社の一角にある道場に気合いの入った声が木霊する。
 発したのは純白の小袖に浅葱色の袴を履き真剣を振るう少年。
 名前は伊庭一刀、間宮神社の見習い神職で養子だ。
 天宮神社は古より続く神社だが、裏では妖魔を討滅する役を果たしている。一刀もその一員であり、妖魔を滅するために剣術の稽古を欠かさなかった。

「よし、こんなもんだろう」

 日課の鍛錬を終えてタオルで汗を拭うと道場を後にした。

 タンッ

 道場を出ると、隣の弓道場から乾いた音が響いた。
 一刀が扉から中を覗き込むと、一人の少女がゆみの鍛錬をしていた。
 純白の小袖に緋色の袴を履き、和弓を引くのは天宮神社の一人娘天宮雅だ。
 彼女も降魔の役目を果たす一員であり、日々の鍛錬を欠かしていない。

「やり過ぎだろう」

 その姿を見て一刀は呆れ、心配になった。
 一刀が剣術の鍛錬を始める前から雅は弓道場に入り弓を射続け、今も放っている。
 的に刺さった弓の数を見てもずっと放ち続けているとしか思えない。
 途中で回収に行っているとしたら、凄まじい量の矢を放ち続けたことになる。

「もう止めたらどうだ」

 一瞬、一刀の声に反応した雅の動揺は弓矢に伝わり、矢は的を大きく外れて、背後の土壁に刺さった。

「鍛錬中に話しかけないで」

 弓を引いているときに声を掛けてはいけない。競技者が声がした方向を向いて弓を放ってしまう事故を防ぐためだ。

「分かっているけどさ」

 一刀もそのことは分かっていたが、雅の身体の方が心配だった。

「このところ、ずっとその調子だろう」

 ここ数日、雅は同じような鍛錬を続けている。

「弓が上達する前に身体を壊すぞ」

「研鑽して、より上に行かないと生き残れないわ」

 先日の役目で、死にかけた上に自らの身体に封印した妖魔に身体を乗っ取られ、自らを危険に曝した。何より一刀を危険に曝したことが雅にはショックだった。
 二度と窮地に陥らないよう日々の鍛錬を強化して自らを強くしなければならない。雅はそう思ってひたすら鍛錬を続けようとした
 だから再び矢を番えて弦を引こうとする。

「あ」

 しかし次の瞬間、雅は膝から崩れ落ちた。すかさず一刀が駆け寄り後ろから雅を抱きかかえる。

「本当に練習のやり過ぎだ。戻った方が良い」

 一刀は雅の顔をのぞき込み優しく語りかける。それを見た雅は顔が赤くなり身体が熱くなるのを感じた。
 そして身体の中から湧き出した衝撃に押されるがまま、一刀の唇に自分の唇を押し付けた。

「!」

 突然の事に一刀は受け止めることも出来ず、道場の床に倒れ込む。
 一刀を押し倒して尚唇を離さず、舌を入れて一刀の口中を貪る。
 ようやく唇を離した雅だが跨がったまま熱に浮かされたように一刀の小袖を脱がし更に袴の結び目に手を伸ばそうとする。

「ちょ、ちょっと、待って雅! ここじゃ不味い」

「はっ」

 結び目を解いたところでようやく雅は我に返った。

「ご、ごめんなさい」

「いいよ。それより精気が足りないんじゃないか?」

「そ、そんな事は」

 雅は更に顔を赤らめ狼狽えつつ言う。

「封印が解けないようにするために精気を渡さないとまた危険な事に陥るよ」

 諭すように言う一刀だがそもそもの原因を作ったのが一刀が一線を越えたからだった。
 しかし、過去を変えることは出来ず、今は出来る事を続けるしか無い。

「でも」

 それでも雅は尚抵抗があった。
 純潔を守らなければ巫女の力を失う。かつて一刀の願いを叶えるために、自分の望みを叶えるために一刀を受け容れて力を失ってしまった。その時は一刀の力によって何とか無事だったが、一刀を窮地に陥らせてしまった事実が重くのしかかり、一刀の身体を拒んでしまう。
 本当は好きだしやりたいのだが、どうしても一刀の窮地を思い出してしまい積極的になれない。
 他にも理由はあるが、巫女の力を失った今、一刀から精気を貰わなければならない身体であるにも関わらず一刀との交わりを拒んでいた。

「大丈夫、そこまでやらないようにするから」

 一刀も雅の気持ちを悟り、刺激しない程度の触れ合いで済ませようとした。

「……うん」

 頑なに一刀が耳で囁くと雅は小さく頷いた。
 一刀は雅の小さい顎を右手で軽く持って引き寄せると再びキスをした。そしてゆっくりと精気を雅に送る。

「!」

 キスの刺激と送り込まれる精気で雅の身体はドンドン熱くなる。そして更に一刀を求めるように両腕を一刀の首に回し抱きついて身体を擦りつける。
 十分に身体が出来上がったところで、一刀は雅の小袖の中に支えている腕を背中から回して手を入れた。晒しの上から形の良い胸を握り揉み始める。
 徐々に乳房が膨れ、先端の突起が堅くなり浮き出るとそれを指で弄って行く。
 更に袴の開口部から手を入れて鼠径部に沿って指を這わせて下着の上から秘所を擦る。
 一瞬、雅の身体がビクッと動くが、蕩けるように大人しくなり更に続ける。

