・・その狂気は伝染する・・

第三章 狂気と共に明ける明治維新

15代将軍徳川慶喜の決断5

　「薩摩め！腹黒い奴らの集まりよ。将軍直々の上意を示した書状で、あの薩摩の芋共を屈っしさせるしかあるまい。」

 老中水野忠精は薩摩藩の責任を問うために将軍家茂の代わりに勝手に書状を書き、その書状を今度は格が最も低い奉行所の役人に届けさせた。

　幕府の薩摩に対する嫌がらせと圧力を示すための行動だった。

 書状を受け取った薩摩藩小松帯刀は大変激怒しながら渋々それを受け入れざる得なかった。

　「幕府め！言う事を聞かないと島津久光を幕府転覆の罪で極刑に処するなどと、戯けた事を。しかし、将軍家茂の直々の書き付けとは思えんな。あの小僧にこれだけの能力はないはず・・老中共の策略だろうな。ここは言う事を聞いたほうが無難か。」

 さっそく小松帯刀は藩主島津久光に責任を受け入れる必要があるとの手紙を送った。