望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

利用され、利用する

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 もともとここら一帯の【ゾンビ】は出入り口に集まって減っていたし、それを処理している時にも集まってきた数体を倒した。

 だからほぼいない。

 ほぼいないが、遠くからきた【ゾンビ】がいないとも限らないし、家屋の中にいるかもしれない。

 油断したら死ぬのは変わらないんだよな。

 それよりも、薫の【異能】が未だに分からない。

 身体能力系にしては、見せて貰った東郷のような感じでもない。

 かといって戦えないわけでもなく。
 その動きに危ない感じはなく、行動を起こすにあたって最適解を進んでいる感じだ。

「……薫の【異能】はなんだ?」
「んふふっ。秘密」
「だよね」

 道を曲がった先に【ゾンビ】が1体。
 その首を薫が綺麗に刎ねる。

 聞いたら答えてくれるなんて期待はしていなかった。
 嘘の【異能】でも考察の1つになると思ってたんだが。

 今の動きを見ても、【未来視】なら可能だろうなという事ぐらいだ。

 完全ではなくても、俺より自由に使えそうだ。
 ……【異能】が1日2日で使えるようになるならね。

「ここの家に少し寄る」
「知り合いの家?」
「全然」

 ホームセンターを中心に円を描くよう進んでいた。
 半分ほど軽く見回しながら進んでいたが、ここらで昼食の休憩をいれてもいいだろう。

 若干慣れた動きで塀に登って2階のベランダにたどり着き。
 ガラスを割って鍵を開け、家の中へと入っていく。

 俺の後に続いて薫も登ってきたようだが、動きに無駄はなさそうだ。

 ……もしかしたら複数の【異能】を持っている可能性を考えた方がいいか。



 考える事をやめられないでいるが、家の中に入った後も気を抜かないでいる。

 厄介なのは【ゾンビ】よりも生きている人だからな。

 他の部屋は無視し、キッチンがあるリビングへ向かう。

 わざわざ2階から1階に降りるのなら、もとより1階から入ればいいのだが。
 そこから入ってくる可能性が少しでもあるのなら、無くしておきたい。

 帰るときは用も済んだので玄関から出ても構わないのだが。

「この家にはどんな用が?」
「食べ物を貰いに」

 リビングに行っても人がいない。

「薫は昼飯食べた?」
「食べてないよ」

 お湯を沸かし、カップ麺を2つ作る。

 いつもは汁まで飲んでいるのだが、そうするとこの後がきつくなるので今回はやめておく。

 食後に少し休憩を挟み。
 棚をあされば携帯食品が出てきたので、それらとカップ麺をリュックにしまい込む。

「あいつら、家から取ってないんだな」
「泥棒みたいなのが嫌だったんじゃない?」

 善人ぶってるのが非常に気持ち悪い。
 俺から話を振っておいてなんだが、やめておけば良かった。

 まだ不良たちの方が生き残れる。
 ……ああ、俺が殺したんだっけ。

 全国のどこかにまだ生きてるのがいるよ。
 たぶん。

「もう、【変異種】きてる頃かな」
「そうなの?」
「時間的にそんな感じ。それと【変異種】がくるのは俺らが見て回ったのと反対側」
「その【変異種】とやらが近づいているのに、警戒がそれほど強くなかったのはそういう事なのね」

 【変異種】が来る方を見て回って出会っちゃった。
 なんてことはシャレにならん。



 もとより俺を利用するつもりだったと思うし、利用されても文句ないよね。



 戻っても少しだけ観察させてもらおう。
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