望む世界

不思議ちゃん

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消化不良

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 もしかしたら薫の言う『何かやばい』に当てはまるのは、ピエロなのだろうか。

 確かにコンタクトの取り方はおかしかったが、それさえ乗り越えたら後は友好的な方だと思う。

 何がやばかったのか、確認を取ってみるしかないか。
 ベランダからマンションを登っていき、奥の部屋に引きこもっていた薫に声をかける。

「だいぶここで時間潰した。急ぐ理由はないが、どうする?」
「……ここで休む」

 俺としてもマンションを登るのに疲れている。
 思った以上に時間もかかっていたし、こんな状態じゃ進んだとしても距離を稼ぐことは難しいだろう。

 一応の確認は取ったが、もとより今日はここで休むつもりだ。

 それよりも何故、薫の元気がこんなにないのか。
 その原因が全く分からない。

 本来ならこんな事、考えるだけ無駄だと切り捨てていたのだが……ピエロの忠告とやらで意識するようになってしまった。

 …………。

 あのピエロ、薫のことよく知っている口ぶりだったな。
 未だに測りかねている薫の考えまで。

 中途半端に情報を寄越すせいで、消化不良だけが溜まっていく。

「それで、薫の言うやばいってやつは通りすぎたのか?」
「……うん。デッカいのが通ったよね?」
「ああ、どう倒したらいいか分かんないからちょっかい出すのやめた」
「……ちょっかいかけようとしてたの?」
「出せたら出そうかなと」

 何か言いたげにしていた薫だが、俺の顔を見てため息をつく。

「おにーさんだもんね……」

 薫の中で俺の扱いが決まったようだが……これは聞かないでおいた方がいいやつだな。

「あのデッカいの、ちょっかいかけてたらバラバラになって物量で押されるから」
「ふーむ……? ならデッカいまんまよりも倒しやすいな」
「全部が【変異種】みたいなスペックでも?」
「……条件整ってたらいける」
「つまり、今じゃ無理」

 【変異種】みたいなスペックというよりは、【ゾンビ】の上位互換……みたいな感じか?

 そういう事なら、今度見かけたらちょっかい出してみるか。

「それよりもおにーさん」
「どうかしたか?」
「鉈が1つないけど、本当にちょっかい出してないよね?」
「ああ、デッカいのが通り過ぎた後、変なのに目をつけられて不意打ちくらった」

 追加情報以外を簡単にまとめて薫へと説明した。

 目をキラキラさせて羨ましそうにしており、気付けば出会った頃みたいに戻っていたが。

 いったい、何が原因で落ち込んでたのか。
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