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初めてのお茶会
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「エレナ、準備はよろしくて?」
「はい」
お義母様にお茶会に誘われたあの日から、お茶会でのマナーをアリアに教えてもらったり、勉強をしたり、ひたすら走り込みと筋トレをしたりしていると、あっという間に当日になった。
私はお義母様の後に続いて馬車に乗り込む。
アリアやお義母様のメイドさんは別の馬車で行くらしく、私はお義母様と二人っきりだ。
やった、とうとう馬車に乗ったよ! 中は想像通りだね。でも思っていたよりも広いな。
馬車の中をきょろきょろと見ていると、お義母様が私を見て言った。
「エレナは外に出るのは初めてなのよね。窓を覗き込むようなことはしてはなりませんよ」
「分かっております、お義母様」
もう何度も言われたことに頷く。
本当は外を覗こうと思っていたけど、アリアに何回も言われ、お義母様にも言われたらそんなことはできない。
しかたないから、座ったままで見える範囲で我慢しよう。
お義母様と向かい合って座っていると、馬車が動いた。
揺れを覚悟してぎゅっと目をつぶるが……あれ、揺れない?
ファンタジー世界の馬車ってガタガタしてお尻が痛くなるものだと思っていたのに。
私の想像とは違い、全然揺れることなく、とても快適だった。
窓から少しだけ街並みが見える。
……すごい、大きい家がいっぱい並んでいて綺麗。
私の家と同じような形の家が均等に並んでいて、とても統一感のある街並みだ。
全体的に白ベースで、汚れなど全く見えない。
ここは、多分貴族の暮らす辺りなんだね。
身を乗り出さないように気を付けて窓の外を見ていると、馬車は一つの門を通った。
もう着いたのかな。まだ家を出てから五分も経っていないと思うけど……。
「エレナ、着きましたわよ」
お義母様の声とともに馬車が止まる。
まじか。この距離なら余裕で歩いて来れるよ。短距離でも馬車を使うなんてさすが、お金持ちだ。
馬車のドアが開けられた。
馬車を降りるのは私から、だよね。
出る前にアリアに教えられた通り、お義母様よりも先に立ち上がると、馬車の外にアリアが立っていた。
うわ、こわ……。下を見るとそんなに高くはないはずなのに、すごく高く見えた。
階段は用意されているが、ヒールのある靴でこけずに下りられる自信がない。
「下を向いてはなりません」
後ろからお義母様がこそっと言う。
無茶だよおぉぉぉ。下を向かずにどうやって降りろって言うの!?
そんな心の内を隠すために、とりあえず前を見て微笑と、見覚えのない執事さんが立っていることに気が付いた。
この家の人がいたよ! いよいよ失敗がゆるされず、私はアリアの手を借りて、どうにか下を見ずに馬車から降りることができた。
正直、落ちることを覚悟していた。
降りた後も冷や汗が止まらず、馬車を降りるお義母様を見ると、お義母様は誰の手も借りずに、一人で降りた。しかも全く下を向くことがなかった。
か、かっこいい……。私もあんな風になりたい。家に帰ったら馬車を降りる練習をしよう。
「お待ちしておりました、フィオーレ夫人」
お義母様が降りるのを待っていたのか、執事さんが前に出てくる。
「どうぞ、ご案内いたします」
「エレナ、行くわよ」
「はい」
執事さん、お義母様、私、アリアたちの順番で歩く。
うわあ、お花がすごい綺麗。じっくり見たいよー!
まっすぐ前を見ていても視界に入ってくるお花達は、うちにある花壇とは比べ物にならないくらい咲き誇っていて、とても華やかだ。
少し気を抜くときょろきょろしてしまいそうになるので、私はただひたすらお義母様の背中を見て歩いた。
角を曲がり、お屋敷の横側。視界に飛び込んできたのはとてつもない量の花だった。
「わぁ!」
うちの庭園はシンプルな感じで、花壇に咲く花はどれも足首くらいまでの高さだ。
だけどこの家のお花は違った。
背の低い花から背の高い花。どれも見たことのない花ばかりで、色々な色で溢れているが、派手ではなく、とてもセンスのいいお庭。
お花にはそれほど興味のない私ですらも目を奪われた。
庭園っていうより、花園って感じね。
「綺麗ですね、お義母様!」
「お気に召しましたか?」
「はい、とっても! ……え?」
お義母様に話しかけたはずなのに、返って来たのは違う女の人の声だった。
え、誰かいたの? 見えないけど……。
きょろきょろする私を見て、お義母様が少し笑い、言った。
「お待たせしてしまったみたいですね」
そのままお花の間を縫って中に入って行く。
私も慌ててお義母様の後に続くと、花園の中心にテーブルと椅子が並んでおり、そこに女の人が三人座っていた。
その後ろにはそれぞれメイドさんたちが一人ずつ立っているので、どこかの貴族だと分かる。
しまった、はしゃぎすぎた! だって全然見えなかったんだもん。
慌てて取り繕った笑みを浮かべる。
「いらっしゃい、オリーヴィア」
とても優しい雰囲気の女の人がお義母様を親し気に呼んだ。
さっきの声の人だ。おそらくこの人が招待してくれたのだろう。
お義母様はその人に微笑んで、皆を見回した。
「座る前に、紹介させてちょうだい」
お義母様の視線を受け、私は一歩前に出る。
「フィオーレ家の長女、エレナ・フィオーレと申します。本日はわたくしまでお招きいただきましてとても嬉しく思います。今日のこの出会いに祝福があらんことを」
最初の頃はお義母様に何度もやり直しさせられた初対面の挨拶をする。今ではもう失敗する心配などないので、我ながら堂々とできたと思う。
礼をした私は皆の顔を見てにこっと微笑んで見せた。
「はい」
お義母様にお茶会に誘われたあの日から、お茶会でのマナーをアリアに教えてもらったり、勉強をしたり、ひたすら走り込みと筋トレをしたりしていると、あっという間に当日になった。
私はお義母様の後に続いて馬車に乗り込む。
アリアやお義母様のメイドさんは別の馬車で行くらしく、私はお義母様と二人っきりだ。
やった、とうとう馬車に乗ったよ! 中は想像通りだね。でも思っていたよりも広いな。
馬車の中をきょろきょろと見ていると、お義母様が私を見て言った。
「エレナは外に出るのは初めてなのよね。窓を覗き込むようなことはしてはなりませんよ」
「分かっております、お義母様」
もう何度も言われたことに頷く。
本当は外を覗こうと思っていたけど、アリアに何回も言われ、お義母様にも言われたらそんなことはできない。
しかたないから、座ったままで見える範囲で我慢しよう。
お義母様と向かい合って座っていると、馬車が動いた。
揺れを覚悟してぎゅっと目をつぶるが……あれ、揺れない?
