望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

意味なんて無い

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 もし、複数持ちが本当ならば。
 薫が持つ【異能】を当てることはほぼ不可能だな。

 幾つあるのか分からないうえ、もしかしたら特殊なのがあるかもしれない。

 複数も2つなのか3つなのか。
 それ以上にあるのか。

 組み合わせもあるし、ステータスがあるわけでもないから自分が気付いていない【異能】があるかもしれない。



 こうしてゆっくり考えている間も薫は【変異種】の攻撃を躱し、切りつけている。

 だが、どれも致命傷になっていない。

 何度か脇腹を深く切りつけていたが、10数秒も経てば傷は塞がっていた。

 効いているのかいないのか、それすらも分からず。
 いつまで今の状態を薫は維持できるのだろうか。

 少しだけ息が上がっているようだし、無理に攻めてカウンターを貰いそうな気もする。

 …………。
 何か違和感が。

 身の回りについてじゃなく、俺自身に。

 何故、こうして戦いを見てるだけなのだろうか。

 確かに死んだら楽しめないのは分かってるのだけど、こうして見てるだけで生きているのも違うだろう。

 元々望んでいたのは、薫が今いる場所では?

 ノーダメ、その他色々と縛りがある中。
 どれだけ倒せるか。
 死ぬか生きるかの瀬戸際を楽しみたかったはずだ。

 だから初めて会った【変異種】も、なんだかんだ考えていたが……結局、戦うときは博打みたいになった。

 ニュースや実際に目の前で起きたことを見て。
 望んでいた世界になったと喜んでいたのに。



 ──自らつまらなくするなど、愚かな事だ。



 これまでの世の中は、『出来ても普通はやらない』といった感じだった。

 だが、今の世の中はそう思ったら終わりだ。
 でなきゃマンションに入ったり、【ゾンビ】になってない人を殺したりなんてしない。

 今回だって、あそこまで大人しくしなくても良かったではないか。

 それに今だって、自分の獲物をわざわざ譲っている。

 なんて馬鹿なことをしていたんだろうな。

 こんなことをする意味なんて無かったのに。
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