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ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。

14話 宝物

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「で、具体的にはまずどうするべきだとかしら??」
 
 青蜜は小声で俺と結衣ちゃんに話す。
 
 おっさんに聞いても話が進まないと思ったんだろう、その点は俺も同じ気持ちだ。
 
「私ずっと気になってた事があるんですけど良いですか??」
 
「気になっていた事? 何かしら??」
 
「その、わざわざ言うのも恥ずかしいのですが、そもそもこの世界が滅びるってどうして王様にはわかるのかなぁって。 
 私も外の様子は見ましたが、皆さんとても楽しそうに過ごしていましたし、そんな雰囲気全くなくて……」
 
 その言葉を聞いた瞬間、俺と青蜜は互いに顔を見合わせる。
 
 た、確かに結衣ちゃんの言う通りだ。 異世界に来たら言われるであろう、テンプレの台詞だったからか、おっさんのその発言を俺は全く疑って無かった。
 
 だけど、相手はあのおっさんなんだ! そもそも最初からずれている可能性だってあるじゃないか!! 

 こんな事に今更気付くとは……俺も大分舞い上がっていたんだな。
 
「さ、流石ゆいね。 貴方じゃなきゃこの疑問に辿り着けなかったでしょう」
 
 どうやら青蜜も同じ思いみたいだ。 

 今日話してみて分かったがこいつも結構異世界系好きそうだよな、なんか意外だけど。

「そ、そうですか? お役に立てて良かったです!!」
 

 そうと決まれば俺達のやる事は一つだ、もう一度最初からおっさんの話を聞こう。 

 あのおっさんの事だ、 世界が滅びる夢を見たんじゃ! とか言っても不思議じゃないからな。
 
「おっさん! ちょっと良いか??」
 
「何じゃ? わしの考えた案が凄すぎて驚いたのか??」

 そんな訳あるか、案ってあれだろ? 超能力者を探すってやつだろ? あんなので驚くなんて今時、小学生でもいないだろ。
 
「いや、そうじゃなくて。 俺達大事な事を聞いてなかったなって思ってさ。
 おっさんは世界を救うって言ってたけど、そもそもこの世界に危機なんて本当に訪れるのか??」
 
 結衣ちゃんから教えてもらった疑問を俺はそのままおっさんにぶつけた。
 
「何じゃそんな事か。 まぁ確かに、思えばまだ何の説明もしていなかったのぅ、じゃが安心せい!!
 この世界が滅びる事はわしには、はっきりと分かっておるのじゃよ」
 
 ……いや、安心したら駄目だろ。
 
「何でおっさんにはわかるのかしら? 世界が滅びると言い切れる根拠はなに??」
 青蜜が畳み掛ける。
 
「んー、これはあんまり人に話して良いことでは無いのだがな……まぁお主達は異世界人じゃし話しても問題なさそうじゃな」
 
 何時もより真剣な表情でおっさんは考え込んだ。


 も、もしかしてこの国機密情報と言った所なのだろうか? 
 だとしたら結構信憑性も高まってくるけど。
 
「……わしがこの世界が滅びる事を知っている理由。
 それはのぅ、これじゃよ!!」 
 
 おっさんはそう言うと内ポケットから一冊の古びた本を取り出し、俺達に見せつけた。
 
 その本を見た瞬間、思わず俺は呆れてしまう。

 ……おいおい、このパターンはもう充分だぞ??

「ふふふっ。 流石のお主らもこれの凄さに驚いて声も出ない様じゃのぅ?
 そう、これはな! なんと予言書なのじゃよ!!」
 

 ……解散だな。 この件は次の人達に任せよう、なに恥じる事は無いさ。 
 俺達には荷が重すぎたんだ、このおっさんは。
「どうせまたしょうもない予言書なんだろ、あれ」
 
「ま、まどか殿! なんて事を言うのじゃ!! これはわしの宝物だぞ??」
 
 ま、また声に出てたか。 まぁ今回のは別に良いか。
 
「予言書がおっさんの宝物なの?」
 
「そうじゃ! わしが王位を継承した日、父上から譲り受けた大切な品じゃ!
 その時に父上から聞かされたのじゃ、この予言書だけは大切に保管し、必ず毎日中身を確認する様にとな!!
 
 それから数十年わしは言われた通り毎日この本を持ち歩き、空いた時間を見つけては開いておったものじゃ……懐かしいのぅ。 

 あの時代は良かったのぅ、今と違って不便な所もあったけれど、その分何処か暖かい雰囲気がこの国全体をっ」
 
「で、その中身はなんて書いてあるのよ? 
 後何ヶ月後にこの世界が滅びるとか詳しい事が書いてあったりするの??」
 
 青蜜はおっさんの長くなりそうな昔話を早々にぶった切った。 
 おっさんは無慈悲なぶつ切りに不服な表情を浮かべつつも、渋々その質問に答える。
 
「そんな事は書いておらん。 それにこれは最近までずっと白紙じゃったからな」
 
「「「えっ?」」」
 
 俺達は三人合わせて声を出した。 
 多分俺を含めて、誰一人としておっさんの言葉が理解できなかったのだろう。

 白紙の予言書って……なんか意味あるのか?
 
「じゃあ結局なにもわからないって事じゃない!」
 青蜜は少しだけ声を荒らげる。  
 
「い、いや、ちゃんと最近までって言ったではないか! 今は書いてあるのじゃぞ? ほれ! これを見てみい!!」
 
 青蜜にびびっているのかおっさんは両手で本の端を持ち、俺達に見える様に大きく本を開いた。 
 
 
 えーと……あれ??

 全然読めないんだけど??
 

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