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勇者に出会ってしまった。
14-1話 俺虐真骨頂
しおりを挟む「んぁ……あれ、俺何してたんだっけ??」
上手く働かない頭で今の自分がどう言う状況だったかを思い出す。
あぁ、思い出した……リアの部屋での話し合いが終わった後、みんなに置いていかれたんだった。
思い出したくない記憶を振り返り、俺はポケットに入っているスマホで今の時間を確認した。
「もう22時か……学校から帰って来たのが13時頃だったから、随分と長い間寝てたんだんな俺」
そのお陰か、今はかなりスッキリしてるわ。 一回寝たら気持ちが楽になるのは俺の良い所かも知れないな。
適当な自己分析を出来るくらいに頭が起きてきたからか、今の現状に少し気になる所がある事に俺は気付いた。
……みんな何処に行ったんだ?? もしかしてまだ話し合ってるのか??
俺が寝ていた場所はリアの部屋だ。 もし青蜜達の話し合いが終わったんだったら、もう帰って来ててもおかしくない筈だ。
それにいくらなんでも静かすぎじゃないか??
このアパートの周りは確かに人通りは多くないけど、壁が薄いから車の音くらいはしてたんだけど……。
考えれば考える程、奇妙な無音状態の部屋の状況に少しだけ寒気がする。
「よ、良し!! 一旦俺も帰ろう!! なんだが嫌な予感がするわ」
恐怖を払拭する様にわざと大きな声を出してから立ち上がり、俺はリアの部屋から外へ出た。
「……あれ?? もしかしてまだ夢でも見てるのかな??」
部屋の扉を開けた途端、俺の目には見慣れない光景が映った。
材質もわからない真っ黒な地面を不安しか抱かせない真っ赤な月の光が照らす。
部屋の外はまるでRPGの最終ステージの様な空間が広がっていた。
……いやまぁ夢じゃないんだろうけどさ、だとしたらどう言う状況なんだ??
確かに長い間寝てたけどさ、世界が変わっちゃう程の睡眠時間では無かったと思うんだけど??
「むっ、まどか殿今頃起きたのか?? もう戦闘も終盤だと言うのに呑気なもんじゃのぅ」
困惑する俺の耳に聞き慣れた声が響く。
「おっさん……って何やってるんだ??」
「見たらわかるじゃろ!! 結界を維持してるのじゃ。 今は魔王との戦闘中じゃからな、周りに被害が及ばぬ様にする為にも結界は大切じゃろ??」
あぁー、なるほど。 この変な空間はおっさんの結界の中って事か。 ふむふむ、そして今は魔王と決闘中とっ……はぁ??
えっ?? どう言う事?? もしかしてあの後直ぐに魔王ってのを見つけたって事??
いやいやいや、展開早すぎだろ!!
いつもはこんなに早くないよね?? 異世界で無駄に時間使ってるもんね??
ってかおっさんこんな結界作れるんの?? なんかもう色々衝撃だけど、それが一番驚きだわ!!
「……まどか殿よ。 残念じゃが今はお主に出来る事はないのじゃ。 悔しいかもしれんが、ここはあかね殿達を見守ってやってくれ!! お主の応援が世界を救う力になるかもしれんからのぅ」
「えっ……あぁ、わかったよ」
いつになく真顔でそう言うおっさんに俺は相槌を打つ事しか出来なかった。
……いや、全然わかんないけどな。
でもなんか重要な場面みたいだしとりあえず応援しといた方が良いのかな??
良く見れば空に青い光と黒い光、それから緑の光が見えるもん。
多分あれ青蜜と結衣ちゃんとルカだろ??
その後ろにある大きな金色の光がリアで、真っ白いのが魔王かな??
光の大きさで強さが測れるとするなら互角くらいっぽいのか??
「み、みんな頑張れー」
絶対に聞こえない距離だと思うけど俺はとりあえず声に出した。
その姿を見てか、隣でおっさんがしたり顔で大きく頷く。
くそっ、なんか勝手に悔しがってる事にさせられてるの腹立つな。 別に悔しくなんてないからな!! こんなの全然悔しくなんてないから!!
……羨ましいだけだから。
なんとも言えない疎外感を感じながら、俺は頭上で激しくぶつかり合う光の球を見続けていた。
こうやってみるとなんか虫が飛んでる様に見えるな。
いや、流石に失礼か、花火にしとこ。
「あっ、逃げた」
それから数時間たった後、魔王と思われる白い光の球は遠くへと消えて行った。
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