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懇願

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「うぐ?」

 地面とは違う感触に鬼は疑問を持ち、足で裕樹の身体を踏みにじる。

「ぐっ」

 踏みつけられた痛みで裕樹が無意識にうめき声を上げる

「止めて!」

 裕樹の痛みの声を聞いた美羽は鬼に向かって止めるよう懇願した。

「ぐは」

 だが美羽の声を、嘆願する美羽の声を聞いた鬼は諧謔の笑みを浮かべると、裕樹を踏みつける足へ力を入れた。

「がはっ」
「止めて!」

 裕樹が悲鳴を上げ、美羽が泣き叫び、鬼が笑う。
 散々いたぶってくれた女の声を聞いて鬼は復讐心を満足させていた。
 そして、さらに絶望の声を聞こうと、足に力を入れる。

「があっ」

 裕樹の身体から骨のきしむ音が響いてきた。
 その音に美羽は恐怖を感じ声すら出なかった。

「や、やめて、もう止めて」

 ようやく美羽は声を出すことが出来た。その声は奪われる恐怖で震えていた。
 美羽の声の耳障りが良くて鬼は足を一度上げた。

「ほっ」

 裕樹が開放されたことで、美羽は安堵の溜息を漏らした。
 だが、ほっとしたのもつかの間、鬼は足を上げきると、勢いよく足を裕樹に向かって下ろした。
 鬼が振り下ろした足は凄まじい勢いで裕樹の身体に向かう。直撃すれば裕樹の身体は吹き飛んでしまうだろう。

「やっ」

 その様子が身体能力が高まり動体視力が良くなっている美羽にはコマ送りのようには見えた。
 刻一刻と鬼の足が裕樹を踏み潰そうとしている動きに恐怖で引きつった。

「止めてーーっっ!」

 裕樹に足が直撃する寸前、美羽は無意識に叫び、袖から呪符を取り出す。
 身体から光が漏れ出すほどのありったけの力を呪符に込めた美羽は鬼に投げつけた。
 弾丸のような速度で放たれた呪符は裕樹が粉砕される前に鬼に直撃した。

「ぐあああっっっ」

 これまでとは全く異次元の威力で鬼の身体は浮き上がり、悲鳴を上げながら遙か後方へ吹き飛ばされた。

「があっ」

 吹き飛ばされた鬼は地面に叩き付けられ衝撃で、うめき声が出る。
 その後も勢いは止まらず、地面を十数メートル転がってようやく止まった。

「がうっ」

 止まるとすぐに自分を攻撃してきた相手を痛めつけた相手に向かって憎悪を秘めた視線を向ける。
 そして土煙の向こう側から人影が現れた。
 いや、人影ではなかった。
 頭から細長い物体が伸びていた。
 土煙が上の方から徐々に晴れてゆき、姿が見えた。
 頭から突き出た細長い物体はウサギの耳だった。
 そのウサ耳を装着していたのは、美羽であった。
 だが、その服装は先ほどまで着ていた巫女服姿ではなくバニーガール姿だった。
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