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閑話 2
私も居ますけど何か? 2 〈リア編〉
しおりを挟むし、失敗した!! 失敗した失敗した失敗した失敗した!! 何じゃこの女っ!! 全然普通じゃないではないか!!
あきほとか言う女を部屋に招いてから数時間、我は自分の選択を後悔していた。
「それでですね、お嬢様は本当に可愛いんです!! これは7歳の頃の話なんですけどっ」
目の前の女は目を輝かせながら語る。
……はぁー、何なんじゃこの女、適応力ありすぎじゃろ。 普通もっと驚くよな??
大事なお嬢様とやらが異世界に居て、今は我の作った別人が学校に通っておるのじゃぞ??
そんな嘘みたいな話を直ぐに信じるか??
こ、これでは我の暇つぶしにならぬではないか!! ビビリ散らかす人間を見て楽しもうと思っておった我の計画が無茶苦茶じゃ!!
「ね?? 可愛い話でしょう?? 思えば私がお嬢様を好きになったのはこの一件があったからなんですよね」
「そ、そうじゃな。 じゃあそろそろ帰っ」
「あっ!! 大事な話を忘れてました!! あれはお嬢様が中学生になったばかりのっ」
「いや、もう帰るのじゃ!! 今更、青っ子の昔話など我には興味はないのじゃ!!
ってかそもそも何でお主がずっとしゃべってるの?? おかしいじゃろ!! どう考えてもここは我が話す場面じゃろがっ!! 空気を読むのじゃ!!」
「何よ、元はと言えばリアが私を誘ったんじゃない。 別に私が話してもおかしくないわ、むしろ空気を読んで話を聞いて欲しいくらいなんだから」
「馴れ馴れしく呼ぶでないわ!! 誰がリアじゃ!! お主とはさっき会ったばかりでっ」
「あら? そんな小さな事を気にしてるの?? 私が抱えてるお嬢様への愛を聞いてくれたんだもの、私達はもう十分過ぎる程に友達じゃない」
「そうなのか?? ま、まぁお主が我を友達と言うなら別に呼び捨てでも構わなっ」
って何を喜んでおるのじゃ我は!! クソッ、なんか調子が狂うのじゃ。 青っ子やルカそれに貧乳っ子に似て肝が据わっておる、き、嫌いなタイプではないがっ……。
「それにしてもまさかお嬢様が本当に異世界に行ってるとは驚きね、しかもあの円人も一緒とは」
「円人?? あぁ、まどかの事か」
「えっ?? あの子、異世界の魔女にまでまどかって呼ばれてるの??
なんか少しだけ可哀想ね、まぁでもそのお陰で入学出来たんだし本人的には複雑よね」
「そのお陰じゃと?? 名前の間違いがなんか関係あるのか??」
「大有りよ。 旦那様が言ってたんだけど私達の学校、聖桜葉女学院の校長はかなりの男嫌いみたいなの。 だから絶対に男を入学なんてさせない予定だったのよ、共学にしたのは名ばかりで男は入試で全員落とす気だったらしいわ」
えぇー、人間もなかなかエグい事をするのぅ。
「そう言えばまどかも入試の時は男が沢山居たとは言っておったな」
「円人が受かったのはきっと色々運が良かったのよ。 まどかって名前だと勘違いされた事もそうだし、写真も少し女の子みたいだったって噂だしね」
……そんな馬鹿な事がありえるのか??
はぁー、なんか聞いてはいけない事を聞いてる気分じゃな。 この事はまどかには黙っておこう、多分結構ショックを受けそうじゃしな。
「人間も魔女に負けず劣らず怖いでしょ??」
「うむ、確かにそうじゃな」
「ふふふっ、まぁでも安心して。 お嬢様や結衣さん、それから円人みたいな特殊な人は極一部だもの。 学園に居るのは私の様な普通の人間が大多数よ」
「いや、お主も十分異常な部類だと思うがな」
「私は普通よ、ほんの少しだけお嬢様への愛が強いだけだわ。 6歳の頃に自らを売り出して旦那様に買われた事以外は普通の女の子だもの」
何故此奴が謙遜しておるのかわからぬのは我だけか?? どう考えても異常なエピソードじゃろ!! 6歳の少女の思考回路じゃないではないか。
ってか買う方も買う方じゃ!! 青っ子の親も馬鹿なのか?? 学園の校長もイカれておるし、貧乳っ子の親だって子供に偽乳を与える阿保じゃしな。
……あれ?? もしかして本当に人間の方が魔女なんかより怖いのではないか??
相対的にこの秋っ子がマシに見えてきたぞ。
「認めたくはないが、お主は意外にまともなのかもな」
「だからそう言ってるじゃない」
「はぁー……まぁもう何でも良い。 我の話は終わりじゃ、納得したならお主もそろそろ帰って貰えるか?? 我は明日も早いからのぅ」
「……」
「ん?? 何じゃ?? まだ何かあるのか?? 言っとくがもう青っ子の話は聞き飽きたからするでないぞ??」
「……ひ、一つだけ聞いても良いかしら??」
秋っ子は恥ずかしそうに顔を伏せる。
何じゃ?? 雰囲気が少し変わったか?? 随分と言いにくそうじゃが一体何を聞きたいんじゃ??
「一つだけじゃぞ??」
「っ!!」
我の言葉に秋っ子は大きく目を見開いて静かに答えた。
「い、今のお嬢様ってリアが作り出してるのよね??」
「あ、あぁ」
「それってさ、もう1人作れないの??」
「……はぁ??」
一体此奴は何言っておるのじゃ??
「だ、だから!! 私にもお嬢様を1人分けて欲しいのよ!!」
……。
「勿論タダとは言わないわ、私に出来る事は何でもする!! だからお願いっ!!」
「い、いや、そもそもそんな事をしてお主はどうするつもりなんじゃ??」
「それはっ……お嬢様と愛を確かめ合いたいの。 私は偽物でも良いからお嬢様が欲しいの!! そしたらほらっ、本物のお嬢様とする時もリード出来るでしょ??」
秋っ子は息を荒くして身体を捻る。
……うむ、我が間違っておった。 此奴はもう駄目じゃ、いや、此奴ももう駄目の間違いじゃな。
どうやら我はとんでもない奴を招待してしまったみたいじゃな。
「話は終わりじゃな。 帰るが良い」
「えっ?? ち、ちょっと!! 何よこれっ!!」
我は魔力を使って秋っ子を屋敷へと転送するゲートを開いた。
な、なけなしの魔力じゃが仕方ない!! こうでもしないとずっとここに居座りそうじゃしな。
「す、吸い込まれる?? リ、リアっ!!」
「案ずるな、家に帰ってもらうだけじゃ」
「あぁ、そうなの?? なら良いわ」
適応はやっ!! もう我は此奴が怖いわ!!
「今日は諦めるけど必ずまた来るからね?? 次までに返事をお願いするわ、じゃっ!!」
秋っ子はそう言うと自らゲートに入って行った。
「……切り替えも早いんじゃな」
小さくなっていくゲートを見て我は大きな溜息を吐いた。
「この事も青っ子には黙っておくか」
安易に人間にちょっかいを出すのはもう辞めよう、碌な事にならん……特にこの周辺はな。
秋っ子が我の魔法を見破ったのも唯の変態だっただけじゃしな。
我は心の中でそう誓い部屋の鍵を閉めた。
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