「いや!」

 突然、雅が腕を突き出して一刀を突き飛ばして離れた。
 距離をおいた雅は、腕で開けた胸元を足は脚を曲げて秘所を隠していた。
 肌は上気し、血色の良いピンク色をしているが目尻に涙が浮かんでいた。

「ご、ゴメン」

 一刀が謝ると雅は何も言わずに道場を後にした。



「もー何をやっているのよ」

 自分の部屋に戻った雅は、自分のベッドに倒れ込み枕に顔を埋めて叫んだ。
 一刀から離れたのは、嫌だったからでは無い。
 気持ちよかったからだ。
 一刀の愛撫が気持ちよすぎていけないところまで行ってしまいそうだったからだ。
 なのに一刀から精気を貰わないといけないのに、拒絶してしまった。

「もお、あたしのバカ」

 雅は巫女服を脱ぎ始め、一糸纏わぬ姿になると身長とほぼ同じ大きさの姿見の前に立った。
 スレンダーだが出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる自分の身体。
 小さく引き締まったお尻は自分でも自信があるほど形が良く丁度良い大きさだろう。
 肌もきめ細かく陶磁器のように白く輝いている。

「むう」

 ただ胸は少しいただけない。大きすぎて持て余してしまう。大きすぎて少しコンプレックスを抱いている。

「で、でも一刀は好きなのよね」

 最初に一刀と交わったときの事を思い出すと今でも雅の身体は熱くなる。
 幼馴染みで何時か結ばれる事を約束していた。だがそれは遙か昔、親が決めたことであり、自分にも一刀にも決定権は無かった。
 だが自然と暮らしているとドンドン男として逞しくなっていく一刀の姿に雅は引かれていった。しかし、婚約は親が決めたことであり一刀が本当に自分を好きになってくれているか不安な日々を過ごした。
 先日、一刀が自分を求めて来たのをしって驚いたがそれ以上に嬉しかった。巫女としての役目を果たせなくなるがそれでも構わなかった。
 結果的に一刀が自分に力を入れて支えてくれる事も非常に喜ばしかった。
 だから、一刀が触れて力を注ぎ込んでくれた部分が愛おしい。

「うっ」

 身体の疼きが強くなり雅は少しでも治まるように疼く箇所を手で揉み始める。

「あ……」

 そして、臍の部分を摩ったとき身体が思い出してしまった。
 玉兎に乗っ取られたとき、一刀が自分の臍を執拗に責めたことを、その官能的な刺激を。
 そしてそれが自分が身体を乗っ取られた時である事を。
 思い出すと他の部分も乗っ取られて一刀と交わったときの事を思い出して疼く。
 自分の身体に起こったことなのに、いや起こったからこそ不安になる。

「あんな事、自分には出来ない」

 一刀に求められてそれに答えるのは嬉しかった。それだけで満足だった。
 しかし、自分から一刀の身体を求めて行くなど考えてもいなかった。しかし、自分の身体の中に封印している玉兎は、精気のためとはいえ一刀の身体を求めた。
 そして自分の身体で一刀を喜ばせた。

「私、出来ない。一刀が比べてきたら、私、何も出来ない」

 玉兎のような行為は出来ない。
 同じ身体なのに、行う行為は全く違う。
 もし一刀に比べられたら自分は負けてしまう、と雅は思い、一刀に捨てられるのでは無いかと不安だった。
 先ほど一刀を拒んだのは玉兎と自分を比べられるのを恐れた故だ。
 そんな意識が無くても一刀は思い出して、無意識に比べるだろう。
 その時の評価を恐れると雅は身体を交わらせることは出来なかった。
 雅はタンスを一目見た。
 この前の下校途中に密かに買ったアレを着けてみようかと思った。

「いや、恥ずかしい」

 焦燥感から勢いで買ってしまったが、部屋に戻って出して見ると恥ずかしくなって奥に仕舞ってしまった代物だ。
 両親にも話せない。
 話したら一刀との事も話さなくてはならず、厳格な両親の事だから一刀と離ればなれにされてしまう。それだけは死んでも雅は嫌だった。
 なので誰にも相談出来ず、一人抱え込むことになった。

「うっ」

 再び身体の疼きが強くなった。
 玉兎が一刀を貪ったときのことを身体が思い出し、その時の刺激を求め始めたからだ。
 雅は必死に身体をさすり、秘所の回りを指でなぞる。それでも刺激を求める欲望は治まらない。
 仕方なく、割れ目に指を入れて、小さな突起を軽くなぞる。

「あうっ」

 その刺激に軽く絶頂するが更に欲望は強くなる。愛液が流れ始め、不味いと思い抜こうとするが指は止まらない。
 強引に抜いたとき安堵感より、欲望を満たせないという喪失感の方が強かった。

「い、一刀……」

 一刀に抱いて欲しいと雅は思った。身体もそれを求めていたが、不安からそれは出来なかった。

「あ、ああ……」

 欲望のはけ口を見つけられないまま、雅はベッドの上で喘ぎ、自慰をし続け、やがて意識を失った。  
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