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十一輪目
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今のでまた意識してしまったが、俺は推しの家にお邪魔して一緒に夕食を食べ、お風呂を借りたんだよな……。
しかも推しが着ていたパジャマを着ている。
「お待たせー」
「あ、コップお借りして水を頂きました」
「…………お揃いパジャマの破壊力すごっ」
ドライヤーで乾かしたであろうが、まだしっとりとした髪。
首に掛けられたタオル。
風呂上がりだからか少し火照った顔。
その全てが良い。
化粧水などは付けているであろうが、ほぼスッピンといってもいいだろう。
いつもの大人びた感じはなく、俺よりも年上であるはずなのに幼く見える。
加えて普段見られないストレートはなかなかに新鮮で、なんかもう、語彙力が無くなってきた。
だけどその常磐さんは俺を見てから固まって動かない。
このコップだけ、勝手に使ったらいけなかったとか?
「あ、うん。全然問題ないよっ」
少し間があったけども大丈夫そうなので水のおかわりをいただく。
常磐さんは何かをセットしているが……香りからしてコーヒーかな。
「桜くんも飲む?」
「あ、頂きます。……これから徹夜でゲーム、ですもんね?」
「 ふへっ。……う、うん。取り敢えず、クリアを目指そうね」
俺の分もコーヒーを入れてもらったはいいが、まだ熱くて飲めないので水で喉を潤しつつ。
ゲームの電源を入れ、いつでも始められる準備を終えた常磐さんからコントローラーを受け取る。
有名なゾンビシリーズの五作目で、過去にやってクリアしたことあるが大体の流れしか覚えていない。
確か面倒なギミックが多かった気がする。
多少、俺の方が慣れているし、常磐さんメインで進めていくようにしよう。
と、思って始めたはいいものの。
ホラーはまあ大丈夫な方の常磐さんだが、急に驚かされるビックリ系は苦手らしく。
ここでくるんじゃないかとビクビクしながら進んでいるため、思った以上に時間がかかっていた。
覚えているところは多少アドバイスなんかもするが、ビクビクしている姿や驚いた時の可愛い声など、ずっと楽しんでいたい。
「さ、桜くんはこういうの本当に平気なんだね」
「でも初見はやっぱり慎重になりますよ。どんな敵が出てくるのか分からないので弾管理だったり、それこそ今の常磐さんみたいにビックリするものがこないか疑ったり」
自然と話はやっているゲームがメインとなり。
画面を見ているため顔を合わせての会話ではないが、時折横顔をチラ見しては幸せを十分に噛み締めている。
途中何度か危ない場面はあったものの、一度も死ぬことはなく。
チャプターも五つ目を終え、イベントムービーを眺めている。
零時はとっくに過ぎており、昼間の疲れであったり睡魔であったりと寝てしまいそうになるのを何杯目かのコーヒーで吹き飛ばす。
それでも限度はあるが、次のチャプターで終わりなのでもう一踏ん張りといったところだ。
「心で通じ合うような、ああいう関係って憧れちゃうよね」
それは互いに言葉を交わすことなく、目と目で相手と意思疎通が取れている場面であった。
これまでの苦難を共に乗り越えてきたからこそ出来る事ではあるのだろうが。
「あー……羨ましいですけど、ゾンビ世界で生き残っていける自信はないですね」
「ゾンビ世界だけじゃなくてさ。仕事の関係とか、その……パートナーの関係だったりとかさ」
「確かに、そういった関係ってのはいいなって思います」
現実でやるとなると、相当難しいような気がする。
だからこそ羨ましく思うのだが。
「その……桜くんは今、パートナーとか居ないんだよね?」
「へ? あ、はい。特に付き合ってる人とか居ませんけど……」
急に話が変わったような気がし、常磐さんを見てみれば。
顔を赤くさせてこちらを見ていた。
風呂からあがってだいぶ時間も経っているため、その顔の赤さはまた別の理由があるのだろう。
話そうとしているのは何となく感じていたので待っていると、何やら覚悟を決めたように一つ息を吐き。
「ならさ、私とかどう……かな?」
しかも推しが着ていたパジャマを着ている。
「お待たせー」
「あ、コップお借りして水を頂きました」
「…………お揃いパジャマの破壊力すごっ」
ドライヤーで乾かしたであろうが、まだしっとりとした髪。
首に掛けられたタオル。
風呂上がりだからか少し火照った顔。
その全てが良い。
化粧水などは付けているであろうが、ほぼスッピンといってもいいだろう。
いつもの大人びた感じはなく、俺よりも年上であるはずなのに幼く見える。
加えて普段見られないストレートはなかなかに新鮮で、なんかもう、語彙力が無くなってきた。
だけどその常磐さんは俺を見てから固まって動かない。
このコップだけ、勝手に使ったらいけなかったとか?
