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11話(ルーファスside)

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俺がウラドに恐怖を覚えたのは入学して間もない頃だ。



***



「あのルーファス殿下。もしお時間がありましたら少しお話したいと思っているのですが、ご都合はいかがでしょうか?」

「ん?お前確か……あ、そうだ。シアの婚約者か」

「…はい。ルーファス殿下に覚えていていただき光栄です」

なんか妙な間があったような…。まあ気にするほどでもないか。

「そりゃシアの婚約者くらい覚えてるよ。んで話だったよな?ここで済む内容か?」

「いえ、出来ればあちらの空き教室でお願いできないでしょうか」

「分かった」

ウラドのことはアリシアから嫌というほどに話を聞いてるから、まるで毎日共に過ごす友人のような感覚で気軽にその誘いを受けた。
周りに聞かれたくない話っつーとアリシアのことか?さすがにアイツのクソ重い愛情に嫌気が差したんだろうか。ダメだ、めちゃくちゃ有り得る。あれは確かに昔から一緒にいる俺でもドン引くからな…。


もしそんな相談をされたら俺の立ち位置すごい危うくないか、とこの後のことを考え気落ちしながら、俺達以外の誰もいない教室の扉をウラドが閉じた。

「それで直球で聞くが話ってのはシアの、」

「シアと呼ばないでくれますか」

「エッ」

「自分の方がアリシアと仲が良いというアピールですか?どう頑張っても嫌悪感が拭えないので今すぐやめてください」

「アッ、ハイ。じゃあそのアリシアの、」

「呼び捨ても却下で。いくら乳兄妹と言えど結局は他人。婚約者の私と同様かそれ以上の距離など言語道断ですから」

「…あー、じゃあアリシア嬢で…」

「まあそれくらいならギリギリ許容範囲か」

……アリシア…話が違うんだけど…!?何が虫も殺せぬ博愛主義の美男子!?俺今ソイツにこれでもかってくらい嫌悪感たっぷりな視線を向けられてんだが!


私の・・アリシアは」

すっげえ"私の"を強調してきた…。さっきまでのアリシアに嫌気が差してるかもって心配はもはや必要なくなったけど、違う意味で嫌な予感が止まらない。

「とても美しく慈愛に満ち溢れ、淑女の鑑の様な女性でしょう?」

……それ一体誰の話だ?いや確かにアリシアは美人だが、後半は別人の話じゃね?
俺の知ってるアリシアは目的の為なら、他人の弱みを掴んで脅すのも絡め手で騙すのも暴力に訴えるのすら良しとする極悪非道な令嬢だが。

「ああ、それに愛情深くもありますね。嫉妬する彼女はとても可愛らしくていつまでも見ていられます」

なんで俺は惚気られてるんだろう。
何よりアイツの嫉妬って可愛らしいか?この前なんか転けるフリしてウラドの背中に倒れかけた令嬢の顔面に近くにあった花瓶の水を花ごとぶっかけて、花瓶のあった場所の近くに転ぶように誘導してあたかも自分は関係ないふうを装ってたぞ。
俺なんかその時のアリシアの目が恐ろしすぎて、曲がった廊下の角を逆戻りしたし。

自分の背後で起こった出来事だから実際に見ていなかったにしても察するんじゃないかと思ったが、全く気付かない素振りだったから鈍感なんだとばかり。
だがアリシアの嫉妬自体に気付いてるなら何をしてるかも知ってるんだよな…?それでいてこの態度。……どうしよ、逃げたい。
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