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第3話 雨宮

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 中学生の時、同級生の仲の良い普通の男を好きになった。

 しかし、その男が好きだった女から、告白されて付き合うことにした。

 告白されれば付き合う。
 そして別れるを何度も繰り返した。

 高校に入学すると、求められるままキスもセックスもした。

 彼女達を好きだったかどうか、思し返してみるとわからない。

 小さな違和感はあった。
 その違和感は相手にも伝わるようで、長く続かない。

 その頃、男も女も好きになるバイセクシャルに分類されるのだと知った。

 俺がバイセクシャルだと告げても、彼女達は特に変わらなかった。
 
 俺の内面など、どうでも良かったのかもしれない。

 女にモテる顔に産まれても、好かれたい相手には羨ましがられるだけで終わってしまう。

 男に好意を持っても、気持ちを伝えようと思ったことはなかった。
 楽な方に逃げていた。

 ところが、大学四年になった時、新入生にやたらと好みの男がいた。

 リスみたいな小動物系で、豊かな表情は見ていて飽きない。

 でも、やっぱり男を好きになっても進展しない。

 特別扱いしても苦笑されるだけで、食事に誘ってみても二人だけで会えることはなかった。

 だが、それでも反応が可愛くて、好きな気持ちが溢れるばかりだった。

 大学卒業式、逃げてばかりだった俺は初めて告白した。

 緊張して震えそうになった。
「会えなくなるの寂しいな。だから」

 バイだと知られているから、同性同士でも意味は通じるはずだ。
夏生なつき、付き合おう」

 夏生が「うん…」と嬉しそうに恥ずかしそうに頷いた。

 あの時の自分を褒めたい。

 告白してなけらば、こんな風に、裸で抱き合うこともなかった。

 夏生の部屋のベットで、ぴったりと体を密着させ、後ろから抱きしめる。

 精を出したばかりの俺の性器は、まだ夏生の中にあった。

 気持ちいい。
 このまま、ずっと中にいたい。

 うしろから夏生の胸をさぐる。 
 突起を見つけ、指で優しくつまみ捏ねた。

「まだ、やる?」
 すでに二度果てた夏生は、掠れた声で言った。

「いい?」
 俺は甘えるように、夏生の頸に唇を寄せる。

「うん…顔見てしよ」
 夏生の望み通り、正面の体勢に変える。

 再び芯を持った器官を中から抜くと、夏生が小さく喘いだ。
「っ…」

 半開きになった唇に唇を重ね、夏生の舌を吸い口内で絡める。
 
 自然と腰が動き、お互いの性器をもぞもぞと擦り合わせた。
 
 夏生の足の間に入り膝裏を持ち上げると、再び立ち上がった自身を夏生の後ろにあてる。
 
 我慢ができず先端をぐっと早急に入れ、根元まで沈めると揺り上げた。

 乳首に強く吸い付き、
「やっいや…」
 と刺激に悶える夏生が可愛いくて仕方がない。

 口に含んだ乳首の先端を舌で撫でる。
 甘噛みし、舌で転がした。
 もう片方の乳首も同じように吸い付いて舐め、ぷっくりと赤くなる。

 俺の唾液で濡れた様子もたまらない。

「もうさ、俺以外の前で裸にならないでね」
「何?」
「誰にも見せたくない」
 と俺は訴えた。
 
 夏生の中に存在する弱点ばかりを狙い律動した。
 
「あっ…いぃ…ん」
 夏生の反応は、素直でわかりやすい。

 中の内壁が強烈に収縮する。
 溶けそうだ。

 連続して激しく奥を突き、快感を貪った。
 夏生がもがく。
 逃すまいと、夏生の腰を浮かせ深く打ちつけた。
 
 夏生が俺の腹の下で揺れる性器に手を伸ばす。
 先端から先走りが垂れて、膨らみきった性器を、夏生は手のひらで握った。
 
 俺も、もどかしそうに動く夏生の手ごと握って刺激をあたえる。

 奥を突くと同時に、敏感な夏生の鈴口の周りを親指で撫でた。 

「…あぁ…ぃく」
 
 夏生が三度目の精液を腹に吐き出す。
 同時に中がうねうねと締まり、俺も堪えきれずに射精した。
 絞り取られる。

 息を整える。
 
 午後十一時を過ぎていた。
 月曜の朝は、夏生の部屋から出社できるよう泊まりの用意をした。

 シャワーを一緒に浴び、半裸のまま布団に潜り込むと、隣で寝る夏生の肩を抱く。

「おやすみ。好きだよ夏生」
 と言うと、夏生が笑った。
 瞼にキスし「好き」ともう一度言った。

「夏生は?」
 
 自分からこんな恥ずかしい要求をするなんて。
 でも、聞きたかった。

「好き」
 夏生からの返しに、体が熱くなる。

 こんな未来があるって知っていたら、誰とも付き合ったりしなかった。
 
 夏生だけでよかった。
 

 



 あれは、夏生と付き合って五ヶ月目ぐらいだった。

 元カノからメッセージで連絡があった。

「出版社に就職希望者五人がOB訪問を希望してます。改まったものではなく、飲みながら先輩の話を聞かせてください」

 美香に会いたくなかったが、大学の先輩として快諾の返信を送った。

 約束した店に行くと、メッセージ通り美香を含めた学部生五人がいて、自分の就活体験を教え、後輩達の疑問や不安に答える。

 隣に座る美香が、俺の足の上に手を置き続けるのが邪魔で、手で払った。

 一時間過ぎた頃、ビール二杯で眠くなってきた。
 うとうとする。

 酔い潰れたのか、目が覚めるとホテルのベットで寝ていた。
 部屋の中には美香だけだった。

「ここは?」
「店に隣接したホテルがあったでしょ。そこよ」
 美香が答えた。

 ぼんやりしていると、キスをされた。
 
 服を脱ぎ始める美香を止める。
「やめろ」

 靴と鞄を探し、迷いもなく帰ろうとした時。

「あんなのどこがいいの?」
 と、美香が吐き捨てた。

 俺は引き返し、醜い美香の顔を見た。

 キスされた唇を、我慢できなく袖で拭く。

「いいとこなしの馬鹿なお前にはわからない。もう連絡してくるな」
 唸るような低い声が出た。

 飲み物に何か入れられたのではないかとさえ思った。

 ホテルに行ったことを夏生に知られてしまい、自分の口から伝えなかったことを心底後悔した。

 美香の嫌がらせは終わってなかったのだ。

 後から説明しても、いいわけにしか聞こえない。

 興味のない女達と付き合い続けた罰なんだろうか、と思った。
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