望む世界

不思議ちゃん

文字の大きさ
上 下
24 / 91
終わらない始まり

利用され、利用する

しおりを挟む
 もともとここら一帯の【ゾンビ】は出入り口に集まって減っていたし、それを処理している時にも集まってきた数体を倒した。

 だからほぼいない。

 ほぼいないが、遠くからきた【ゾンビ】がいないとも限らないし、家屋の中にいるかもしれない。

 油断したら死ぬのは変わらないんだよな。

 それよりも、薫の【異能】が未だに分からない。

 身体能力系にしては、見せて貰った東郷のような感じでもない。

 かといって戦えないわけでもなく。
 その動きに危ない感じはなく、行動を起こすにあたって最適解を進んでいる感じだ。

「……薫の【異能】はなんだ?」
「んふふっ。秘密」
「だよね」

 道を曲がった先に【ゾンビ】が1体。
 その首を薫が綺麗に刎ねる。

 聞いたら答えてくれるなんて期待はしていなかった。
 嘘の【異能】でも考察の1つになると思ってたんだが。

 今の動きを見ても、【未来視】なら可能だろうなという事ぐらいだ。

 完全ではなくても、俺より自由に使えそうだ。
 ……【異能】が1日2日で使えるようになるならね。

「ここの家に少し寄る」
「知り合いの家?」
「全然」

 ホームセンターを中心に円を描くよう進んでいた。
 半分ほど軽く見回しながら進んでいたが、ここらで昼食の休憩をいれてもいいだろう。

 若干慣れた動きで塀に登って2階のベランダにたどり着き。
 ガラスを割って鍵を開け、家の中へと入っていく。

 俺の後に続いて薫も登ってきたようだが、動きに無駄はなさそうだ。

 ……もしかしたら複数の【異能】を持っている可能性を考えた方がいいか。



 考える事をやめられないでいるが、家の中に入った後も気を抜かないでいる。

 厄介なのは【ゾンビ】よりも生きている人だからな。

 他の部屋は無視し、キッチンがあるリビングへ向かう。

 わざわざ2階から1階に降りるのなら、もとより1階から入ればいいのだが。
 そこから入ってくる可能性が少しでもあるのなら、無くしておきたい。

 帰るときは用も済んだので玄関から出ても構わないのだが。

「この家にはどんな用が?」
「食べ物を貰いに」

 リビングに行っても人がいない。

「薫は昼飯食べた?」
「食べてないよ」

 お湯を沸かし、カップ麺を2つ作る。

 いつもは汁まで飲んでいるのだが、そうするとこの後がきつくなるので今回はやめておく。

 食後に少し休憩を挟み。
 棚をあされば携帯食品が出てきたので、それらとカップ麺をリュックにしまい込む。

「あいつら、家から取ってないんだな」
「泥棒みたいなのが嫌だったんじゃない?」

 善人ぶってるのが非常に気持ち悪い。
 俺から話を振っておいてなんだが、やめておけば良かった。

 まだ不良たちの方が生き残れる。
 ……ああ、俺が殺したんだっけ。

 全国のどこかにまだ生きてるのがいるよ。
 たぶん。

「もう、【変異種】きてる頃かな」
「そうなの?」
「時間的にそんな感じ。それと【変異種】がくるのは俺らが見て回ったのと反対側」
「その【変異種】とやらが近づいているのに、警戒がそれほど強くなかったのはそういう事なのね」

 【変異種】が来る方を見て回って出会っちゃった。
 なんてことはシャレにならん。



 もとより俺を利用するつもりだったと思うし、利用されても文句ないよね。



 戻っても少しだけ観察させてもらおう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

怪異相談所の店主は今日も語る

くろぬか
ホラー
怪異相談所 ”語り部 結”。 人に言えない“怪異”のお悩み解決します、まずはご相談を。相談コース3000円~。除霊、その他オプションは状況によりお値段が変動いたします。 なんて、やけにポップな看板を掲げたおかしなお店。 普通の人なら入らない、入らない筈なのだが。 何故か今日もお客様は訪れる。 まるで導かれるかの様にして。 ※※※ この物語はフィクションです。 実際に語られている”怖い話”なども登場致します。 その中には所謂”聞いたら出る”系のお話もございますが、そういうお話はかなり省略し内容までは描かない様にしております。 とはいえさわり程度は書いてありますので、自己責任でお読みいただければと思います。

虫喰いの愛

ちづ
ホラー
邪気を食べる祟り神と、式神の器にされた娘の話。 ダーク和風ファンタジー異類婚姻譚です。 三万字程度の短編伝奇ホラーなのでよろしければお付き合いください。 テーマは蛆虫とメンヘラ(?) 蛆虫などの虫の表現、若干の残酷描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 『まぼろしの恋』終章で登場する蝕神さまの話です。『まぼろしの恋』を読まなくても全然問題ないです。 また、pixivスキイチ企画『神々の伴侶』https://dic.pixiv.net/a/%E7%A5%9E%E3%80%85%E3%81%AE%E4%BC%B4%E4%BE%B6(募集終了済み)の十月の神様の設定を使わせて頂いております。 表紙はかんたん表紙メーカーさんより使わせて頂いております。

クラウンクレイド零和

茶竹抹茶竹
SF
「私達はそれを魔法と呼んだ」 学校を襲うゾンビの群れ! 突然のゾンビパンデミックに逃げ惑う女子高生の祷は、生き残りをかけてゾンビと戦う事を決意する。そんな彼女の手にはあるのは、異能の力だった。 先の読めない展開と張り巡らされた伏線、全ての謎をあなたは解けるか。異能力xゾンビ小説が此処に開幕!。 ※死、流血等のグロテスクな描写・過激ではない性的描写・肉体の腐敗等の嫌悪感を抱かせる描写・等を含みます。

【完結済】僕の部屋

野花マリオ
ホラー
僕の部屋で起きるギャグホラー小説。 1話から8話まで移植作品ですが9話以降からはオリジナルリメイクホラー作話として展開されます。

「こんにちは」は夜だと思う

あっちゅまん
ホラー
主人公のレイは、突然の魔界の現出に巻き込まれ、様々な怪物たちと死闘を繰り広げることとなる。友人のフーリンと一緒にさまよう彼らの運命とは・・・!? 全世界に衝撃を与えたハロウィン・ナイトの惨劇『10・31事件』の全貌が明らかになる!!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける

気ままに
ホラー
 家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!  しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!  もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!  てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。  ネタバレ注意!↓↓  黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。  そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。  そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……  "P-tB"  人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……  何故ゾンビが生まれたか……  何故知性あるゾンビが居るのか……  そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……

処理中です...