望む世界

不思議ちゃん

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◾︎が◾︎◾︎◾︎◾︎

ピエロ

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「……ご主人?」
「ほほほ。これ以上の情報を与えれば、貴方様に推測されてしまいます。……現時点でもご主人にバレたらお説教ものです。ほほほ」

 そのご主人とやらは恐ろしいのか、後半は声のトーンが少し下がっていた。

「お前、俺のこと知ってる口ぶりだな」
「ほほほ。そのような事は」
「情報を与えたら推測されるってのにも引っかかったが、その前にお前が口にした『様子を見てこい』ってやつ。俺の事を知ってる以外にどう受け取れと?」
「…………ほほほ。様子を見てくるのは、今の世界がどうなっているのかでございます。それがご主人の目的であり、腕試しは私個人の目的であります」
「……まあ、そういう事にしておく」
「ほほほ。もとよりそういう事なのです」

 さて、次の質問をしていこうかと思ったんだが。

 付けてもいない腕時計で時間を確認する動作をしたかと思えば、慌てたふりを始める。

「ほほほ。大変申し訳ないのですが、そろそろ私は戻らなければ」
「俺と話してるとボロが出そうだからじゃないよな?」
「や、そんな事はありません」
「笑わなくて大丈夫なのか?」
「……ほほほ。問題ありません」

 からかいすぎてキレたらすぐに負けるだろう。
 俺としてもここら辺がいい引き際か。

「そう言えば、名前は?」
「ほほほ。そうですね……私のことは見たまんま『ピエロ』とでもお呼びください。歩様」
「……やっぱり、俺のこと知ってるんじゃん」
「これくらいなら仕方がないと許可が出ましたので」

 許可、ねぇ……。
 電話を使ってる様子はないから、そういった【異能】持ちがどこかにいるのか。

 ご主人にピエロ。連絡したのがご主人でないのなら、プラスでもう1人。
 少数精鋭なのか、人数もいる精鋭集団なのか。

 世界が崩壊してから少ない日数で組織化できるほど優秀な集まりなのか。
 それとも初めからこうなることを知っていて組織を作っていたか。

 俺の敵となるのか、今後は不干渉を貫いてくるのか。

 警戒、しておこうにも情報が無さすぎる。
 できても目の前にいるピエロだけ。

 ……だからこそ、面白いとも言えるのだが。

「信じるかどうかは歩様次第ですが、追加で情報を1つ」
「聞くだけ聞いておこう」

 まるで俺の考えがまとまるのを待っていたかのようなタイミングで声をかけてくる。

「薫様は信用できるお方です。深読みをあまりなさらないよう、忠告させていただきます」
「……ただのピエロがよく話すな」
「ほほほ。ただのピエロだからですよ」

 そのセリフを最後に、気付けば姿はなくなっていた。
 初めからそこには誰もいなかったかのように、何もない。

「……普通、瞬きをしてる時に消えるだろうが」

 憧れるシチュなのに、空気を読まないピエロめ。

 『ほほほ。申し訳ありません』なんて言葉が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
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