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第一章

出会い 2

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 全校生徒の下足場は、正面玄関横にある教棟一階で、一年生の靴箱は一番奥にあった。

 下足箱には出席番号が表示されており、私は自分の出席番号のところへローファーを入れると、自宅から持ってきた上履きを履いて校舎へと足を踏み入れる。
 下足場から抜けると、教室まではそこまで混み合ってはいなかった。

 夏休みに体験入学で一度校舎の中に入ったことはあったけれど、どこに何の教室があるかまで把握しておらず、校内にある張り紙を見ながら真莉愛と一緒に教室までたどり着く。教室の入り口には、座席表が張り出されていた。

「私は大概出席番号一番だから、いつも端っこの一番前なんだよな……」

 真莉愛は座席を確認しながらぼやいている。

 たしかに阿部という苗字だと、あ行だから一番最初になる確率は高い。真莉愛の言う通り、出席番号は一番だった。

「私はどこだろう……。あ、真ん中の列だ」

 出席番号順に並んでいるので、見つけやすい。私は二十四番で、真ん中の列の廊下側、一番後ろの席だった。

「ああ……、やっぱり席が離れてるね……」

 私と真莉愛は落胆の声を上げる。せっかく友達になれたのに、席が離れていると寂しい。

 ぽつぽつと教室に新入学生がやってきたので、私たちは「また後でね」と声を掛け合い、邪魔にならないよう教室へ入ると自分の席に着いた。

 入学式が始まる前にオリエンテーションがあり、先生の指示に従い、私たちは入学式が執り行われる体育館へと向かった。

 入学式は、新入学生とその保護者、来賓と教職員だけで執り行われる。

 もしかしたら、先ほどの先輩に会えるかもしれないと、秘かに思っていた私は肩透かしを食らった。どうやら午前中に始業式を終えた上級生は、用事がない限り下校しているようだ。

 入学式は滞りなく終了し、新入学生が退場する時に、吹奏楽部の先輩たちが体育館の二階で演奏をしている姿が目に入ったけれど、遠目でその中に先ほどの先輩がいるかなんてわからない。

 今度あの先輩に会えたら、きちんとお礼を伝えなければ。

 教室に戻り、一番最初のホームルームの時間が始まった。

 教室には新入学生の保護者も集まっているため、なかなか落ち着かない雰囲気の中、クラス担任の中居なかい先生が黙々と伝達事項を伝えている。その側で、副担任の落合おちあい先生がプリントを配布したりと中井先生のフォローをしている。

 中居先生は、見た目四十代の男性教諭で、第一印象は熱血漢。とにかく熱い人だ。
 対する落合先生は見た感じ三十代の男性教諭だ。メガネを掛けているけれど、先ほどの先輩にどことなく雰囲気が似ている。きっと先輩が年齢を重ねたら、あんなふうになるのかな……。

 そんなことを考えていると、あっという間にホームルームが終了した。

 入学時に提出する書類を提出し、今日はこれで解散だ。

 鞄の中に荷物をまとめていると、真莉愛が私の席にやってくる。その手には、スマホが握られていた。

「香織、連絡先交換しよう」

「うん、ちょっと待ってね」

 私は鞄の中に忍ばせていたスマホを取り出すと、電源を入れる。

 この高校はスマホの持ち込み可能だけど、使用は放課後のみと定められている。それまでは電源を落としておかなければならない。

 スマホを取り出すと、SNSと無料通話アプリのIDを交換する。

 それを見ていた近くの席の子たちも、良かったら私とも連絡先を交換しようと声を掛けてくれたので、その子たちとも連絡先を交換した。

 せっかく連絡先を交換したので、いろいろ話をして親睦を深めたいところだったけれど、先生に帰宅を促されたので、私たちは後ろ髪を引かれる思いで教室を後にした。
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