「あ、うん。全然問題ないよっ」
少し間があったけども大丈夫そうなので水のおかわりをいただく。
常磐さんは何かをセットしているが……香りからしてコーヒーかな。
「桜くんも飲む?」
「あ、頂きます。……これから徹夜でゲーム、ですもんね?」
「 ふへっ。……う、うん。取り敢えず、クリアを目指そうね」
俺の分もコーヒーを入れてもらったはいいが、まだ熱くて飲めないので水で喉を潤しつつ。
ゲームの電源を入れ、いつでも始められる準備を終えた常磐さんからコントローラーを受け取る。
有名なゾンビシリーズの五作目で、過去にやってクリアしたことあるが大体の流れしか覚えていない。
確か面倒なギミックが多かった気がする。
多少、俺の方が慣れているし、常磐さんメインで進めていくようにしよう。
と、思って始めたはいいものの。
ホラーはまあ大丈夫な方の常磐さんだが、急に驚かされるビックリ系は苦手らしく。
ここでくるんじゃないかとビクビクしながら進んでいるため、思った以上に時間がかかっていた。
覚えているところは多少アドバイスなんかもするが、ビクビクしている姿や驚いた時の可愛い声など、ずっと楽しんでいたい。
「さ、桜くんはこういうの本当に平気なんだね」
「でも初見はやっぱり慎重になりますよ。どんな敵が出てくるのか分からないので弾管理だったり、それこそ今の常磐さんみたいにビックリするものがこないか疑ったり」
自然と話はやっているゲームがメインとなり。
画面を見ているため顔を合わせての会話ではないが、時折横顔をチラ見しては幸せを十分に噛み締めている。
途中何度か危ない場面はあったものの、一度も死ぬことはなく。
チャプターも五つ目を終え、イベントムービーを眺めている。
零時はとっくに過ぎており、昼間の疲れであったり睡魔であったりと寝てしまいそうになるのを何杯目かのコーヒーで吹き飛ばす。
それでも限度はあるが、次のチャプターで終わりなのでもう一踏ん張りといったところだ。
「心で通じ合うような、ああいう関係って憧れちゃうよね」
それは互いに言葉を交わすことなく、目と目で相手と意思疎通が取れている場面であった。
これまでの苦難を共に乗り越えてきたからこそ出来る事ではあるのだろうが。
「あー……羨ましいですけど、ゾンビ世界で生き残っていける自信はないですね」
「ゾンビ世界だけじゃなくてさ。仕事の関係とか、その……パートナーの関係だったりとかさ」
「確かに、そういった関係ってのはいいなって思います」
現実でやるとなると、相当難しいような気がする。
だからこそ羨ましく思うのだが。
「その……桜くんは今、パートナーとか居ないんだよね?」
「へ? あ、はい。特に付き合ってる人とか居ませんけど……」
急に話が変わったような気がし、常磐さんを見てみれば。
顔を赤くさせてこちらを見ていた。
風呂からあがってだいぶ時間も経っているため、その顔の赤さはまた別の理由があるのだろう。
話そうとしているのは何となく感じていたので待っていると、何やら覚悟を決めたように一つ息を吐き。
「ならさ、私とかどう……かな?」
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