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異世界を救ってしまった。
4話 ひとりぼっちの潜入捜査
しおりを挟む「うえぇ、気持ちわるぅ」
やっぱりこれだけは何度経験しても慣れないな、マジで吐きそう。
目に入った木にもたれ掛かり、気分が良くなるまで深呼吸を繰り返す。
「ふぅー、大分落ち着いてきたな。 さてと………うん、これからどうしよう??」
防衛戦略会議とやらが終わった後、俺は流れのままにアザミレアの国へと飛ばされてしまっていた。
……いや、マジでどうするのこれ?? 何をすれば良いのか全くわからないんだけど??
ってか青蜜や結衣ちゃんが居ないとか一瞬で死ぬ自信があるわ!! それにこの国じゃリアとも連絡取れないんだよ?? 詰んでるじゃん!!
冷静を取り戻し始めた俺の頭に次から次へと不満が湧き出る。
大体さ今になって1人行動させられるっておかしくない??
普通は最終決戦って言えばさ、今まで仲間になったみんなと協力しながら巨悪を倒すってお約束じゃん??
何で俺だけステレスゲームみたいな事させられてるの??
言っとけど有益な情報を持ち帰るとか不可能だから。
自慢じゃないが俺1人に出来る事なんてゼロに等しいんだからな!!
「……まぁでもあっちで戦闘になっても役立たずなのは変わりないか」
……か、覚悟を決めよう。 勢いで来てしまったと言え、今更もう引き返せないしな。
おっさんの言葉に同調するのは嫌だけど、俺がここで頑張った分だけアザミレアに勝てる可能性が少しでも上がるならやるしかないか。
これが俺なりの戦い方ってヤツなのかも知れないしな。
現状を受け入れ、青蜜達の為にも俺は一先ず辺りを見渡す。
こうやって気持ちを直ぐに切り替える事が出来る様になったのも、今までの経験があってこそだな。
それにしてもリアの話じゃ出来るだけ王都の近くに飛ばすって言ってたよな??
全然そんな気配ないけど大丈夫なのか??
なんか雰囲気はルカの森に似てるけど……いや、森なんて何処も似た様なもんだったわ。
ま、まぁあいつ自身100年以上この国には来てないって言ってたし多少のズレは仕方ないか。
にしても何処に行けば良いのかも分からないのはしんどいな、取り敢えずあの狼達みたいな魔物に出会わない事を祈っ……あっ!! そう言えばみんなから色々受け取ってるんだったわ!!
先ずはそれを確認しよう!!
俺は急いで近くにあった鞄に手を伸ばす。
出発前にリアが俺に渡してきたバック、きっと重要な何かが入ってるに違いない!!
「確かリアだけじゃなく青蜜達も俺の事を想って選んでくれた物も入ってるらしいし、きっと何か手がかりになる物がっ……」
鞄の中身を見た瞬間、俺の身体が硬直する。
……これってあれだよね?? カ□リーメイトだよね?? え?? 何で?? いや、まぁ冷静に考えれば有難い気もするけど。
この状況で鞄の中に食料が詰め込まれているパターンとかある??……もしかしてリア、俺に渡す鞄を間違えたんじゃないか??
「あっ、あのロリババァ!! やりやがったな!! ふざけたミスしやがっ……ん?? 何だこれ?? 手紙か??」
埋もれる様に入っていた便箋を手に取りその中身を確認する。
『まどかへ。
お主がこの手紙を読んでいる日が来ない事を願うが、きっと我のこの願いは叶っていないじゃろうな。
たった1人での敵国への偵察を頼む事になリ本当に申し訳なく思う、すまなかった』
うわぁ、これ間違いじゃないじゃん!!
本気で支給品がカ□リーメイトだったわ。
開始数行で驚きながらも俺はそのまま目を通す。
『余計なお世話かも知れないが、お主がこの決断をした時の為に少しでも役に立てる物を入れておく。
我からは自身の結晶石を渡すぞ、鞄の側面に入っておる』
側面?? このポケットか??
リアからの手紙を読みつつ、俺はポケットに手を伸ばし中に入っていた物を取り出した。
「これ、サイズは小さいけど前にメロが持ってた石に似てるな。 何か効果あるのか??」
『その結晶石を首にかけておくと良い。 アザミレアとの戦いもあるからあまり力を分ける事は出来なくて心苦しいが、まどか1人の命なら2回くらいは蘇生できる程の力はある……まぁ出来る事ならその力が使われない事を我は祈っておるがな。
本当にあまり無茶はするでないぞ』
「……」
リアの手紙の読み終わった俺は直ぐにその首飾りをかけた。
リア、さっきはごめん。 文句言って悪かったです、本当にありがとうございます!!
「……と、取り敢えず中身を全部出してみるか。 食品以外にも色々入ってそうだしな」
鞄を全部開きひっくり返して中身をその場に出す。
「良かった、まだ結構あったわ!! えっーと、便箋が4つに、これは手袋か??
それから……何これ?? ひの木の棒??
後は水と段ボールと全種類のカ□リーメイトに……またこのおっぱいかよ。
これ絶対に結衣ちゃんからだろ……まぁこれも何か効果あるのかも知れないしな。 先ず手紙を読んでみるか」
俺は一番近くにあった便箋を手に取る。
『お兄ちゃんへ。
この手紙を読んでるって事はまた格好良い事を言って飛び出したって後なのかな??
