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第九章 揺れる
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事前にラヴィから聞かされていたからか、不思議と、あまり動揺は無かった。しかし、やはりシュレアと顔を合わせると、決意が揺らぎそうになる。
ああ、なんて顔をしているの?シュレア、あなたには笑顔が一番似合うのに。
久しぶりに見たシュレアの表情は今にも泣きそうで。けれど、リウは今は檻の中。その体を抱き寄せてあげることもできない。
この子を置いて行って、本当に大丈夫だろうかと不安になる。普段は頼もしいシュレアだが、時折、彼女が年上だと忘れてしまうくらい、捨てられた子どものような顔をする。
ああ、ああ、だから、
「私は、会いたくなかった」
シュレアに一通り、ハナが死んだ経緯を話した。彼女が自分で毒を飲んだことも。
こんなことを説明したらきっとシュレアは…
「それでは、リウ様は、冤罪ではないですか…!!」
ほら。やっぱり。
「でもね、シュレア」
「"やってもいないことでどうして死なないといけないの"」
シュレアが発したその言葉には聞き覚えがあった。いや、正確には、リウ自身が発した言葉だった。
「これは、リウ様が、私をこの牢から出してくださった時、当時冤罪で捕まり、死刑が決まっていた私にくださった言葉です。覚えていらっしゃいますよね」
「…そんなの、覚えてない」
「嘘ですね。リウ様は嘘をつくと、必ず洋服を握るんです」
言われて、薄汚れたワンピースの裾を握りしめていることに気づいた。
「どれだけ、あなたをお傍で見てきたと思っているのですか」
シュレアは酷く悲しそうな表情を浮かべている。しかし、その表情を拭いさってあげられる術を、今のリウは持っていない。いっそ、嫌ってくれればいいのにと心から願う。
「ここから出ましょうリウ様。どうにか冤罪を証明できる方法を考えて…」
「そんなこと、出来ないよ。薬を入れたのは私だもん。その事実は変えられない」
「な、なら…逃げましょう、どこか遠くへ!」
「そんなことをすれば、この国に戦争が起こって滅んでしまう」
「私にはそんなことどうだって良いのです!!リウ様が生きてくださればそれで」
「私は良くない。お願いシュレア、分かって」
シュレアはどうにかして、リウを生かそうと懸命に言葉を紡ぐ。それはリウに対しての好意、信頼、依存心からの甘やかしの言葉。リウに生きていてもいいのだと伝えるその言葉は、リウの決意を揺らがしていく。しかし、リウはシュレアを宥めるように、そして、自分に言い聞かせるように、できるだけ、優しい声でしっかりと話す。
「ハナさんを殺そうとしたことも、私が薬を入れたことも事実、それを実行した結果、ハナさんが命を落としたのも事実。それならば、私は裁かれなくちゃ」
「そんな…っ」
これ以上、シュレアの優しい甘やかす言葉に耳を傾けてはいけないと、そう感じていた。
「ありがとうシュレア、私を信じてくれて。あなたに出会えて幸せだっだよ」
そう言いながら、リウは兵の待つ部屋へ繋がるベルの紐を引く。
「待ってください、リウ様!そんな最後のような言葉聞きたくありません…!」
「ごめんね」
ベルを聞きつけた兵がすぐに駆けつけた。そうしてシュレアを発見すると、シュレアを捕らえる。
「無断で牢に入るなど、許されないことであるぞ!来い!お前も牢に入れてやる!」
「待っ…離せよ!リウ様…!!」
シュレアは数人の兵に連れられていった。
許可なく牢に近づくことは禁止。それはこの城の掟で、それを破ればしばらくの軟禁生活となる。恐らく、扉を守っていた兵が眠っていたこともあり、そこまで長くはないだろうが、リウの死刑執行日に解放されているかどうかというところか。
