Nodding anemone

不思議ちゃん

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四輪目

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 意外とすんなり見つかったはいいものの、何やら話しているようで。
 割って入っていいものなのか悩んでいると、視界の端にでも入ってしまったのか見つかってしまい。
 
 驚いた顔をされながらも高瀬さんと話していた女性が俺の方へと向かってくる。
 
「あの、さっきは彼女がごめんなさいね。ここに見学へ来るぐらいだから距離感を間違えちゃって」
「い、いえ、大丈夫です。何か大事な話をしてるところでしたか?」
「あ、うん。ちょっとね。それよりも桜くん、だっけ。どうかしたのかな?」
「えっと、自分、高瀬さんのファンでして。サインを頂けたらと思ってたんですけど……また後でにします」
 
 サインが欲しいと口にすれば先程の上司のように驚いていたが、何か変なことを言っただろうか。
 
 まあ、話は一区切りついていたそうなのでそのまま女性に連れられて高瀬さんの元へ向かい、色紙を持っていなかったのでクロッキー帳へとサインしてもらうことが出来た。
 
 
 
 その後は何事も問題が起きたりせず、収録も無事に終わり。
 俺はアフレコスタジオの見学もでき、推しの一人に会えたうえ少し会話してサインも貰えた。
 これまでの人生で片手に入るぐらい良い日だったと言えるだろう。
 
 詳細はボカし、推しに会えたことやサインを貰えたことを呟き、サインも全体だと写真が出回りそうなので一部分だけを写してSNSにアップし。
 
 今晩はいい夢が見れそうだと、幸せな気持ちで眠りについた。
 
 
 
 
 
 少し遅めに起きた土曜日の朝。
 軽く朝食を済ませ、昨日貰ったサインをいれる額縁を買うために出かける準備を進める。
 
 ファッションにそれほど興味がないため、マネキン買いをしたモノトーンコーデである。
 少し前まで色付きの服なんかも着ていたが、やっぱりモノトーンは変なこと考えなくていいから楽でいい。
 
 持ち物もサイフにスマホ、定期があれば十分なため小さなカバン一つで済む。
 
 額縁を買って帰ったらテレビの横にそれを並べ、ライブ鑑賞しようと思いながら玄関の鍵を閉め、駅へと向かう。
 
 それにしても、いつ頃だか道を歩いていて男性とすれ違うことが少なくなった気がする。
 歩いているのを見かけたとしても女性連れであり、独り身を見たことがない。
 
 過去に一度だけ彼女がいたけども長くは続かず、それ以降恋愛が絡む人間関係が面倒になって作ろうと思ってこなかったが。
 こうして目の前を少し小太りなオジサンが両脇に女性を連れ歩いてるのを見て、少し羨ましいと思っている。
 
 会社よりも少し遠いが池袋に向かうため、ちょうど来た電車に乗り込み。
 変わらず女性ばかりだなと思いつつ、空いている座席に座りスマホを取り出す。
 
 SNSをひらくと、普段は全くと言っていいほど動かないDMに通知が来ていた。
 稀にスパムが来るため、今回もそれかと思ったのだがどうやら違うようで。
 
 簡単にまとめると、同じく高瀬さんのファンだから熱く語り合いたい。みたいな旨の内容だった。
 …………マルチかな?
 
 でも周りに自身の推しについて語れる人は居らず、仲のいいフォロワーも九州や関西だったりと遠いので少し惹かれるところはある。
 いま外に出ているし、用事が済むまでに池袋に来れるようなら話だけでも聞いてみるのはありかもしれない。
 
 ってことでその旨のリプを送り、いくつか更新されるまで待っていたネット小説を読もうと思ったけど……こんな話だったかな?
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