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勇者に出会ってしまった。

38話 偉大な勇者の資格

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「なるほど……確かにリアさんの言う事も一理ありますね」
 
「そ、そうじゃろ?? 確かに今の我の力ならお主の胸をCカップ程には出来るかも知れん。 
 じゃが、今の我では形やハリまでは補償出来ぬ!! 
 ならばもう少し時間を置き、我が真に力を取り戻す日が来るのを待った方が良いぞ。 
 その時にはお主が求める完璧な胸とやらを授けてやるのじゃ」
 
「嘘じゃないですよね?? 神に誓って約束出来ますか??」
 
「うっ、嘘じゃないわい!! 我は約束は守る女じゃ!!」
 
「……そうですか。 では、私はその時を待つ事にしますね」
 
 結衣ちゃんがリアに詰め寄ってから20分程が経過し、2人の話し合いはようやく一段落した様だった。
 
 

 ……話し合いと言うよりは脅迫みたいな感じだったけどな。 相変わらずおっぱいの事になると人が変わるな結衣ちゃんは。
 まぁでもこれで俺達のやる事ははっきりしたかな。 
 如何やら全ての元凶はアザレミアって言う転生者らしいからな。
 

「は、話を戻しましょうか。 リアの話が本当なら今回の地球の問題はそのアザミレアって奴の所為って事よね??
 それってもしかしておっさんやルカの星が危機に陥ってるのも、そいつが原因なのかしら??」
 
 場の空気を立て直す為か、青蜜は両手を合わせながら今思い付いたかの様にリアへと質問した。
 
 ってか俺は今思い出したわ。 そう言えばおっさんの星を救うのが目的だったもんな。
 
「ふむ……まぁその可能性は高いじゃろうな。 ルカが完器樹を作り上げた事で1ヶ月の猶予が出来たのも、我の情報を盗む手間が増えたからと見て間違いないじゃろう」
 
「わ、私の研究成果を理解するのに1ヶ月だけしか掛からなかったって事??
 そんな訳ないじゃない!! どうせ1ヶ月じゃ理解出来なかったから諦めたのよ!! そうに決まってるわ」
 
 リアの言葉にルカは不満げに頬を膨らませる。



 な、なるほどな。 正直あの日記が何で戻ってたのかは全く検討が付いてなかったけど、ルカが研究を完成させた事によって過去のリアが新しい知識を得てたって訳か。
 
 そしてそれを解読するのに時間が掛かってた………良かった、俺達が過去に行った意味はちゃんとあったんだな。 
 
「何でまどかちゃんが泣きそうな顔してるのよ」
 
「べ、別にっ」
 
「はぁー、まぁ良いわ。 まだ腑に落ちない所が沢山あるけど、一旦置いておく事にする。 
 そのアザミレアって奴の事をこれ以上考えていても仕方ないものね。 
 とりあえず今は……私達はこれから何をするべきなのかを先に決めましょう」
 
 青蜜はそう言うと、ゆっくりと視線を俺の方へと向けた。
 
 
 まぁメロを仲間にしようって言ったのは俺だもんな。 青蜜はその場には居なかったけど、何となく察してはくれているんだろう。 
 
 

 ……さてと、如何したものか。 
 メロの国を助けると言った以上、アザミレアって奴との戦いになる覚悟は出来てる。
 
 だけど、その前に地球に来てる勇者を何とかしないといけないんだよな。 
 パワーアップしたリアや魔王であるメロが一緒だから負ける事は無いと思うけど、出来れば勇者とは戦いたくないんだよな。 
 
 ほら、勇者にはさ最初の頃に酷い事しちゃったしさ、そもそも勇者って地球を助けに来てくれた救世主だからね。 
 個人的な恨みも全く無いし……うん、何とか話し合いで済ませられるかみんなに聞いてみよう。 
 なんてたって青蜜達って勇者のパーティーだったもんな。
 

 
「な、なぁ、勇者ってどんな奴なんだ?? 
 もしかしたらこの現状を勇者に話せば俺達の仲間になってくれるんじゃないかな?? それが出来るならわざわざ戦わなくてもっ」
 

「無理ね」
「無理ですね」
「無理よ」
「無理じゃな」
 
 
「……えっ??」
 
 な、何で?? いや、絶対協力してくる流れだと思うんだけど?? 
 みんな知ってる?? 裏ボスまでしっかり倒すのが勇者ってもんだからね??
 

 俺が不満顔を浮かべている事に気付いたのか、メロ以外の全員が同時に溜息を吐いた。
 

「まぁ、まどかちゃんの言いたい事もわかるわ。 あいつの事を詳しく知らないんだものね」
 
「そうですね、でもあの人は絶対に協力してくれませんよ。 
 そもそも私達の話なんて聞いてくれないでしょう」
 
「そうよ!! と言うか私だって嫌だわ!! あんな男と一緒に戦うなんて考えられない!!」
 
「うむ、我も同じ意見じゃな。 彼奴は完全に勇者と言う今の状況に酔っておる、我らが何を言っても無駄じゃろう」
 
 
 えぇー……そんな感じなの?? あんな優しそうな青年だったのに??
 
「力を持つと性格が変わるのはどこの世界の奴も一緒じゃな」
 
「あいつも最初は普通だったんだけどね……なんか急に威張る様になっちゃって」
 
「私なんて何回も襲われそうになったわ。 ダーリンが居るって言ってるのに!!」
 
「男の人っていつもそうですよね……私達の事なんだと思ってるんでしょうか」
 
 
 ……うわぁ、完全にやらかしてるじゃん勇者さん。 やっぱ喋らない勇者って偉大なんだな。
 あとさ、結衣ちゃんはもう本当にいい加減にして、絶対わざとやってるでしょ、それ。


 とは言えここまでの亀裂があるなら今更仲良くは出来そうにはないか。
「こうなったら戦うのも仕方ないのかもな、個人的な恨みがないからやりにくいけど」
 
 
「「「「えっ??」」」」
 
「えっ??」
 
 やばい、またなんか変な事言ったか?? 
 いや、今は別に変な事を考えて無かったと思うんけど??
 

「……ま、まどかちゃん、気付いてなかったの??」
 
「な、何がだ??」
 
 驚いた表情を崩す事なく青蜜がゆっくりと声を出した。
 
「ゆ、勇者がまどかちゃんにかけた呪いの事よ」
 
「の、呪い??」
 
 急に何言ってんだ青蜜の奴?? そんなもの思い当たる節もないんだが??
 
「お、驚いたのじゃ。 まさか気付いてすら居なかったとは」
 
「おいおい、リアまで怖い事言うなよ。
 一体なんなんだよ、その呪いってのは??」
 
 まぁ俺が気付かないって事はどうせそんな大した呪いじゃっ。
 
「私達と過ごした記憶が消える呪いよ」
 
 
「……えっ??」
 


 真顔で見つめるルカの表情がこの言葉が嘘でない事を俺に訴えていた。
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