・・その狂気は伝染する・・

第一章 狂気の根源

徳川忠長の秘密29

　その肝心の忠長は行方不明になっているとも知らぬ江戸方であった。

　・・東海道宿場町・・

 「忠長様の動向を逐一探ろうとしてる幕府の隠密数名がこの宿場町に入ったとの忍びからの報告でござります。」

 本陣にて指揮をとる家老達の元へと藩士から知らせが届く。

　「まずいことになった。失態に続く失態をさらに幕府に知られてはもう忠長様も藩もわしらも終わりじゃ・・」

 その時1人の家老がおもむろに叫ぶ。

　「斬ってしまえ！斬ってしまえばよかろう！！」

     「正気か？貴様！忠長様批判をしたうえに、今度は幕府の役人を殺せばよいと？なにをたわけたことを。」

 さらに他の家老が進言する。

　「どのみちもはや他に道はないじゃろ・・幕府の隠密を斬ってしまおう。」

反対する家老は1人だけ、多数派の勢いにもはや反対する事もできない状況であった。

　さっそく藩士らに隠密探索をしその場で見つけ次第手打ちにしろという命令を下したのだった。