望む世界

不思議ちゃん

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終わらない始まり

話し合い

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「どうやってここにきた?」

 集まってきた6人のうち1人。
 大学生くらいの男性が声をかけてきた。

「君、ここのリーダー?」
「質問をしてるのはこっちだ」
「その質問に答えて、またリーダーに話すのは二度手間なんだけど」

 呆れたようにため息を着けば、分かりやすくイラついている。
 ここで短絡的に殴りかかってこないだけマシではあるか。

 他は気の弱そうなおばさん、20代前半の女性、おじさん、おじさん、おじさん。
 20代、30代の男性が見当たらない。

 ここで見張りがいるってことは、そこそこ統制が取れていそうだ。
 他にもいくつか仕事があり、人も多いのだろう。

 俺がリーダー以外に話さないと理解したのか、声をかけてこなくなった。
 当然、警戒されているようでジッと見られているが。

 その間、周りを見回して観察していたのだが……。
 駐車場の屋上からホームセンターの屋上へ移動できないことに気づいた。

 8階でなら繋がっていただろう。
 屋上にあるのは下に行ける階段があると思う小さな建物だけだ。

 そこを見てると誰かが出てきた。

 警戒して俺を見ていた8人も、やってくる人に気づけばホッとし、雰囲気が柔らかくなった気がする。

「お前さんがそうか?」
「あんたがリーダー?」

 やってきたのは30代の無精髭を生やしたおっさんだった。
 鋭い目で俺を観察しているし、俺が何かしようとしても対応できるようにしている。

 引き締まった筋肉から元軍人だと思う。
 そうでなくても格闘技系のプロだな。

 その後ろに前髪が長すぎて目が隠れている男性がいたが、一言も話さないのでどういった役割か推測しかできない。

「一応、皆をまとめてる立ち位置だ。ここには何の用だ?」
「服を貰いに。昨日から着たままだから」
「……そうか。付いて来い。皆は持ち場に戻ってくれ」

 そう言われて散らばっていくなか、大学生くらいの男性は一度俺を睨んできたが、何も言わずに走っていった。

 後に続いて歩いていけば階段を使って下に降り、通路を渡ってようやく向こう側へと渡れた。

 無防備に背を晒しているが、襲われても対処できるという自信のあらわれなのだろうか。





 そして今、家具コーナーにあるソファーに腰を下ろしている。
 対面には案内した2人に加え、髪の長い女性が加わっていた。

 普通ならリーダーであるおっさんが真ん中に座ると思うのだが、実際に座っているのは女性だ。

 参謀担当、とかだろうか。

「俺は東郷って言う。さっきも言ったが皆をまとめる立ち位置にいる。こっちが篠塚。奥のが奥寺だ。参謀っていうか、アドバイザーみたいな事をやってもらっている」
「そうか。俺のことは『探索』って呼んでくれ。ここに来た用は服が目的だ」
「一応、ここは俺たちが拠点にしている。確かに沢山あるが、ハイそうですかと渡すわけにはいかない」
「……何が欲しい?」
「情報だ。いくつか聞くことに答えてもらえればいい」
「俺が知っていることなら、答えよう」

 俺に関すること以外。
 【ゾンビ】に関してのことなら隠さず話してもいいと思っていた。

 それでも切り札としていくつか伏せさせて貰うが。

「まず聞きたいんだが、どうやってここまで来た?」
「歩いて」
「【ゾンビ】がウロついている中を?」

 話すのは必要最低限にし、イエスノーで答えられるのは首を縦か横に振って示す。

 何故か、俺は彼らを警戒していた。
 確かにこの世の中で初対面の人に警戒するのは分かるが、何かを隠している。

 この世の中を生きて行く上で、重要なピースになるようなものを。

 そして彼らはそれを知っており、俺は知らない。

 これは話し合う上で大きく俺が損する可能性がある。
 何を隠してるのか、それは分からないが。

「話し続けるのはいいんだが、3人座って狭くないか? イスを持ってくればいい」
「このままで大丈夫だ。時間は金にも勝る」
「そうか」

 それほど大きくないソファーに3人が座っているため、見ていて狭苦しい。

 だから勧めたのだが、離れるのが嫌かのような断られ方をしたように感じる。

 そもそも俺が座っているソファーの方が大きいのだ。
 なぜ、大きいほうではないソファーに座ったのだろう。

「【ゾンビ】がどうして出て来たのか、知ってることは?」
「何もない」
「だよな。俺らも分からない」

 まだ2つの質問にしか答えていないが、奥寺という男性から何か嫌なものを感じる。

 それはずっとじゃなく、質問に対して答えている時だけだが。
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