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◾︎が◾︎◾︎◾︎◾︎
少女2
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私は彼に関心を持ってしまったが、これまで築き上げてきたものを壊すわけにはいかなかった。
それが私の全てである事に、変わりはないのだから。
あれ以降、暇さえあれば彼につっかかっていた。
そしてより興味を、より憎悪を膨らませていった。
なんだかんだで返事をしてくれる彼は、割り切れていない気がする。
何を、と聞かれても困るのだが。
結局、3年生の間も成績で彼に勝つことは叶わなかった。
誰もが知る大学に合格したと話した時、皆は喜び、褒めてくれたのだが。
彼は『そう』とただ一言だけであった。
彼も大学に合格したとの話は聞いてるが、どこなのかはついぞ分からなかった。
休みは有意義に過ごせていたと思うが、どこか物足りない日々を過ごしていた。
きっと、彼とはもう関わる事などないのだろう。
……こうして振り返ってみれば、中学生活や高校1年生、2年生の5年間よりも。
彼と出会ってからの高校3年生が1番楽しかった気がする。
残ったこの気持ちをどう処理するかに困るが、これからまた、順風満帆な生活になるのだと。
──そう思っていた矢先、世界が終わった。
人が人を襲っている。
何が起こっているのか理解できなかった。
突っ立っている私に目をつけたのか、こちらに向かってくるのが見えるけど、体が動こうとしない。
「──っ!」
服の上から二の腕を噛まれ、痛みで動けるようになった体で突き飛ばす。
運良く噛みちぎられることはなかったけど。
歯が肉に刺さったのか、血が服に滲んでいる。
今いる場所はコンビニよりも学校の方が近い。
今日は新2年、3年生の登校日だから学校に人がいる。
保健室で手当てをしてもらおう。
学校に着くまで、誰とも出会うことはなかった。
あの光景を見た後にこの静けさは、とても不気味に思えた。
靴を脱ぐ余裕がないので、申し訳ないが土足のまま廊下を歩いて向かおうと思っていたが、吐き気が込み上げてくる。
女子トイレに駆け込み、胃がひっくり返るような感覚に襲われながらも吐き出せば。
口の中に鉄の味が広がる。
便器の中が真っ赤になっており、それを脳が理解する事を拒んでいるような感覚に陥った。
汚いことも気にせず床に座り込み、しきりに身体を預ければ。
突然目眩に襲われ、呼吸が荒くなる。
心臓の音が煩いくらいよく聞こえ、死の足音が背後から聞こえてくるような気さえした。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
遠くから騒がしい声が聞こえる気がする。
酷かった吐き気や目眩はなく、むしろ体調は今までで1番いいかもしれない。
血塗れで不快なはずなのに、そんな事はなく。
むしろ心地いいと感じていた。
けど、誰かに見られたらとても心配されるので腕や顔についた血は落とさなければ。
鏡で自身の顔を見て、白目の部分が薄い紺色になっていたのを確認したと同時に。
彼のことが鮮明に思い返され、強く憎悪を抱いた。
やっぱり、許せないだろう。
なんとなくであるが、彼はまだ生きている気がする。
見つけ出し、私自らの手で──殺す。
それが私の全てである事に、変わりはないのだから。
あれ以降、暇さえあれば彼につっかかっていた。
そしてより興味を、より憎悪を膨らませていった。
なんだかんだで返事をしてくれる彼は、割り切れていない気がする。
何を、と聞かれても困るのだが。
結局、3年生の間も成績で彼に勝つことは叶わなかった。
誰もが知る大学に合格したと話した時、皆は喜び、褒めてくれたのだが。
彼は『そう』とただ一言だけであった。
彼も大学に合格したとの話は聞いてるが、どこなのかはついぞ分からなかった。
休みは有意義に過ごせていたと思うが、どこか物足りない日々を過ごしていた。
きっと、彼とはもう関わる事などないのだろう。
……こうして振り返ってみれば、中学生活や高校1年生、2年生の5年間よりも。
彼と出会ってからの高校3年生が1番楽しかった気がする。
残ったこの気持ちをどう処理するかに困るが、これからまた、順風満帆な生活になるのだと。
──そう思っていた矢先、世界が終わった。
人が人を襲っている。
何が起こっているのか理解できなかった。
突っ立っている私に目をつけたのか、こちらに向かってくるのが見えるけど、体が動こうとしない。
「──っ!」
服の上から二の腕を噛まれ、痛みで動けるようになった体で突き飛ばす。
運良く噛みちぎられることはなかったけど。
歯が肉に刺さったのか、血が服に滲んでいる。
今いる場所はコンビニよりも学校の方が近い。
今日は新2年、3年生の登校日だから学校に人がいる。
保健室で手当てをしてもらおう。
学校に着くまで、誰とも出会うことはなかった。
あの光景を見た後にこの静けさは、とても不気味に思えた。
靴を脱ぐ余裕がないので、申し訳ないが土足のまま廊下を歩いて向かおうと思っていたが、吐き気が込み上げてくる。
女子トイレに駆け込み、胃がひっくり返るような感覚に襲われながらも吐き出せば。
口の中に鉄の味が広がる。
便器の中が真っ赤になっており、それを脳が理解する事を拒んでいるような感覚に陥った。
汚いことも気にせず床に座り込み、しきりに身体を預ければ。
突然目眩に襲われ、呼吸が荒くなる。
心臓の音が煩いくらいよく聞こえ、死の足音が背後から聞こえてくるような気さえした。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
遠くから騒がしい声が聞こえる気がする。
酷かった吐き気や目眩はなく、むしろ体調は今までで1番いいかもしれない。
血塗れで不快なはずなのに、そんな事はなく。
むしろ心地いいと感じていた。
けど、誰かに見られたらとても心配されるので腕や顔についた血は落とさなければ。
鏡で自身の顔を見て、白目の部分が薄い紺色になっていたのを確認したと同時に。
彼のことが鮮明に思い返され、強く憎悪を抱いた。
やっぱり、許せないだろう。
なんとなくであるが、彼はまだ生きている気がする。
見つけ出し、私自らの手で──殺す。
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