望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

誘いの裏

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 あまりノンビリしている余裕はない。

 だからと言って声を出し、注意を引こうにも他の【ゾンビ】が寄ってくる。

 面倒だけど俺から近寄って行かなきゃいけないか。

 どうやって行くのが楽で最短なのか。
 状況の変化も合わせて考えながら目の前にいる【ゾンビ】を倒す。

 まだ出入り口にいるが、俺の周りにいたのはさっきので最後。
 他にもいたが、声を出している彼の元へ移動している。

 小走りで近づき、背後から頭にバールを振り下ろす。
 それを何度か繰り返して向かえば、半分は減らせた。

 残りの【ゾンビ】も俺に意識を向けるより先に倒していく。

 下手したら刃が欠けるかもしれないからやりたくなかったが、鉈を使って首を狙い、胴体とサヨナラさせたりもした。

 バールは刺して抜く動作が必要だが、これは振るうだけでいい。
 狙う場所が動くため厳しいが、やればできるものだ。

 それにどう振るえば良い所に当たるのか、なんとなく分かっていた。

 多少の消耗はあるけど、許容範囲内だろう。

 最後にずっと得物が刺さったままでいる【ゾンビ】の首を刎ね、終わりである。

「…………た、助かった……」

 周りの【ゾンビ】が倒され、ホッと安心しているけど……まだ残ってるから。

 やっぱり助けなくてもよかったかもしれない。

 全部倒し終えてから少し経ち、他の人たちも集まってくる。
 薫はこちらに見向きもせず倒し続けているが。

「……まさか、助けてくれるとは思わなかった」

 開口一番がお礼じゃないのね。

 別にそれを求めてたわけじゃないけど、今の一言でこいつらは『その他』の分類に分ける。

 また危険な場面になったら、見捨てる以外の選択肢はない。

「お前が死のうがどうでもよかった。ただ、死んだら鬱陶しい奴がいたから、その面倒を無くしただけ。……お前ら、邪魔だから建物の中に戻ってていいよ? 後は俺と薫で十分」
「…………っ」

 何か言い返そうとしていたが、【ゾンビ】を倒すのに躊躇いがあり。
 邪魔になっていると気づいたのだろう。

 結局、何か言ってくることはなく。
 4人でカバーしながら戻っていった。

「んふふっ。おにーさんカッコいー」
「はいはい」

 いつの間にか薫は俺のそばに立っており。
 ニコニコと笑みを向けてくる。

「探索してる割には使えないんだけど」
「本当に探索してるだけだからねー。見つけたら倒さないでやり過ごしてるから」
「何故?」
「襲ってくるといっても、見た目が人だからね。もしかしたら元に戻るかもって思ってるらしいよ」
「おめでたい連中だ」

 まだ生き残っていられるのは【異能】のおかげだろうか。

 これを乗り切ったら明日、出ていく。

 さすがに、今のを聞いて残るつもりはない。

 東郷が欲しがっていたのは、躊躇いなく【ゾンビ】を倒せる人だったのか。

 あいつ自身がどうなのかは分からないが、躊躇いなくやれる薫は相当貴重だろう。

 俺を誘った理由も思慮深いとか言っていたが、本当の理由は薫と同じように躊躇いなく【ゾンビ】を倒せるから。

 皆のまとめ役をやっているだけあり、信頼がある。
 逆に、来たばかりの俺は腫れ物扱いだ。

 このまま残れば、俺はあいつにとっていい駒になっただろう。



 面倒なとこに来ちゃったな……。

 出入り口にいる【ゾンビ】はまだ4割ほど残っている。

 さっさと片付けたら貰うものもらって出て行きたいが、新しい【変異種】の存在も気になる。

 情報は少しでも多いほうがいいし、見捨てられる駒がいる今の状況はそこそこいいだろう。

 だが、今回ので使えないことが分かり。
 【変異種】が来た時に戦えるのか微妙な所だ。

「おにーさん、悪い笑顔だね」
「さっさと残り、倒すよ」
「はーい」

 まあ、どんな奴でも使い道はある。
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