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二十一輪目
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「お待たせしてすみません、高瀬さん」
「私も来たばかりだよ!」
十二時に駅前待ち合わせと伝え、今はその十五分前なのだが。
本当に着いたばかりなのか少し疑ってしまう。
自分が待つ分には構わないが、人を待たせるのは少し気がひけるため。
次からはあえて遅めの時間を告げてみようか。
「買い物の前にお昼行きましょう。話したい事もあるので」
「う、うん」
店の場所を調べ、何処に行きたいか伝えている。
特に迷う事なく着き、今回は事前に電話して行くことを告げているためそれほど罪悪感を抱く事なく店の中へ。
前から気になっていた店で、フワトロの卵に包まれたオムライスが絶品らしい。
かかっているソースも拘り抜いたデミグラスソースなので期待が高まるばかりである。
「桜くん。その……話、っていうのは」
「あ、すみません……食事に夢中になって」
「ううん。美味しそうに食べてるところ邪魔してごめんね。何の話か気になっちゃって」
頼んだオムライスは想像していた以上に美味しく、食事に夢中となってしまい。
高瀬さんが言ってくれなければ話のことなんかすっかり忘れていた。
紙ナプキンで口元を拭い、水を飲んで口の中をサッパリさせ、さあ話そうってなった時。
ふと恥ずかしさが込み上げてきた。
結婚したいほど推している二人のうちの片方と同棲し、もう片方にその報告をするという。
本当に現実なのかと思うほどの現状に笑みが漏れたところで、対面に座る高瀬さんの姿が見え。
一人の世界に入って高瀬さんを置いてけぼりにしてしまったことに気がつく。
「その、話したい事といいますか、伝えたい事といいますか」
「うん」
「今更ながらの報告になってしまうんですけど、いま夏月さんとお付き合いをさせていただいてまして」
「ぇ…………」
「少し前から同棲も……あの、高瀬さん? 大丈夫ですか?」
やっぱりこう、口にして伝えるのはなんだか恥ずかしい。
さっさと済ませて夏月さんに送るプレゼントを一緒に選んでもらおうと思っていたが、なんだか高瀬さんの様子がおかしいように見える。
「あ、うん。全然、大丈夫。ちょっとビックリしちゃって」
「体調が悪いのならまた今度でも……」
「桜くんの気にしすぎだって。全然問題ないよ」
そう口にする高瀬さんだが、浮かべる笑みは何処か無理をしているように感じた。
けれどここで俺が食い下がったところでどうにかなるようなものでもないし、大人しく引き下がるしかない。
「ちな──」
「この後の買い物なんですけれど、明日の夏月さんの誕プレを選ぶ相談に乗ってもらおうかと……あ、すみません。何か言いかけてませんでしたか?」
「……ううん、何も。夏月のプレゼント選び、喜んで手伝うよ!」
切り替えてこの後のことについて話しておこうと思ったのだが、高瀬さんも何か話そうとしていて言葉が被さった気がした。
だけどそれは俺の気のせいだったようだ。
「夏月は可愛いものとか好きだよ」
「そう言われると家にある小物とかそうですね」
そのまま高瀬さんから夏月さんに関する色々なことを教えてもらうが、まず最初にどういったものをプレゼントするのか伝えておくのを忘れていた。
「最初に伝えておくべきだったんですけど、プレゼントで考えてるものがアクセサリーで。夏月さんは指輪とかネックレスとか、普段使いしますかね……?」
「ぁ、うん……うん。桜くんからのプレゼントなら喜んで使うと思うな」
「そうですかね。そうだったら……嬉しいですね」
互いに食事も終えているため、さっそくプレゼントするものを探しに行こうかと席を立つ。
「あ、桜くん。私が出すから」
「いえ、いつもご馳走になってばかりなのもあれなので。相談にも乗ってもらいますし、ここは自分が出しますよ」
俺も学習しているので、今回は高瀬さんよりも先に伝票を手に取ることが出来た。
