望む世界

終わらない始まり

向こう側で

　落ちそうになった。
　なんて危ない場面があったわけでもなく。

　途中、トラックの上で休憩を挟んだりしたが、橋を渡っているときは問題なかった。

「さて、どうするか」

　問題は橋を渡りきったところまで来たのだが、それなりの数の【ゾンビ】がおり。
　車を伝っていこうにも距離がある。

　あまり消費したくなかったが、ビー玉を複数個取り出し。
　１個ずつ時間をかけて投げていく。

　ある程度数は減らせたものの、車へ移った時の音のせいか残る【ゾンビ】がそこそこいる。

　それらは安全を第一に、上を取っている地理的優位を利用して頭にバールを振り下ろしていく。

　こうして橋を渡りきることができたのだが。

　思っていた以上に時間がかかった。
　空はすでにオレンジへと染まり、１時間も経てば暗闇が支配するだろう。

　夜目が効かないから早めに安全な寝床を探さなければ。
　一軒家よりもマンションの上の階が安全そうか。

　周りを見回し、パッと目についたマンションへと向かう。
　夕暮れ時で影が濃くなり、物陰に潜まれていたらすぐに分からないだろう。

　また屋根を渡っていきたいところだが……ビルやマンションが立ち並んでいるため、それは無理だった。

　気を引き締めながら、少し急ぐ。

　そのかいがあってか、日が沈みきる前に目指してたマンションまで着いたのだが、出入り口が電子ロック式だった。



　なので２階のベランダに外から入り、窓ガラスを割って鍵を開け、部屋へと入っていく。

　今回は誰もおらず、ノンビリとできそうだ。
　軽く部屋を見て回ったところ、女性の一人暮らしだと思う。

　冷蔵庫から食料をもらい、調理して夕食に。
　……着替えがないな。

　今から外に出るのも危険だ。
　今日はやめて明日、どこかで調達するしかないな。

　寝室から毛布だけ拝借し、リビングにあるソファーで包まり。
　何かあった時のためにバールを抱えて眠りにつく。