どちらにせよ、都合がいい。これで、シュレアはリウの処刑を中止にする手段を絶たれたようなもの。リウは最後にもう姿の見えなくなったシュレアに向かって一言、ありがとうと呟いた。
ああ、なんて顔をしているの?シュレア、あなたには笑顔が一番似合うのに。
久しぶりに見たシュレアの表情は今にも泣きそうで。けれど、リウは今は檻の中。その体を抱き寄せてあげることもできない。
この子を置いて行って、本当に大丈夫だろうかと不安になる。普段は頼もしいシュレアだが、時折、彼女が年上だと忘れてしまうくらい、捨てられた子どものような顔をする。
ああ、ああ、だから、
「私は、会いたくなかった」
シュレアに一通り、ハナが死んだ経緯を話した。彼女が自分で毒を飲んだことも。
こんなことを説明したらきっとシュレアは…
「それでは、リウ様は、冤罪ではないですか…!!」
ほら。やっぱり。
「でもね、シュレア」
「"やってもいないことでどうして死なないといけないの"」
シュレアが発したその言葉には聞き覚えがあった。いや、正確には、リウ自身が発した言葉だった。
「これは、リウ様が、私をこの牢から出してくださった時、当時冤罪で捕まり、死刑が決まっていた私にくださった言葉です。覚えていらっしゃいますよね」
「…そんなの、覚えてない」
「嘘ですね。リウ様は嘘をつくと、必ず洋服を握るんです」
言われて、薄汚れたワンピースの裾を握りしめていることに気づいた。
「どれだけ、あなたをお傍で見てきたと思っているのですか」
シュレアは酷く悲しそうな表情を浮かべている。しかし、その表情を拭いさってあげられる術を、今のリウは持っていない。いっそ、嫌ってくれればいいのにと心から願う。
「ここから出ましょうリウ様。どうにか冤罪を証明できる方法を考えて…」
「そんなこと、出来ないよ。薬を入れたのは私だもん。その事実は変えられない」
「な、なら…逃げましょう、どこか遠くへ!」
「そんなことをすれば、この国に戦争が起こって滅んでしまう」
「私にはそんなことどうだって良いのです!!リウ様が生きてくださればそれで」
「私は良くない。お願いシュレア、分かって」
シュレアはどうにかして、リウを生かそうと懸命に言葉を紡ぐ。それはリウに対しての好意、信頼、依存心からの甘やかしの言葉。リウに生きていてもいいのだと伝えるその言葉は、リウの決意を揺らがしていく。しかし、リウはシュレアを宥めるように、そして、自分に言い聞かせるように、できるだけ、優しい声でしっかりと話す。
「ハナさんを殺そうとしたことも、私が薬を入れたことも事実、それを実行した結果、ハナさんが命を落としたのも事実。それならば、私は裁かれなくちゃ」
「そんな…っ」
これ以上、シュレアの優しい甘やかす言葉に耳を傾けてはいけないと、そう感じていた。
「ありがとうシュレア、私を信じてくれて。あなたに出会えて幸せだっだよ」
そう言いながら、リウは兵の待つ部屋へ繋がるベルの紐を引く。
「待ってください、リウ様!そんな最後のような言葉聞きたくありません…!」
「ごめんね」
ベルを聞きつけた兵がすぐに駆けつけた。そうしてシュレアを発見すると、シュレアを捕らえる。
「無断で牢に入るなど、許されないことであるぞ!来い!お前も牢に入れてやる!」
「待っ…離せよ!リウ様…!!」
シュレアは数人の兵に連れられていった。
許可なく牢に近づくことは禁止。それはこの城の掟で、それを破ればしばらくの軟禁生活となる。恐らく、扉を守っていた兵が眠っていたこともあり、そこまで長くはないだろうが、リウの死刑執行日に解放されているかどうかというところか。
どちらにせよ、都合がいい。これで、シュレアはリウの処刑を中止にする手段を絶たれたようなもの。リウは最後にもう姿の見えなくなったシュレアに向かって一言、ありがとうと呟いた。
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