望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

あったはずの未来

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「うまく言葉にできないが、さっき言った通り出入り口の【ゾンビ】を放っておくと、みんな死ぬ」

 見えた映像は俺が死ぬところで終わっていたため、全員死ぬのか分からない。

 だが、問題なのは俺が死ぬということだ。



 午前中に薫と2人である程度減らし、昼食を食べている時。
 昨日話に聞いた3メートルの【ゾンビ】が出入り口を壊して入ってきた。

 どうやら少しは知性があるらしい。
 他の【ゾンビ】たちの邪魔となる障害物を壊していった。

 目も見えるらしく、俺らを見つけると【ゾンビ】や障害物に使っていた物を投げてきた。

 その1つに避けきれず当たり、足の骨が折れて動けないところを踏み潰された。



 戦える奴らで出入り口の【ゾンビ】を倒し、3メートルの【ゾンビ】──【変異種】を倒してもらう。

 そうすれば、少なくとも俺が死ぬことはないはずだ。



「未来を見たのか?」
「いや、そんな予感がするだけだ」

 否定したが、あれは訪れたであろう未来であるはずだ。

 けどそのまま認めたりはせず、予感。といった形で落ち着かせる。

「それを俺らに信じろと?」
「俺がここまで来れたのは、この予感に従ったからだ」

 これだけじゃ、微妙だろう。
 ……【変異種】について話すしかない、か。

「もう1つ、理由がある」

 東郷が何か言おうとするよりも先に口を開く。
 もしかしたら大丈夫だったかもしれないが、出し惜しみして死んだら意味がない。



 ここにくる途中、動かずに突っ立っている【ゾンビ】を見つけたこと。

 ビー玉を使い音を出したら、そこへ向かって走ったこと。

 コンクリートの地面がえぐれたこと。

 【変異種】と呼んでいる事を話し、話に聞いた3メートルの【ゾンビ】もその可能性があること。



 最後のは推測だということも含めてすべて話した。

 今さらだが、あの【変異種】は分かりやすいたとえにするなら、【罠】なのではないだろうか。

 耳がいいのであれば、すでにバレていたはずだ。

 それでも動かなかったのは、【範囲内で音を立てた人を殺す】といった制約みたいなものがあったのだろう。

 【力】と【速さ】を得るため、【行動】が制限された。

 まるでゲームみたいだが、推測するための材料がアレしかないため、断定できない。



「きっと、3メートルの【ゾンビ】が来る。あの時感じた予感よりもずっと強い」
「……皆はどう思う?」
「そんなもの信じられないな! 時間を無駄にしたぜ!」
「確かに、はいそうですか。とすぐに頷けない」
「ほら!」
「でも、この予感が【異能】だとすれば。無視するわけにもいかない」

 坊主頭以外は同じ意見らしく、頷いている。

「なら今日は探索を取りやめ、出入り口の【ゾンビ】を掃討する」

 これで俺の負担が軽くなったわけだが……。

 坊主頭がこっちを睨んでる。
 面倒なことにならなければいいが。
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