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◾︎が◾︎◾︎◾︎◾︎
何かやばい
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【ゾンビ犬】の速さは【地雷型変異種】と同等かそれ以上にあり。
速いだけなら『人型』よりやり難いだけで、そこまで手こずる相手ではない。
何が厄介なのかといえば、未来を見ている薫の攻撃を避けている点だろう。
完全ではないが、少なくとも致命傷を貰ってはいない。
動物としての本能……直感が働いているのか、それとも別の要因があるのか。
──ヴゥゥゥゥッ
俺に向かってきた大型犬はすぐに飛びかかって来ることはなく。
警戒したような声を出しながら一定の距離から近づいてこない。
「……はぁ」
視界の端では薫が左前足を切り落としたのが見える。
足が万全の状態で保たれていた均衡だ。
すぐに倒して、こちらに来るだろう。
何故、こいつが襲いかかってこないのか分からないが、このまま睨めっこをしていても終わらない。
壊れかけの鉈はずっと持っていても仕方ないため、こいつで使い潰してもいいか。
呼吸を整え、上体を少し前に倒しながら走り出せば。
それを待っていたとばかりに【ゾンビ犬】は俺の右手側へと回り込み、飛びかかって来る。
体を捻りながら左手に持つ鉈を振るえば、噛み付こうと伸ばされた首を落とし。
頭のなくなった胴体は俺の横を通り、地面へ横たわっている。
「…………へ?」
思わず間抜けな声が出てしまったが、脳の理解も追いついていない。
薫の方を見てみれば、トンカチで頭を砕いているところだった。
未来が見えてる薫が手こずっているのに、俺は歯ごたえが何もない。
消化不良よりも、よく分からない気持ち悪さが胸の辺りにある。
「おにーさん。考えるのは後にして早くここを離れよう」
気付けば荷物をまとめた薫が側におり、手には俺の荷物が握られていた。
「何かやばいのが近づいてる」
「戦いたくないの?」
「……今はそんな気分になれない」
よく分からないが、薫のテンションが低い。
俺が荷物を受け取れば、さっさと先へ行こうとする薫の姿がある。
…………。
薫の言う『何かやばい』とやらに興味がある。
「おにーさんっ!」
後をついてこない俺に気づき、その意図まで分かったであろう薫は焦った声を出し、駆け寄って来る。
「お願いだから早く行こう!」
俺としてもいきなり戦うつもりはない。
どこかに隠れて様子を伺う。
それを伝えても不安そうなため、薫は別の建物の中に移動して一切姿を現さないという条件で納得してもらい。
俺はマンションのベランダから観察させてもらうとしよう。
速いだけなら『人型』よりやり難いだけで、そこまで手こずる相手ではない。
何が厄介なのかといえば、未来を見ている薫の攻撃を避けている点だろう。
完全ではないが、少なくとも致命傷を貰ってはいない。
動物としての本能……直感が働いているのか、それとも別の要因があるのか。
──ヴゥゥゥゥッ
俺に向かってきた大型犬はすぐに飛びかかって来ることはなく。
警戒したような声を出しながら一定の距離から近づいてこない。
「……はぁ」
視界の端では薫が左前足を切り落としたのが見える。
足が万全の状態で保たれていた均衡だ。
すぐに倒して、こちらに来るだろう。
何故、こいつが襲いかかってこないのか分からないが、このまま睨めっこをしていても終わらない。
壊れかけの鉈はずっと持っていても仕方ないため、こいつで使い潰してもいいか。
呼吸を整え、上体を少し前に倒しながら走り出せば。
それを待っていたとばかりに【ゾンビ犬】は俺の右手側へと回り込み、飛びかかって来る。
体を捻りながら左手に持つ鉈を振るえば、噛み付こうと伸ばされた首を落とし。
頭のなくなった胴体は俺の横を通り、地面へ横たわっている。
「…………へ?」
思わず間抜けな声が出てしまったが、脳の理解も追いついていない。
薫の方を見てみれば、トンカチで頭を砕いているところだった。
未来が見えてる薫が手こずっているのに、俺は歯ごたえが何もない。
消化不良よりも、よく分からない気持ち悪さが胸の辺りにある。
「おにーさん。考えるのは後にして早くここを離れよう」
気付けば荷物をまとめた薫が側におり、手には俺の荷物が握られていた。
「何かやばいのが近づいてる」
「戦いたくないの?」
「……今はそんな気分になれない」
よく分からないが、薫のテンションが低い。
俺が荷物を受け取れば、さっさと先へ行こうとする薫の姿がある。
…………。
薫の言う『何かやばい』とやらに興味がある。
「おにーさんっ!」
後をついてこない俺に気づき、その意図まで分かったであろう薫は焦った声を出し、駆け寄って来る。
「お願いだから早く行こう!」
俺としてもいきなり戦うつもりはない。
どこかに隠れて様子を伺う。
それを伝えても不安そうなため、薫は別の建物の中に移動して一切姿を現さないという条件で納得してもらい。
俺はマンションのベランダから観察させてもらうとしよう。
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