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リウ様迷子事件

裏路地

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 リウは2人の少年に先導され、裏路地に入った。そこは、複雑に入り組んでいて、道を知らぬ者が一本入る道を間違えば、きっと出ては来れないだろう。
 そんな道をリウは2人を見失わないように懸命に走った。
 「待って…待ってよー」
 「おい、早くしろよ!」
 先導していた赤毛の少年が振り向くと、さらにその少し先を走っていたもう1人の少年が表情に影が差した。
 「ねえ、もうここでいいんじゃないの」
 その言葉に赤毛の少年もピタリと足を止め、「うん、それもそうだね」と返すとポケットから折りたたみ式のナイフを取り出した。そのナイフをリウの首筋に突き付けながら言った。
 「ねえお嬢さん。君、綺麗なローブ着てるね。それ、ここに置いて行ってくれない?」
 突きつけられたナイフ、笑顔の消えた少年、見知らぬ裏路地で誰かに助けを求められる訳でもない状況に、リウはみるみるうちに青ざめていく。そんなリウに対し、さらに追い詰めるように一歩踏み出す赤毛の少年。もう1人の少年はまるで、早くしろよと言わんばかりの視線をリウに送る。
 「言うことを聞いてくれれば、その可愛い顔に傷をつけずに済むんだけど」
 ほら早く、そう言葉が続きかけると、少年たちの後ろから、また別の声がそれを遮った。
 「何してるの」
 それは女の子の声だった。
 2人の少年はその声の方を振り向くと同時に「げ、」と心底嫌そうな声を漏らす。何やら慌てた様子である。
 「お前…っ!今日は出掛けてたはず…いつ帰ってきたんだよ」
 赤毛の少年が僅かに移動し、それによりリウにも、声を掛けてきた少女の姿が見えた。
 「シュレア!」
 シュレアと呼ばれた少女。髪は伸びっぱなし、痩せこけた体、その目つきは鋭く、まるで刺されてるみたいだ、とリウは思った。服装は今目の前にいる2人の少年よりも簡素で、ボロのワンピースに腰巻きをしているだけだった。靴も履いていない。
 「弱いものいじめは楽しい?」
 少女はニタリと笑った。その言葉に赤毛の少年がピクリと反応する。
 「黙れ…っ」
 ナイフを握った拳を引いて打ち出す用意をする。
 「やるならやれよ」
 しかし、シュレアは拳に対し身構えるどころか、そんな素振りすら見せず、笑っている。
 「丁度イライラしてたんだ。相手をしてくれるなら大歓迎さ」
 ほら、やれよと目を細めると、気圧されたのか、少年たちは「今日は勘弁してやる!」と、先程まで拳をふるおうとしていたとは思えない、何とも情けない声で叫ぶとバタバタと逃げていってしまった。
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