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第一章
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しおりを挟むゴクリッと唾を飲み込み、口を開く
「あの、守り石って、僕でも作れる?」
「守り石、有れば可能だ」
「どんな石がいいの?」
「己が守り石と思える物だ」
守り石もただの石も、僕には違いが
わからなかったんだけど…
「ハルは見てわかるの?」
「触る、見る、解る」
見るだけじゃわからないけど、触ればわかるのかな
「・・短剣の石、触ったけど
よくわからなかったよ?」
「短剣の守り石、カミュ殿合わぬ」
「合わない石があるの?」
「有る」
「でも、この守り石はディーのだよね」
「其れ、特別だ」
ディーの守り石は持っていると
なんだか安心する感じがするけど
これは参考になるのかな?
「マーシュ、いるか?」
「はい」
シリルが開けっぱなしの扉に声をかけたら
すぐにマーシュが入ってきてビックリする
いたんだ…
ずっと廊下で待機してたのかな?
シリルが何かを耳打ちすると
マーシュはすぐに出ていった
「貴方はカミュ様の守り石を見分けられるのか?」
「選べる
決めるのはカミュ殿だ」
「なるほど…」
程なくして、マーシュが戻り小さな箱を
シリルに渡した
「この中に、守り石になりそうな物はあるか?」
シリルが開けた箱の中にはいくつかの宝石が
並んでいた
緑色はエメラルドかな
シリルの目の色と同じだ
ひょっとして、シリルの私物?
青はサファイアとターコイズっぽい?
シリル、青が好きなのかな?
「無い」
「そうか、これはどうだ」
もう一つ差し出したのは、小さなトレイで
コインが並んでいた
金貨、銀貨、銅貨の三種類だ
「違う」
一刀両断だった
あれって、お金だよね?
初めて見た
触ってみたいかも…
「僕も見ていい?」
「どうぞ」
両方差し出されたけど、コインの方だけ引き寄せる
金貨を持ってみたら、ズシリと重みを感じた
うわっ、結構重いんだ
手を上下させて、重みを確かめる
「其れ、守り石にならぬ」
これが気に入ったと思われたのかな?
「あ、うん
ちょっと触ってみたかっただけなんだ」
「そうか」
「この中にはないか…
マーシュ、原石を集められるだけ集めてくれ」
「かしこまりました」
綺麗なお辞儀をして、マーシュは出ていった
「原石ってなぁに?」
「宝石に加工する前の石の塊です」
「それ、どうするの?」
「守り石が欲しいのではないのですか?」
「欲しい…けど
今、集められるだけ集めてって言わなかった?」
「はい、私にも守り石がわかりませんので
とにかく石を集めるしかないかと考えました」
「・・お金、かかるんじゃ・・」
「カミュ様の心が休まるのなら、安いものです」
「でも…」
僕にお金を使うなんて、もったいない
そう思っても、言葉にしていいのかわからず俯いた
「カミュ殿、守り石持つと良い
細過ぎる」
グサリ、とハルの言葉が胸に刺さる
き、気にしてるのにぃー
「む、此れを食べたいか?」
恨めしい気持ちでハルを見たのに、手に持っていた
マドレーヌが欲しいと思われたらしい
「カミュ様、私のをどうぞ」
シリルにまで僕がお菓子を食べたい様に見えたのか
と思ったら、憐れみの目で見ていた
なんか、悔しい…
そう思いながらもマドレーヌののったお皿を
受け取り、もそもそと食べる
「食欲と守り石って、関係あるの?」
ふと、疑問に思い聞いてみた
「カミュ殿、有る」
僕にはある?
「じゃあ、ディーは?」
「無い
ディー、食欲有る」
僕は食欲がないから、効果があるってこと?
でも、なんで効くのか聞いても
これ以上は、わかんないんだろうなぁ
これまでのやり取りを思い返し、諦めた
お茶会って、こんなだったっけ?
想像していたお茶会とかなり違い、首を傾げる
最初からハルに拒否され、さらにシリルを怒らせ
ハルにとどめを刺された
あれ?
お茶会って、もっと和やかなものだよね…
クッキーをモグモグしながら、みんなを見ると
思い思いに過ごしている
ハルはマドレーヌが気に入ったみたいで
じっくり味わっている
シリルは静かに紅茶をたしなんでて
ロウは当然ながら後ろに控えている
会話が、ない…
さらにクッキーもなくなった
「こちらもどうぞ」
「・・ありがとう」
空になった皿を見て、シリルがまたお菓子を
差し出してくれる
僕、何しに来たんだっけ…
スコーンをモグモグしながら思い返してみる
「あっ、そうだ
昨日石を埋めたんだ」
「見た
良い所、埋めた」
「本当⁉︎」
「あぁ」
あの場所で本当によかったのか自信がなかったから
褒められて嬉しくなる
「あと、この守り石ってもっとピカピカしてた
ような気がするんだけど、気のせい?」
「それで良い
カミュ殿、守っている証」
「ひょっとして、これも壊れるかも
しれないの…?」
「壊れぬ」
「そうなんだ」
理屈はわからないけど、壊れないならよかった
ほっと胸を撫で下ろす
「守り石、気に入ったか?」
そう聞かれ、ブレスレットに目を落とす
そうなのかな?
ディーの物だから、そこまで考えてなかったな
「よく、わからないけど
持ってるとなんか落ち着く気がする」
「そうか」
「ハルも安心するの?」
「する」
よく考えればハル達にとって、この状況は
不安なのかもしれない
なのに、お茶に付き合わせてしまった
浮かれていた自分が恥ずかしくなる
「此れ、美味い」
顔を上げれば、スコーンにたっぷりのクリームを
塗って食べていた
「本当!
どれも僕の好物だから、気に入ってくれて
嬉しいな
ハルは甘いのが好きなの?」
「すき…?
美味い」
そう言いながらも、皿には二、三個お菓子を
残していた
「あれ?
全部食べないの?」
「ディー、後で食べさせる」
そっか、ディーだけ食べてないもんね
チラリとロウを見れば、笑顔で頷いてくれた
「あの、ディーの分は別にあるから
よかったら食べて?」
「良いのか?」
「うん」
わずかに滲んだ喜びに、こちらも顔が綻ぶ
やっぱり十五歳なんだなぁと親近感が湧く
ずっと淡々とした態度で落ち着いて見えた
何より百八十六センチあるロウと
少ししか変わらないくらい身長があり
同い年なのになぜこんなにも
違うのかと比べてしまう
「カミュ殿、腹、膨れたか?」
僕の手が止まったのが、お腹一杯になったと
思われたらしい
「うん、一杯になっちゃった」
考え事をしていただけだけど、そろそろお腹一杯に
なりそうだから、頷いておく
「そうか、寝ろ
寝る子は育つ」
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