・・その狂気は伝染する・・

第三章 狂気と共に明ける明治維新

15代将軍徳川慶喜の決断128

　「俺は後悔しても後悔しきれない残虐な事をしてしまった・・徳川の世を護りたいという一心で。」

 徳川慶喜は全てを寛永寺の住職に告白した。世を混乱と恐怖に落としいれた狂人流行病の流行の根源を告白したのだった。

　「左様でありましたか。慶喜様、よくぞ告白して下さいました。さぞ辛かったでしょう・・」

 慶喜は頭を垂らしたまま泣いていた。

　「さ、慶喜様、とりあえずお休みくだされ。奥の一間に布団を敷いておきましたゆえ。外の警護の者達にもお声をかけてきます。」

 そう言うと住職は外に出た。

　「おや？誰一人としていない。」

 外の警護兵士は誰一人いなかった。つまり、慶喜はもう一人きりなのだ。側近の誰一人としてもはや慶喜を信用する人間はいなかった。あの松平容保でさえ・・


 部屋に戻った住職に慶喜は言った。

　「誰もおらなかったろう？そうであろう？？」

 哀しみの瞳の奥にその弱さを感じた住職は慶喜に言った。

　「いえいえ、外には立派な警護兵士の姿がありました。慶喜様を最後までお守り致すとの事です。ご安心召され。」

 それを聞いた慶喜は安堵の表情を浮かべていた。そして奥の一間へと向かった。