・・その狂気は伝染する・・

第一章 狂気の根源

徳川忠長の秘密86

　高力忠房は忠長の幽閉されてる牢屋へと向かった。

　「失礼つかまつりまする！それがしは浜松藩藩主高力忠房と申しまする。忠長様とはお江戸で何度かお会いしてますな。このような場所に入れてしまうことをなにとぞお許しくだされ！」

 上の空でうわ言を言っていた忠長の顔がくるりと忠房の方へと向くなり、うわ言をやめた。

　「忠長様！こちらは白湯でござりまする！冷えたお身体にはこの白湯が一番でござる。ささ、お召し上がりくだされ。」

 忠長は忠房から差し出された湯飲みを手にとった。

　そして突然その白湯を忠房の顔にぶちまけた。

　「何をなさるか！！」

忠房の顔は赤く腫れあがった。すぐさま周りの警護の兵達がかけつける。

　「殿！大丈夫ですか？」

 忠房は一言言った。

　「忠長！きさまは罪人じゃ！！明日の朝即刻江戸へと連れて参る。それまで、せいぜいその冷たい牢屋でおのれの無様な姿を哀れむがよろし！」

 そういうと忠房は引き上げた。