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第二章
麗奈と弘介Ⅱ
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「麗奈が許せなかったのは、自分のことを好きになった弘介さんじゃなくて、弘介さんを好きになった自分だよ」
「……違うよ、好きじゃない」
声が震えていた。
耳に届いたのは私の声だったけど、その言葉はまるで他の人の言葉だったかのように思えた。
心臓がばくばくなる。どうして私は今こんなに動揺しているのだろう。
これではまるで、私が本当に弘介さんのことが好きみたいじゃないか。
……分からない。本当に分からない。
ひろ君の言葉の全てを否定できないような気がした。
本当に好きじゃなかった。だけど、分からない。
私は弘介さんが好きだったのか。そして、今も好きなのか。
「麗奈、俺に嘘はつかないで」
ひろ君は静かにそう言った。
違う、嘘なんてついていない。本当だよ。
そう心の中で言って、それが言葉にできないことに気が付いた。
これは嘘なんだろうか。私は誰を好きなんだろうか。
「五年前に弘介さんが落としたストラップを返さなかったのも、紗苗さんの手紙を渡さなかったのも、弘介さんのことが好きだからだよ」
「分からないよ。弘介さんのことが好きだったら何で渡せないの……?」
なんで渡せなかったんだろう、とは何度も思った。
もう会うつもりなんてなかったのに、どうして弘介さんに渡すはずだった手紙もストラップも結局渡せなかったのか。
何度も考えたけど分からなかった。
自分でも分からないその理由をひろ君は分かっているというのだろうか。
「紗苗さんに嫉妬したんだよ」
紗苗さんの名前が出た途端、ざわついていた心がすうっと静かになった。
違うよ。嫉妬なんてしてない。
紗苗さんに嫉妬なんて、そんな感情私は知らない。
「五年前の話を聞いた時に俺にはそう聞こえたよ。麗奈は気付いていないかもしれないけど。ストラップや手紙を弘介さんに渡すことで紗苗さんへ気持ちが向かないように。それに自分が持っていることでまた弘介さんに会う口実になる」
そんなことない。
だって私は紗苗さんからずっと『こう君』の話を聞いてきた。
私の知っている『こう君』は紗苗さんの彼氏でしかない。
それ以上の関係なんて私と弘介さんの間にはない。
私が『こう君』を好きなんてありえない。
「違うよ、ひろ君」
静かな声が出た。急に冷静になった私をひろ君が意外そうに見る。
真っすぐその目を見すえた。
「紗苗さんとこう君の間には誰も入れない。私が入ってほしくない。だから、私がこう君のことが好きなんて、それは絶対にないよ」
紗苗さんとこう君の話をずっと聞いていた。
あの二人にはずっと一緒にいて欲しいと思っていた。それは今でも変わらない。
紗苗さんがいなくなった今もこう君の隣に他の女の人がいたら嫌だし、ましてやそれが自分なんてもってのほかだ。
ひろ君は全て分かっているかの表情で頷いた。
「……違うよ、好きじゃない」
声が震えていた。
耳に届いたのは私の声だったけど、その言葉はまるで他の人の言葉だったかのように思えた。
心臓がばくばくなる。どうして私は今こんなに動揺しているのだろう。
これではまるで、私が本当に弘介さんのことが好きみたいじゃないか。
……分からない。本当に分からない。
ひろ君の言葉の全てを否定できないような気がした。
本当に好きじゃなかった。だけど、分からない。
私は弘介さんが好きだったのか。そして、今も好きなのか。
「麗奈、俺に嘘はつかないで」
ひろ君は静かにそう言った。
違う、嘘なんてついていない。本当だよ。
そう心の中で言って、それが言葉にできないことに気が付いた。
これは嘘なんだろうか。私は誰を好きなんだろうか。
「五年前に弘介さんが落としたストラップを返さなかったのも、紗苗さんの手紙を渡さなかったのも、弘介さんのことが好きだからだよ」
「分からないよ。弘介さんのことが好きだったら何で渡せないの……?」
なんで渡せなかったんだろう、とは何度も思った。
もう会うつもりなんてなかったのに、どうして弘介さんに渡すはずだった手紙もストラップも結局渡せなかったのか。
何度も考えたけど分からなかった。
自分でも分からないその理由をひろ君は分かっているというのだろうか。
「紗苗さんに嫉妬したんだよ」
紗苗さんの名前が出た途端、ざわついていた心がすうっと静かになった。
違うよ。嫉妬なんてしてない。
紗苗さんに嫉妬なんて、そんな感情私は知らない。
「五年前の話を聞いた時に俺にはそう聞こえたよ。麗奈は気付いていないかもしれないけど。ストラップや手紙を弘介さんに渡すことで紗苗さんへ気持ちが向かないように。それに自分が持っていることでまた弘介さんに会う口実になる」
そんなことない。
だって私は紗苗さんからずっと『こう君』の話を聞いてきた。
私の知っている『こう君』は紗苗さんの彼氏でしかない。
それ以上の関係なんて私と弘介さんの間にはない。
私が『こう君』を好きなんてありえない。
「違うよ、ひろ君」
静かな声が出た。急に冷静になった私をひろ君が意外そうに見る。
真っすぐその目を見すえた。
「紗苗さんとこう君の間には誰も入れない。私が入ってほしくない。だから、私がこう君のことが好きなんて、それは絶対にないよ」
紗苗さんとこう君の話をずっと聞いていた。
あの二人にはずっと一緒にいて欲しいと思っていた。それは今でも変わらない。
紗苗さんがいなくなった今もこう君の隣に他の女の人がいたら嫌だし、ましてやそれが自分なんてもってのほかだ。
ひろ君は全て分かっているかの表情で頷いた。
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