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天才少女に出会ってしまった。

23話 死者蘇生は愛の証。

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「リア、なんだかんだ今迄世話になったな。 最初は酷い魔女だと思ってたけど、今は尊敬すらしてるよ。 ありがとうな、リアに会えて良かったよ」

 目の前で繰り広げられる青蜜とおっさんの不毛な争いを眺めつつ俺はスマホに向かって話した。

 出来れば直接顔を見て言いたかったんだけどな……まぁ仕方ないか。

「そ、その言葉はとても嬉しいのじゃがいまいち状況が把握出来ん。 まどかよ、何があったか教えて貰えるか? お主ら過去で何をしてきたのじゃ??」

 そう言えばまだ説明してなかったな。 今更遅いとは思うけど、今の状況くらいは伝えておくか。

 リアの質問に俺は出来るだけ丁寧に答えていった。 
 誰かと話すのはもしかしたらこれが最後になるかも知れないから。



「……なるほどのぅ。 つまりルカとやらに研究を辞めさせた結果、世界崩壊へより近付いてしまったと言う訳か」

 俺の話を最後まで聞いた後、リアは納得した様な声を漏らす。

 それにしても自分の口で改めて経緯を話すと、殆ど俺のせいな気がしてきたんだが? ルカと交渉してたのほぼ俺だもんな。
 ……うん、今は誰のせいとか考えるのは辞めよう。 それからおっさんにも少し優しくしよう!

「まぁ大体の流れはわかった。 じゃが一つ気になる事があるのぅ」

「気になる事??」

「うむ。 お主……ほ、本当にルカと付き合うのか?」 
 
「……はぁ?」
 
 リアの言葉の意味が分からず、俺は思わず惚けた声を出してしまった。
 
 わ、割と丁寧に説明したのに一番最初に気なる所がそこなの? てっきり良い案でも思いついたのかと思ってたのに……しかもなんかリアちょっと怒ってないこれ? 
 
「ど、どうなんじゃ! 本当に付き合うのかと聞いておるのじゃ、早く答えるのじゃ!!」
 
 ちょっとじゃなかったわ、滅茶苦茶怒ってんじゃん。 何で? なんかしたか俺?? ……全然心当たり無いから正直に話すけどさ、変な地雷踏んだりしてたら嫌だな。 
 
「まぁそのつもりだったけどさ……今となっては厳しいだろ? このままじゃ俺達みんな死ぬんだし」
 
「そのつもりじゃと? わ、我のもうこはっ……いや、我のお尻の紋章を見たのに他の女に手を出そうというのか! なんて奴じゃ!! せ、責任取ってもらうつもりじゃったのに!!」
 
 やっぱあれ蒙古斑だったんだな、まぁ知ってたけど。 それより蒙古斑見たから何なの? 魔女の蒙古斑見たらなんらかの責任を取らなきゃ駄目なのか? 初耳だぞ、おい。
 
「もうこはっ……も、紋章とやらを見たのは謝るけどさ。 他の女に手を出しちゃ駄目なんて俺は聞いてないぞ?」
 
「き、聞いてないじゃと? お主そんな言い訳が我に通用するとでも思うのか?」
 
 いや、言い訳とかじゃないんだけど……大体責任って何すれば良いの? ルカと違ってリアなら本当に人体実験とかしそうで怖いんだけど?? 
 
 怯える俺にリアは尚もイラついたように続ける。
 
「はぁー、だから人間の男は嫌なんじゃ。 我の気持ちも知らずに発情しまくりおって。 大方そのルカとやらの容姿が良かったから付き合うなどと戯言を抜かしておるのじゃろ? ……まぁ気持ちはわからんでもないか、誰だって我の様な意地汚い魔女より若く美しい人間を選ぶものじゃもんな」
 
 怒ってると思ったら今度は急に意気消沈したな。 ……うん、わかってたけどやっぱリアも変な所あるよな。 古の魔女とはいえ女の子なんだな、何考えてるかまるでわからん!!
 
 まぁ確かにルカは可愛いけど、リアだって顔は相当綺麗な方だろ。 ルカはどっちかと言うと結衣ちゃんみたいな可愛い系だけど、リアは青蜜みたいな綺麗系だから優劣つけれる様な差なんてないと思うし。 

 それに 「別に意地汚いとは思ってないけどな。 リアは優しいし、正直この世界じゃ誰よりも頼りになるからな、居ないと困る存在だ。 何よりやっぱ美人だもんな! あー、そう思うと全回復したリアの姿を見てみたかったな、妖艶な雰囲気醸し出しそうで興奮出来そうだし!! はぁー、ロリ魔女から美魔女に変わるの割と楽しみにしてたんだけどな」 
 それにしてもなんて答えようか迷うな。 こう言うのは苦手なんだよな俺。
 
