あの日、君は笑っていた

紅蘭

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第一章

ギターⅡ

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「これが弘介さん」


麗奈ちゃんが小さな雪だるまを僕と麗奈ちゃんのちょうど間に置いた。

僕も同じように、麗奈ちゃんが作った雪だるまよりも小さい雪だるまを作る。


「じゃあこれ麗奈ちゃん」


そして、僕の雪だるまの隣に並べた。麗奈ちゃんは笑った。


「私小さいですね」

「うん、小さいからね」

「麗奈だるま、ですね」


そう呟きながら、麗奈ちゃんがまた作る。

麗奈だるまと同じサイズのものを隣に置く。


「これが、あずだるまです」


なるほど、じゃあ僕は誰を作ろうか。

考えてみたけど、思い浮かばなかった。

僕たちの共通の知り合いはあずちゃんしかいない。

だけど麗奈ちゃんはもう一つ作って、弘介だるまの隣に置いた。


「紗苗だるま、です」

「……え?」


まさかここで紗苗さんが出てくるとは思ってもいなかった僕は、驚いて麗奈ちゃんを見つめた。


「え、あれ? 名前違いました?」


麗奈ちゃんが狼狽えて、すみません、と謝ってくる。


「いや、あってるよ。急に紗苗さんが出てきてびっくりしただけ」


紗苗だるまを見る。弘介だるまよりも小さくて、麗奈だるまよりも少しだけ大きい。


「すみません、だるまくらい一緒にいてもらいたくて……余計なお世話でしたか?」

「ううん、嬉しいよ」


僕がそう言うと、麗奈ちゃんは小さな声で「よかった」と言った。

また気を使わせてしまった。これで何度目だろうか。

麗奈ちゃんと一緒にいたらどっちが年上か分からなくなる。

四つ並んだだるま達を見る。


「あずだるま、麗奈だるま、弘介だるま、紗苗だるま」


麗奈ちゃんが左から順に指さしていく。

可愛らしい小さなだるま。

弘介だるまと紗苗だるまが並んでいるのがとてつもなく嬉しかった。


「あの」

「ん?」


だるまを眺めたまま返事をすると、麗奈ちゃんは迷っているような声で言った。


「なんで別れたんですか、って聞いてもいいですか……?」


なんとなく聞かれる気はしていた。

そして聞かれたら答えようと決めていた。

僕は立ち上がって伸びをすると言った。もうすぐ日も落ちる。


「近くまで送っていくよ」
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