【完結】聖獣人アルファは事務官オメガに溺れる

犬白グミ

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23 倦怠感

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 翌朝。 
 寄宿舎の寝台で目覚めた俺は、異様な倦怠感に襲われていた。
 それでも無理をして政務宮に出勤したけれども、その判断は間違っていたようだ。

 体調はますます悪化して、昼時には食欲もなく頭痛と吐き気を起こしていた。
 下腹部から身体全体に広がる熱さは経験したことのない尋常さだ。

「マイネ?」

 心配したハンが、俺の背中に手を置く。
 そのとき、事務室の扉を蹴破るかのように飛び込んできたルシャードが、鋭い声で威嚇した。

「その手をどけろ」
「は?」

 ハンは手を引っ込める。

「かなり濃い匂いがする」

 苛立ったようにルシャードが呟くと、俺の両膝に腕を回す。 
 そうして俺を軽々と抱き上げた。
 そのとたん、俺の身体に痺れるような弾けるような衝撃が襲う。

 ――なんだ、これは。

 ルシャードの顔を見上げると、ルシャードもまた何かを感じたように瞠目していた。

 すぐさまルシャードは俺を抱き寄せて廊下に出る。
 すれ違った文官たちが何事かと立ち止まる。
 俺は咄嗟に「降ろしてください」と口にしかけたが、切迫つまった様子のルシャードを見ると、黙るしかなかった。

 ルシャードは渡り廊下を走り、金ノ宮に向かった。
 あっという間に金ノ宮の客室に運ばれると、寝台にそっと降ろされる。

「ここで休め。薬を持ってくるから、待っていろ」
 そう言うと、ルシャードは足早に部屋から出ていく。

 残された俺は寝台に座り込む。
 肩で息をする。
 倦怠感と身体の熱さだけではなく、何か恐ろしいものが俺に襲いかかろうとしていた。

 心臓が大きく二度跳ねた。

「え?」

 何もしていないのに性器が勃ち上がる。
 蕩けるように後孔が疼く。
 頭が沸騰したかのように理性を失い、アルファに抱かれたくてたまらなくなった。

 オメガの発情期。

 もう来ないものだと諦めたというのに。
 今更! 

 扉を開けたルシャードが、一瞬、怯んだ足を踏み出す。

「薬と食べ物と飲み物、あと着替えも置いておくから。俺が退出したら鍵をかけろ。こっちに浴室と手洗いがあるから自由に使ってくれ」

 ルシャードはテーブルの上にバスケットを置く。
 ルシャードの匂いが鼻腔をくすぐると、アルファを求める欲望だけが、俺を支配した。

 待って。行かないでくれ。
 駄目だ。引き止めてはいけない。
 俺は未知の発情期という恐怖と戦う。 

 ルシャードが退出すると、俺は泣きながら自慰をはじめた。

 男のオメガは、初発情期で身体がすり変わる。
 二十三歳ではじめての発情期を迎えた俺の心と身体は、相当な負担だった。

 何時間経ったかわからない。
 何度か射精したものの、おさまる様子がなかった。

「マイネ。鍵をしてくれないか。そちら側からしかできないんだ」

 扉の向こうでルシャードの懇願する声がして、少しだけ扉が開けられる。
 俺は、頭から布団を被って丸くなった。
 こんな姿を見られたくない。

「薬も飲んでないじゃないか……」

 ルシャードがテーブルの上を確認したようだ。
 近づく気配がする。

「来ないで!」 

 俺は、アルファがほしくて狂いそうだった。

 惨めだった。
 どうして、オメガで生まれてきてしまったのだろう。

 悔し涙が溢れ、俺は嗚咽が漏れないように必死に手のひらで口を覆った。
 すると、頭に被った布団が取り除かれた。
 見下ろすルシャードの金の瞳を、俺は泣き濡れた瞳で見つめる。 

「マイネ」
 興奮したようにルシャードが呼ぶ。

 俺の口を覆った手を掴んで引き寄せたルシャードは、噛みつくように唇を重ねた。
 俺の舌をルシャードの舌がからめとり、唾液を交換する。




 

 
 
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