望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

自分以外の生存者

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 何かあったらすぐ起きなければと体が分かっていたのか、浅い眠りだった。
 休まないよりはマシだが、どこか疲れが残っている気がする。

 寝た体勢も悪かったので立ち上がり、固まった身体をほぐしていく。
 身体が動かない、なんてことが無いよう念入りに。

 また冷蔵庫から食料を貰って調理し、いただき。
 トイレを済ませ、仕舞ってあった新品の歯ブラシを開封して歯を磨く。

 これから目指すのはコンビニか服屋のどちらかだ。
 近いところはコンビニだと思うが、周りの状況次第で諦めるしか無い。

 持ち物だが、ビー玉の数が減ってきている。
 もとよりそれほどの数を持たなかったのは失敗だったか。

 何かないかと部屋を漁ればトンカチがあったので貰っておこう。
 鉈2つ、バール、最悪の予備としてトンカチ。

 生きてる人相手だったら鉈を消耗するよりトンカチで十分だろうし。



 確認を終え、さて行くかと。
 ベランダに出たはいいけど、10を軽く超える【ゾンビ】が集まっていた。

 昨日、入るときに窓を破った音で集まったのだろう。
 他に音がないため、都会へ近づいているのに響いて集まってくるのか。

「…………」

 目が見えるのかの検証を少しだけするか。

 手を振ってみるが、誰も反応しない。
 これだけの数がいて気づかないのなら、見えない方向でいいか。

 だけど【変異種】が1種類とは限らない。

 情報はあればあるだけいいが、ゲームみたいに全体の何%集まっているのか分からない。

 知っている情報だけを信じ、頼りにしていると足元をすくわれる。



 1つ、息をこぼし。
 残り少なくなったビー玉を手に遠くへ投げる。

 ガラスの割れる音が響き、【ゾンビ】はそこへ向けて移動して行くが。
 数体、移動せずに俺を見て手を伸ばしている【ゾンビ】がいる。

 ……これは、どういうことだ?
 音を聞いて目が見えるようになるのか?

 でも、ここに残らないのがいるのは何故だ。
 俺に気づかなかったのか、見えていないのか。

 …………分からん。
 それに音が響き過ぎて【ゾンビ】が遠くからも集まっているように見える。

 考察はここまでにして移動を始めるか。

 ベランダを伝って横に移動していく。
 俺に気づいている【ゾンビ】は物を避ける思考もないのか、引っかかっているためわざわざ倒さなくても済みそうだ。

 体勢を整える時間があるほど【ゾンビ】が離れてるのを確認し、ベランダから飛び降りる。

 走ったりするなんてことはなく。
 着地した時の音を聞き、ノロノロとした動きで俺の元へと集まってくる。

 全部倒していっても次から次へ集まってくるだろう。
 進行方向上にいる邪魔なのだけ倒すか、退けるかにしておこう。

 止まっていて囲まれるのだけは一番避けなければならない。
 倒せたとしても物量には勝てない。

 軽く走りながら楽なルートを選んで進んでいったため、途中曲がったりしていたら再び四車線の道路に出た。

 車は橋の時みたいに詰まっているわけじゃないから上を移動するのは無理そうだ。
 【ゾンビ】もそこそこいるけど、進むぶんには問題ないな。

 橋も四車線の幅があり、目指したマンションは途中で曲がった二車線の道沿いにある。

 曲がり方を考えていけば。
 左に進んだ先の交差点は橋を渡って曲がらず進めばたどり着いた場所。

 右は……都心へと続く道。
 ならそっちへ進むしかないだろう。

 その前に服は変えて起きたいところだが。



「ちょっとー! おーい!」
「おーい! こっちだ!」

 移動していると、どこからか呼びかける声が聞こえてくる。

 声の方向へ目を向ければ、マンションのベランダに20後半ぐらいの女性。
 同じく20後半ぐらいの男性が俺に向けて手を大きく振っていた。
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