望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

やってくる『──』

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「明日何やるか、話しておきたいんだけど」
「あ、ああ。大丈夫だ」

 この状況で声をかけられると思ってなかったのだろう。

 少し驚いていた様子だが、話は聞いてくれるようだ。
 聞いてくれなかったらすぐにここを出て行こうと思ってたが。

「1階の出入り口に【ゾンビ】が集まってるだろ? あれ、減らしておく」
「できるのか?」

 また坊主頭が突っかかってくるが、相手にしない。
 ああいうのは反応したら負けだ。

 ただただ、面倒なことになるだけ。

「減らしてくれるのは嬉しいが、大丈夫か?」
「出来ないことをやる気はない」
「なら、頼んだ」
「私は明日も一緒についていくねー」

 何が楽しいのか。
 変わらず、ニコニコと笑みを浮かべている。

 何を考えて動いているのか。
 それを知るまでは休まる時がないかもしれない。



 あの場は解散し、俺は東郷と夕食をとっていた。

 日付が近いものから使っているのだろう。
 肉料理が多いと思う。

「ここはどうだ?」
「組織として回ってると思うし、いいところなんじゃない?」
「やっぱり、残らないか?」
「それは無理」
「そうか」

 元からそんな期待してないのだろう。
 あっさりとしていた。

 ここの何が悪いってわけじゃない。

 何度でも言うように、集団行動が無理なのだ。

「俺はどこで寝ればいい?」
「寝具が置いてあるフロアがある。それの空いているところならどこでも大丈夫だ」
「夜の見張りは?」
「明かりがついてないから真っ暗で見えない。その代わりに罠を仕掛けている」

 【ゾンビ】は夜でも動いている。
 明かりを設置すればいいと思うのだが、そのせいで厄介なのが寄ってくると考えたらどちらともいえないな。

 明かりによって集まってくるとしたら、【変異種】が可能性としてあり得そうな気がするが。



 仕掛ける罠はどんなものなのだろう。

 足止めだけなら最悪だが、この建物内だけ響く警報音なら最高だ。

 外まで響く警報音だと、余計に集まってくる。
 夜は昼間よりも音が遠くへ届くのに加え、周りに音がない。

 一番最悪な奴だ。

 明日の朝まで無事なことを祈ろう。





 ベッドで横になることはなく。
 侵入した部屋で寝た時と同じようにバールを持ち、ソファーで毛布にくるまって寝た。

 まだ2回目だが、人は慣れる生き物だ。
 それなりに疲れは取れたと思うが、遠くないうちにどこかで熟睡しないと。

 取れたと思っていても騙しているだけだから、どこかでボロがでる。
 それが戦っている時なら、致命的だ。

 目が覚め。
 体を起こすために建物内を散歩していたのだが、そこで今日の探索へ出ようとする8人と出会った。

 側には東郷もおり、ミーティングが終わったところに出くわしたのだろう。

 露骨に嫌な顔をしている坊主頭がいるけど、他の人たちは昨日ほど警戒をしていなかった。

 注意している感じか。
 何を見てそう判断したのか分からないが、気が立たないで住むのは楽だ。



「今日は探索をやめて出入り口の【ゾンビ】を処理するべきだ」



 気がつけばそのような事を口にしていた。

 眼に映る景色を見ているようで見ていない。
 脳に直接、違う景色が描かれていた。

「午前中に処理を終えなければ、みんな死ぬ」
「何をバカな事──おぉっと?」

 突っかかってこようとした坊主頭を退け、東郷が前に出てくる。

「詳しく聞かせてもらおうか。皆は待機。一緒に話を聞いて、考えを聞かせてくれ」
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