ふふ、まぁそれでこそお兄ちゃんって感じがするけど。
じゃあ時間も無いだろうし、私が入れたアイテムの紹介をするわね。
黒い手袋があったでしょ??
それは淫魔が精気を吸収する時に使う物なの。
あっ、勿論お兄ちゃんが使っても効果は得られないけどね。
でもそれがあれば高濃度の魔力が込められた物を触る事が出来ると思う。
あの魔女が今回入れた結晶石くらいなら素手で触れるかもしれないけど、アザミレアの国には下手に触れば命を落とす道具も多い筈よ。
意味も解らず死ぬなんて嫌でしょ?? だから絶対に使ってね!! 無事に帰って来るの待ってるよ、お兄ちゃん!!』
「……」
メロの手紙を読み終わった俺は直ぐにその手袋を履いた。
メロ、信じてた。 やっぱ淫魔の王女なだけあるよ!! 感謝します!!
俺はその流れで次の手紙を開ける。
『ダーリンへ。
この手紙を読んでるって事は私はもうダーリンの近くには居ないのね。
こうやって考えるだけで寂しくて悲しくてそして辛いわ。
ダーリンったらいつだって自分の事は後回しで考えて突っ走っちゃうんだもん……まぁそう言う所も私は好きなんだけど。
だけどね、今回は自分の身を第一に考えて欲しい。
鞄の中にある木は私が作った完器樹の枝なの。 これを持ってればダーリンにも魔素の流れを感じられる筈よ。
だからダーリンは出来るだけ魔素の流れが緩やかな所を選んで行動して。
そうすれば凶悪な魔物や力を持った敵と出会う確率はグッと下がるから!!
成果なんて気にしなくて良い、頑張らなくても良いから……お願い、怪我しないで帰って来て』
「……」
ルカの手紙を読み終わった俺は直ぐにその枝を手に取る。
ルカ、やっぱ凄いよ。 あの研究でこんな物まで発明してたんだな、まごう事なく天才少女だよ。
今更初期装備渡してくるなとか心の中で思ってて本当すいません!! 助かります!!
「……残りも一様読んでおくか」
『まどかちゃんへ!!
この手紙を読んでるって事はまどかちゃんって本当に馬鹿なのね!!
信じられない!! 何で1人で行こうとするの?? これまでもずっと一緒だったじゃない!! い、いきなり格好つけるんじゃないわよ……はぁー、もう本当に馬鹿なんだから。
私もみんなみたいに役に立つような物を入れようかと考えてたけど、多分まどかちゃんの事だから潜入の基本的な事を忘れてるんじゃないかと思って食料と水、それからいざって時に身を隠せられそうな段ボールでも入れとくわ。
い、言っとくけど、その水は私の祈り薬でもあるんだからね!! だからあんまり無駄遣いしない事!! 良いわね??』
「……」
青蜜の手紙を読み終わった俺は一欠片のカロリーメイトを口に入れた。
「う、美味すぎる!!」
……うん、まぁ潜入と言えばだしね??
でも正直ちょっと楽しいわこれ。 中々出来るタイミングないし、少しテンション上がってきたかも。
そ、それに最初見た時はびっくりしたけど、青蜜の言う通り食糧も水も今はかなり大切だし、この祈り薬って俺が最初におっさんに貰ったやつだよな??
だとしたらかなり心強いな!! 段ボールは……まぁこれもあいつらしいか。 サンキュー青蜜!!
「良しっ!! みんなの気持ちも受け取ったしいっちょ頑張ってみようか!!」
………わかってるって、結衣ちゃんのもちゃんと読むよ。
最後に残った手紙を手に取り俺はその中身に目を通す。
『まどかさんへ。
この手紙を読んでるって事はまどかさんはもう随分と遠くに行ってるんでしょう。
色々とお伝えしたい事はありますけど、この場では我慢しておきます。
今のまどかさんの頭の中には私が作り上げた最高品質のおっぱいの事で一杯でしょうから』
……どうでも良いけど、何でみんなこの書き出しなの??
もしかして俺が知らないだけで常識だったりするの??
それに俺と結衣ちゃんを一緒にしないでくれる?? この状況でおっぱいの事を考える奴なんて貴方以外にいないから。
「……っていかんいかん、結衣ちゃんの手紙だけ何故か無性に突っ込みたくなるな。
可能性は薄いけど実は特別な力が宿ってるのかも知れないんだし、ちゃんと読まなきゃな。 いくら結衣ちゃんとは言え流石にこの状況で偽乳入れてくるとは思えないし」
俺は一旦呼吸を整えて続きを読む。
『気持ちはわかります。 これは男の人だけではなく女の人も魅了する最強のおっぱいですから。
もし旅の途中で揉みたくなった時はいつでも揉んでください……たまになら私の事を考えながらでも良いですよ。
私はいつまでもあの研究室でまどかさんの帰りを待ってます、どうかご無事で』
「……」
結衣ちゃんからの手紙を読み終えた俺は特に何も考えずに最高品質とやらのおっぱいを揉んだ。
……結衣ちゃん、ごめん、これだけは本当に要らないわ。
握りしめたおっぱいを地面に思いっ切り投げ捨てたくなる衝動を必死に抑えながら俺はゆっくりと歩き出した。
※次話更新8月12日までには。
いつも遅くてすいません。
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