望む世界

終わらない始まり

Re_Birthday

　夢を見た。

　どこか高いところに座っているのだろう。
　風を強く感じる。

　足元に広がる景色に明かりはなく、どこまでも暗闇が広がっており、空を見上げれば埋め尽くすほどの星が煌めいていた。

　隣に座っているのは死んだはずの親友。

　声は聞こえないけれど、彼女が笑っているから、きっと楽しいことでも話しているのだろう。

　──楽しみに待ってるよ。



　なんとなく、彼女がそう言ったんだろうなと思いながら。
　気がつけば目が覚めていた。

　今日はエイプリルフール。
　もし、彼女が生きていたらといった夢でもみせてくれたのだろうか。

「……んなわけないか」

　すでに昼を過ぎていた。
　両親は海外にあるどっかの研究所で働いているためいない。
　一軒家に一人で住むのは掃除が面倒なのに、引越しを許さないとは……。

　今から何か作るのも面倒なのでお湯を沸かし、カップ麺で手早く済ませる。
　出かける用事もないのでＢＧＭとしてテレビをつけ、ソファーに寝転んでスマホをいじろうと思っていたのだが。

『現在、各国で大規模な暴動が起こっており──きゃぁ！』

　それだけ聞こえた後、中継していたカメラが壊れたのか画面に何も映らなくなる。
　すぐに画面は切り替えられたが、音声すら繋がらないらしく。『心配ですね』と話していた。

　この時間は昼番組をやっていたと記憶していたが、チャンネルを回してもやってる内容はどこも同じだった。

　世界中で暴動が起こっている。
　中国やアメリカの人が集まっているところは特に激しいそう。
　軍が出向いているそうだが、状況は良くないそうで。

　動画投稿サイトに暴動の様子が載せられており、コメントには【ゾンビ】の文字が。

「…………」

　テレビを消して自身の部屋に戻り、パソコンを起動させる。
　先ほどみた動画をもう一度流して見れば、画面の奥の方で噛まれて死んだと思われるおばさんが起き上がり、人を襲っていた。

　有名なゾンビゲーを連想するが、回復薬なんて存在しないし、倒したら金や弾が出るわけでもない。
　ゲームじゃなく、現実である。

　ＳＮＳを確認して見れば、トレンドに【ゾンビ】があった。
　いくつか海外の動画を転載してるのがあったが、それ以上に渋谷、原宿、新宿、秋葉原など、人が多く集まる場所で同じような事が起こっているらしい。

　何故、海外と日本で差があるのだろうか。
　事の始まりが日付の変わった瞬間からならば、夜中でも騒がしい海外なら広まるのは早いだろうな。

　こういった感染ものは鼠算式に増えていくから、あっという間に広がっていく。
　あれから一時間も経っていないが、トレンドには観光名所の名前が上がってきた。
　明日にはどれだけ生き残っている人がいるのか。

　世界的な規模で世の中が崩壊したのだ。
　合法的に『──』しても構わない世界になる。





　後に、この日は『Re_Birthday』と言われるようになる。
　『再誕の日』とは皮肉にしても上手く言ったものだ。