「……さ、さてとしょうもない話はここら辺で終わりにしようかの! 時間もないみたいだし、とりあえず今はこの状況を如何にかするのが先決じゃもんな!」
 
「えっ? どうしたんだ急に? な、なんか良い策でも思いついたのか??」
 
 急にやる気に満ちた声をあげるリアに俺は戸惑いを隠さずに尋ねる。
 
 なんて言おうか考えてたけど、リアって結構切り替え早いんだな。 そう言えば青蜜もルカもだったな、女の子ってそう言う所あるのか? 勉強になるな。
 
「……いざとなれば蘇生術でも使って我のそばに居て貰えば良いんじゃものな、焦る事もないのぅ、人の一生は短いのじゃし」   
 
「ごめん、なんて言ったんだ? 上手く聞き取れなかったからもう一回言って貰えるか??」
 
「な、なんでもないわい! こ、こっちの話じゃ! あっ、えーとそうじゃな、今の状況を何とかする策があるのか? と言った話じゃったな。 結論から言えば、事態を好転させる事は可能じゃ。 じゃがこの場合、お主ら、特にまどかにとっては些かきつい事になるかも知れんがのぅ」
 
 焦った様にリアは早口で捲し立て会話を進めた。
 
 やっぱなんか良い案思いつてたのか! 流石リアだな! でも些かきつい事ってなんだ?
 
「きついってのは体力的な事か? それなら気にしなくても大丈夫だよ。 確かにちょっと疲れたけど、世界滅亡時にそんな泣き言言ってる場合じゃないしな」
 
「いや、体力的にもそうなのじゃがどちらかと言うと精神的の方なのじゃが……まぁ詳しいデメリットは後で話すとするかのぅ」
 
「その話わしにも詳しく聞かせて貰えるかのぅ?」 
 
 うわぁ、びっくりした。 相変わらず急に出てくるなこのおっさんは。 
 ってか青蜜はどうしたんだよ、さっきまで二人で言い争いしてたんじゃないのか?
 
 急に会話に混ざるおっさんに驚きつつ、俺は青蜜へと視線を向けた。

 視線の先にいた青蜜は虚な目で呆然と立ち尽くしていた。
 
 ………あれ生きてるのか? さっきまでの元気はどこに消えたんだよ、青蜜の奴完全に燃え尽きてるじゃねぇか。 
 
「あかね殿は話の途中で急に壊れた様に動かなくなってしまったのじゃ。 まぁあかね殿はまだ若いからのぅ、こう言った不足の事態には慣れていないのも仕方ないのぅ」
 
 何ちょっと勝ち誇った顔で言ってたんだよ、おっさんだってさっき俺達も一緒に死ぬべきだって言うくらいには焦ってた癖に。
 いや、まぁあれは本音か。
 
「このポンコツに話すとややこしくなりそうで本当は嫌なのじゃが、そんな事も言ってられんか。 
 時間もないから簡潔に言うが、お主らがもう一度過去に言ってルカ・ルーレットを説得してこれれば、とりあえずはこの最悪の現状は回避出来ると思うのじゃが?」
 
「な、なるほど!! 確かにその通りじゃな、ルカの子にもう一度会いに行き研究を再開して貰えば、少なくとも元の状態には戻る事が出来るかもしれんものな!!」
 
 リアの言葉におっさんは大袈裟に手を叩き嬉しそうに騒ぐ。
 
 意気揚々としてるおっさんは少しうざいが、リアの言う通りかもな。 ルカにもう一度会いに行って、今度は研究を続ける様に説得する。 ルカなら頼めば俺の言う事を聞いてくれるかも知れないしな……まぁあんな格好つけて別れてきたからかなり恥ずかしいけど。  
 リアの言ってた精神的にきつい事ってこの事かもな。 
 
「では、早速まどか殿達を過去にっ」
 
「ちょっと待つのじゃ、このポンコツが!! 我の話はまだ続きがあるんじゃ、それを話してからではないと過去に行く事に賛同は出来んのぅ」
 
 おっさんの言葉をリアは語気を強めて遮る。
 
「そ、そんな事言ってる場合ではないじゃろ! 早くしないとこの世界はっ」
 
「し、失礼します、旦那様。 どうしても旦那様にお会いしたいと仰ってる方が居るのですが」
 
 焦った様に喚くおっさんの声は今度は扉の向こうから響く執事さんの声によって掻き消された。
 
「ド阿呆! 今はそれどころではないのだ!! 後にせっ……いや、そうじゃな。 今行くからちょっとそこで待っておれ!」
 
「か、かしこまりました!!」
 
「ふー、そう言う訳じゃまどか殿。 わしは一旦席を外す事にするのじゃ、すまんな」
 
「えっ? いや、全然気にしてないけど……」
 
 そう言っておっさんはおれに一礼し、扉の方へ向かって歩いて行った。
 
 何がしたいんだ、あのおっさん。 まぁ良いや、なんだかんだ言ってもこの国の王様だし、余裕ないんだろうな。
 それに今はリアの話の方が大事だしな、おっさんの事は後回しにしよう。

 早足で部屋から出て行くおっさんの事を不思議に思いながらも、俺はリアとの会話を優先した。


 結果的にこの判断が大きな間違いだった事を俺はこの後すぐに体感する事になるのだった。
 
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