望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

予感

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 動き自体は人とそんな変わらないと思うのだが、戦うとなった時は2本の触手が厄介だな。

 一応は【変異種】だと思うのだが、その中でも更に【異質】な存在だろう。

 やっぱり、負の感情云々が関係あるのかもしれない。
 見事なまでに俺しか狙ってないように思える。

 いや、俺しか狙ってないんだけど。

 軽く左右に移動すれば、合わせて体の向きを変えてくるから、確実だろう。

 気付いた東郷が足止めしようとしてたが、触手に振り払われて終わっていた。
 ヒビが入ったと思うけど、殺されてはいないようだし、【感染】もしてないように見える。

 俺を庇う義理なんてないと思うのだが、今の行動にはどういった意味があるのだろうか。

 ……ただ、今のでパワーもそこそこある事が分かる。
 かすり傷1つ負ったらいけない世界なのだから、攻撃を食らったら終わりなのは今更だが。

 東郷がその辺無事なのは手加減してたからだろう。

 そして【変異種】は触手を壁に突き立てながら、登って来ている。
 進み具合から5分と経たず、ここへ辿り着くだろう。

 となると、ここへ辿り着く前に建物の中へ移動し、探索を続けるための準備を進めるか。

 俺を見失ったことで無差別に暴れる可能性もあるが、そうしてくれるとこちらは場所の把握がしやすい。

「おにーさんがあれに勝てるのは簡単に想像できるから、私がもらってもいい?」

 どのタイミングにするかと考えていると、物凄くワクワクとした感じの声が聞こえてくる。

 目を向ければ薫はすでにナイフを両手に持ち、戦う準備を終えていた。

「勝てるのか?」
「全力を出しても6割かな? おにーさんと2人でやったら10割だけど」
「でも1人でやりたいんだろ?」
「うんっ」

 俺はそれでも構わないのだが、はたしてあちらさんはどう思うのだろうか。

 完全に俺だけを対象にした意識になってるのなら、薫が望むような戦いはできないだろう。

 ただ、薫は俺の側に引っ付いていたため。
 可能性としてだが、同じく負の感情を抱かれていたと思う。

 もしそうならば、楽しめるはず。

「できるだけ手出ししないようにするけど、反撃ぐらいはするから」
「大丈夫。私を狙うよう頑張るから」

 すでに薫の意識は【変異種】と戦うことにしか向いておらず、なにを言っても無駄な状態となっている。

 本当は押し付けて逃げたいところなのだが、コイツ・・・はまだ本番じゃない・・・・

 後にまだ、何かある気がする。
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