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第六章

花火大会 5

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 帰宅するとすぐに、私は部屋で今日の課題に取り掛かった。いつもなら学校や図書館で片付けてしまうところだけど、今日は花火大会の支度もあるので、移動時間がもったいない。それに課題はいつもより少しだけ量も少なかったので、集中して済ませることができた。

 課題と明日の準備を済ませると、私はシャワーを浴びるため浴室へと向かった。きっと帰宅後にまたシャワーを浴びることになるけれど、今も汗だく状態なので、そんなままで浴衣を着るのは気持ち的に嫌だった。

 シャワーを済ませると、髪を乾かして髪型をセットする。日頃結い上げたりしないので、頸が全開になることに多少抵抗があるけれど、髪の毛をおろしたままだと格好がつかない。

 日本史に出てくる昔の女性は、みんな髪の毛を綺麗に結い上げているので、和装には日本髪が似合うのだろう。

 日本髪を結うには髪の長さが足りないけれど、高い位置で髪を括ってお団子ヘアーにすれば、それなりに格好がつくだろう。

 私は慣れない手つきで、髪の毛をセットした。

 母が帰宅したので、早めの夕飯を済ませ、母に着付けをお願いする。母は心得たとばかりに、テキパキと浴衣を着付けてくれた。

 今年ももちろん、浴衣の折り返し部分に保冷剤を仕込むのを忘れない。今はちょっとひんやりとして気持ちいいけれど、すぐに保冷剤が溶けてしまわないか心配だ。けれど、ないよりは全然いい。

 時計を見ると、もうすぐ約束の十九時だ。私は急いで仕上げにかかる。

 持ち物の点検が終わったタイミングで玄関のインターフォンが鳴った。母がモニターで確認している。

「お迎え来たわよ。ふーん……、こうしてじっくり見ると、なかなかのイケメンじゃない?」

「もうっ、お母さん、先輩に余計なこと言わないでよ」

 私たちは一緒に玄関へと向かった。

 母と先輩が挨拶をして、私たちは母に見送られながら家を後にする。

 ご近所さんも家族で花火大会へ行くのか、外はいつも以上に賑やかだ。

 先輩は私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる。なんだか申し訳ないと思う反面で、私のことを気遣ってくれているのがわかって嬉しく思う。

 花火大会の道中で、叔母と落合先生の話題になった。

「香織ちゃんのお母さんって、泰兄の彼女と似てないね。香織ちゃんのほうが、あの写真の彼女によく似てる」

「先輩もそう思います? 小さい頃から、私は亡くなった叔母に面差しがよく似ているって言われて育ったんですよね。両親のどちらに似ているか聞いたら、当然母って言われますけど、叔母の写真を見せたら、叔母そっくりってよく言われてました」

 叔母が亡くなった年に生まれただけに、よく生まれ変わりじゃないかと言われたけれど、私は私だ。顔が似ているだけで、叔母が経験した過去の記憶があるわけではない。

 以前は叔母のことをしっている人から「叔母に似ている」と言われるたびに、なんだかモヤモヤしていたものだ。

「僕は父親に似てるってよく言われていたんだけど、最近はふとした仕草や雰囲気が、泰兄に似てるって言われるようになったよ。両親より親の兄弟に似てるって言われると、血の繋がりってなんか不思議に思えるよね」

 先輩の言葉に、ささくれ立っていた気持ちが少し落ち着いた。
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