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ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。

31話 追放ざまぁは面白い

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「わ、悪かったのじゃ! 本気で反省しているのじゃ! だからこれ以上叩くのは辞めてくれ!!」
 
「はぁ? 何言っているの? まだ始まったばかりじゃない! それにこれは貴方が言い出した事なのよ? 幼女を殴るのは絵面が悪いってね。 だから私はこの方法を選んだのよ?」
 
「た、確かに我はそう言ったが、これはこれで酷いではないか! そもそも生娘如きの分際が偉そうに! 我を叩くなど決して許されるものじゃっ」
 
「うるさいっ!!」
 
「ひぎぃ!! うぅ……きゅ、急に叩くでない! 不意打ちは力を込めてない分、尚更痛いんじゃぞ!!」
 
「何? もしかして私に文句でもあるの? これ以上軽口を叩くなら回数を増やすけど??」
 
「……な、何でもないのです。 すいませんでした」
 
 俺が青蜜達の場所に辿り着いてから、似た様なやり取りを何回見た事だろうか。
 
 改めて冷静に考えてみてもそれは本当に奇怪な光景だった。
 
 結衣ちゃんが魔女の両手をしっかりと掴み、青蜜が自身の脇腹と片腕との間に魔女を挟み込んで持ち上げている。

 更に青蜜は大きな声で数字を数えながら、もう一つの手を使って魔女の事を全力で叩いていた……魔女の下半身、つまりはお尻を。
 
 まぁ、確かに魔女の姿に合わせた方法だとは思うけどさ。 
 高校生の女の子が二人がかりで幼女のお尻を叩くってなかなか見た事ないよな。 
 
 ……しかも100発だぞ? 青蜜の恨みも相当なものだな。
 
「21ー!」
 
「ぎゃぁ! い、今のは痛い! ちょっとタイムじゃ! 休憩じゃ! 休憩を要求する!!」

「駄目よ。 はい、22ー!!」
 
 魔女の半目の要求も意に返さず、青蜜は力強く腕を振り下ろす。
 
 な、なんか青蜜さん変なスイッチ入ってない?? 楽しんでいる様に見えるのは俺の気のせいだよな?? 
 明らかに高揚感で頬が緩んでいる青蜜を眺めながら、俺はこのお尻叩きが終わるのをただただ待つ事にした。
 
 最初は止めようかとも思ったが、いざこの場に来たら青蜜の方を支持してしまったのだ。
 
 俺もこの魔女には散々やられたからな。 少しくらいは痛い目を見るべきだと思っているし青蜜も流石に100回もお尻を叩いたりはしないだろうからな。 
 勿論結衣ちゃんの魔女殺しには今でも反対だけど。
 

 それにしても最近追放ざまぁ系が人気な理由がわかった気がするぜ。 俺達を馬鹿にし、見下してきた魔女が半泣きで謝っている。 これだけで十分に悦に浸ってしまう。
 
 長い時間かけてざまぁとやらを達成した時の快感は相当なものだろうな……今度読んで見るか。
 


「98ー、99ー、100!! ふぅー、まぁ約束通りこれで許してあげるわ」
 
 手を赤くし、額に汗を流しながら満足した表情で青蜜は魔女を離した。
 
 ほ、本当に100回も叩きやがった、自分だって相当痛いだろうに。
 
「お、終わったのか? わ、我はやり終えたのか? 耐え切ったのか??」
 
 50回目以降特に反応を示す事のなかった魔女は、青蜜の言葉に安堵したように呟く。
 
 長寿な魔女様でも流石にお尻を100回も全力で叩かれるなんて事は体験した事が無かったのだろう、既にボロボロの状態まで追い込まれている様に見える。
 
「そうです、貴方はやり終えたのです。 後は楽になるだけですよ」
 
「おぉ、そうか。 何時の間にか我はやり終えていたのか……」
 
 結衣ちゃんは優しく魔女に語りかけ、今まで頑なに離さなかった手を解き、ゆっくりと魔女の首筋に移動させた。
 
「ぐえぇ、ぜ、全然楽にならんのじゃがっ」
 
「最初だけです、直ぐに楽になりますよ。 ふふっ、安心してください。 私も直ぐに向かいますから。 そうだ! もし同じ所に行き着いたら今度はもっと少し仲良くしましょうね?」
 
 ん??

 はっ!! ほ、本気で殺す気だ!! 正直なんだかんだ言いながらも結衣ちゃんが魔女を殺す訳ないよなって心の中では思っていたけど、これは本気のやつだ!! 

 現に今殺そうとしてるじゃん! そしてその後に自分も死ぬつもりじゃん!!
 
「す、ストップ!! 結衣ちゃん! ちょっと待って!!」
 
 あまりの衝撃に思わず結衣ちゃんの手を強く握りしめて俺は叫んだ。
 
「こ、今度はまどかさんですか? 何でしょうか??」
 
 結衣ちゃんの声と魔女の咳き込む声が同時に部屋に響く。 
 
 ど、どうやら俺の言葉に結衣ちゃんは一旦力を緩めてくれたらしい。 それにしてもまさかここまで自然な流れで魔女の息の根を止めようとするとは思ってなかった。
 後少し反応が遅れたら大惨事になっていたのではないと冷や汗をかいたぞ……。
 
 兎に角、今は時間を稼ごう。 何とかして結衣ちゃんを止める方法を考えるべきだ!!

 俺は結衣ちゃんの手を握り締めたまま、どうにかして結衣ちゃんの怒りを抑える為の方法を必死で考え始めた。
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