男性定額給付金というもので思った以上にお金があるため、ここは男を見せねば。
「私も来たばかりだよ!」
十二時に駅前待ち合わせと伝え、今はその十五分前なのだが。
本当に着いたばかりなのか少し疑ってしまう。
自分が待つ分には構わないが、人を待たせるのは少し気がひけるため。
次からはあえて遅めの時間を告げてみようか。
「買い物の前にお昼行きましょう。話したい事もあるので」
「う、うん」
店の場所を調べ、何処に行きたいか伝えている。
特に迷う事なく着き、今回は事前に電話して行くことを告げているためそれほど罪悪感を抱く事なく店の中へ。
前から気になっていた店で、フワトロの卵に包まれたオムライスが絶品らしい。
かかっているソースも拘り抜いたデミグラスソースなので期待が高まるばかりである。
「桜くん。その……話、っていうのは」
「あ、すみません……食事に夢中になって」
「ううん。美味しそうに食べてるところ邪魔してごめんね。何の話か気になっちゃって」
頼んだオムライスは想像していた以上に美味しく、食事に夢中となってしまい。
高瀬さんが言ってくれなければ話のことなんかすっかり忘れていた。
紙ナプキンで口元を拭い、水を飲んで口の中をサッパリさせ、さあ話そうってなった時。
ふと恥ずかしさが込み上げてきた。
結婚したいほど推している二人のうちの片方と同棲し、もう片方にその報告をするという。
本当に現実なのかと思うほどの現状に笑みが漏れたところで、対面に座る高瀬さんの姿が見え。
一人の世界に入って高瀬さんを置いてけぼりにしてしまったことに気がつく。
「その、話したい事といいますか、伝えたい事といいますか」
「うん」
「今更ながらの報告になってしまうんですけど、いま夏月さんとお付き合いをさせていただいてまして」
「ぇ…………」
「少し前から同棲も……あの、高瀬さん? 大丈夫ですか?」
やっぱりこう、口にして伝えるのはなんだか恥ずかしい。
さっさと済ませて夏月さんに送るプレゼントを一緒に選んでもらおうと思っていたが、なんだか高瀬さんの様子がおかしいように見える。
「あ、うん。全然、大丈夫。ちょっとビックリしちゃって」
「体調が悪いのならまた今度でも……」
「桜くんの気にしすぎだって。全然問題ないよ」
そう口にする高瀬さんだが、浮かべる笑みは何処か無理をしているように感じた。
けれどここで俺が食い下がったところでどうにかなるようなものでもないし、大人しく引き下がるしかない。
「ちな──」
「この後の買い物なんですけれど、明日の夏月さんの誕プレを選ぶ相談に乗ってもらおうかと……あ、すみません。何か言いかけてませんでしたか?」
「……ううん、何も。夏月のプレゼント選び、喜んで手伝うよ!」
切り替えてこの後のことについて話しておこうと思ったのだが、高瀬さんも何か話そうとしていて言葉が被さった気がした。
だけどそれは俺の気のせいだったようだ。
「夏月は可愛いものとか好きだよ」
「そう言われると家にある小物とかそうですね」
そのまま高瀬さんから夏月さんに関する色々なことを教えてもらうが、まず最初にどういったものをプレゼントするのか伝えておくのを忘れていた。
「最初に伝えておくべきだったんですけど、プレゼントで考えてるものがアクセサリーで。夏月さんは指輪とかネックレスとか、普段使いしますかね……?」
「ぁ、うん……うん。桜くんからのプレゼントなら喜んで使うと思うな」
「そうですかね。そうだったら……嬉しいですね」
互いに食事も終えているため、さっそくプレゼントするものを探しに行こうかと席を立つ。
「あ、桜くん。私が出すから」
「いえ、いつもご馳走になってばかりなのもあれなので。相談にも乗ってもらいますし、ここは自分が出しますよ」
俺も学習しているので、今回は高瀬さんよりも先に伝票を手に取ることが出来た。
男性定額給付金というもので思った以上にお金があるため、ここは男を見せねば。
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