ファンタジー世界の馬車ってガタガタしてお尻が痛くなるものだと思っていたのに。
私の想像とは違い、全然揺れることなく、とても快適だった。
窓から少しだけ街並みが見える。
……すごい、大きい家がいっぱい並んでいて綺麗。
私の家と同じような形の家が均等に並んでいて、とても統一感のある街並みだ。
全体的に白ベースで、汚れなど全く見えない。
ここは、多分貴族の暮らす辺りなんだね。
身を乗り出さないように気を付けて窓の外を見ていると、馬車は一つの門を通った。
もう着いたのかな。まだ家を出てから五分も経っていないと思うけど……。
「エレナ、着きましたわよ」
お義母様の声とともに馬車が止まる。
まじか。この距離なら余裕で歩いて来れるよ。短距離でも馬車を使うなんてさすが、お金持ちだ。
馬車のドアが開けられた。
馬車を降りるのは私から、だよね。
出る前にアリアに教えられた通り、お義母様よりも先に立ち上がると、馬車の外にアリアが立っていた。
うわ、こわ……。下を見るとそんなに高くはないはずなのに、すごく高く見えた。
階段は用意されているが、ヒールのある靴でこけずに下りられる自信がない。
「下を向いてはなりません」
後ろからお義母様がこそっと言う。
無茶だよおぉぉぉ。下を向かずにどうやって降りろって言うの!?
そんな心の内を隠すために、とりあえず前を見て微笑と、見覚えのない執事さんが立っていることに気が付いた。
この家の人がいたよ! いよいよ失敗がゆるされず、私はアリアの手を借りて、どうにか下を見ずに馬車から降りることができた。
正直、落ちることを覚悟していた。
降りた後も冷や汗が止まらず、馬車を降りるお義母様を見ると、お義母様は誰の手も借りずに、一人で降りた。しかも全く下を向くことがなかった。
か、かっこいい……。私もあんな風になりたい。家に帰ったら馬車を降りる練習をしよう。
「お待ちしておりました、フィオーレ夫人」
お義母様が降りるのを待っていたのか、執事さんが前に出てくる。
「どうぞ、ご案内いたします」
「エレナ、行くわよ」
「はい」
執事さん、お義母様、私、アリアたちの順番で歩く。
うわあ、お花がすごい綺麗。じっくり見たいよー!
まっすぐ前を見ていても視界に入ってくるお花達は、うちにある花壇とは比べ物にならないくらい咲き誇っていて、とても華やかだ。
少し気を抜くときょろきょろしてしまいそうになるので、私はただひたすらお義母様の背中を見て歩いた。
角を曲がり、お屋敷の横側。視界に飛び込んできたのはとてつもない量の花だった。
「わぁ!」
うちの庭園はシンプルな感じで、花壇に咲く花はどれも足首くらいまでの高さだ。
だけどこの家のお花は違った。
背の低い花から背の高い花。どれも見たことのない花ばかりで、色々な色で溢れているが、派手ではなく、とてもセンスのいいお庭。
お花にはそれほど興味のない私ですらも目を奪われた。
庭園っていうより、花園って感じね。
「綺麗ですね、お義母様!」
「お気に召しましたか?」
「はい、とっても! ……え?」
お義母様に話しかけたはずなのに、返って来たのは違う女の人の声だった。
え、誰かいたの? 見えないけど……。
きょろきょろする私を見て、お義母様が少し笑い、言った。
「お待たせしてしまったみたいですね」
そのままお花の間を縫って中に入って行く。
私も慌ててお義母様の後に続くと、花園の中心にテーブルと椅子が並んでおり、そこに女の人が三人座っていた。
その後ろにはそれぞれメイドさんたちが一人ずつ立っているので、どこかの貴族だと分かる。
しまった、はしゃぎすぎた! だって全然見えなかったんだもん。
慌てて取り繕った笑みを浮かべる。
「いらっしゃい、オリーヴィア」
とても優しい雰囲気の女の人がお義母様を親し気に呼んだ。
さっきの声の人だ。おそらくこの人が招待してくれたのだろう。
お義母様はその人に微笑んで、皆を見回した。
「座る前に、紹介させてちょうだい」
お義母様の視線を受け、私は一歩前に出る。
「フィオーレ家の長女、エレナ・フィオーレと申します。本日はわたくしまでお招きいただきましてとても嬉しく思います。今日のこの出会いに祝福があらんことを」
最初の頃はお義母様に何度もやり直しさせられた初対面の挨拶をする。今ではもう失敗する心配などないので、我ながら堂々とできたと思う。
礼をした私は皆の顔を見てにこっと微笑んで見せた。
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