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三輪目
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楽しみなことが待っていると、時間が過ぎていくのを早く感じる。
あっという間に金曜日となり、上司に連れられてアフレコスタジオへと来ていた。
事前に女性が多いけど大丈夫なのかと確認を取られたので少し不思議に思っていたが。
このスタジオで働く男性を見ていないため少し納得した。
少し変な感じを受けながらも俺の目の前では現在手がけているアニメの声が吹き込まれており、なんだか素晴らしいものを見た気がする。
まだ絵は出来上がっておらず、絵コンテのものを流してやっているため、声優って凄いんだなと漠然と感じた。
聞いたことのあるような声だけれど、名前も顔も分からないのでどうしようもない。
だからといってここで上司に声優さんの名前を聞くのも失礼であるため、取り敢えず持ってきていたクロッキー帳に今見ているものをスケッチしていく。
中の人にハマったと言っても極一部の好きな人たちだけであり、世間一般に認知されている有名な人でも名前を聞いて分からなかったりする。
もう少し興味を持った方がいいとは思っていても中々思うようにはいかない。
機材へと触れないように、なおかつ邪魔にならないようウロチョロしてはスケッチしていく。
何か言われたら辞めないといけないが、今のところ気になるのかチラチラ見られるだけなので大丈夫だろう。
「絵、上手いね」
集中していて周りが見えておらず、声をかけられてようやく見られていたことに気づき。
反射的にそちらへ振り向き、誰であるかを認識した瞬間。
「んぅぇっ!?」
変な声を上げながらクロッキー帳をその場に落とし、腰を抜かしてしまう。
「え、あ、ご、ごめんねっ。だ、大丈夫……?」
そんな俺の反応に声をかけてきた人──高瀬春は慌てふためき、腰を抜かした俺に手を差し伸べようとしては引っ込めるを繰り返していた。
このちょっとした騒ぎで人が集まってきてしまい、何故か高瀬さんが責められる雰囲気になっているため。
慌てて落としたものを拾って立ち上がり、ただ驚いただけだと説明していく。
なんとか事は収まったものの、収録は一度休憩を挟んでからの仕切り直しとなった。
その事に申し訳なさを感じつつも、未だに内心ドキドキしている。
何故なら高瀬春さんが今現在ハマっている五人組声優アイドルユニット『Hōrai』のメンバーであり。
もし出来るのなら結婚したいと思うほど推している二人のうちの一人なのだ。
まさかいきなりあんな至近距離で顔を合わせる事になるとは思わなかったのに加え、俺の第一声は奇声であり、腰を抜かすという姿まで見られた始末。
「桜くん、さっきは大丈夫だった? あれなら今日はもう帰って休んでもらっても構わないけど」
「い、いえ。自分、高瀬さんのファンで。まさか居ると思わず、嬉しさと驚きで変な声出して恥ずかしかったです」
自販機で缶コーヒーを買い、空いていた椅子に座ってゆっくりしていると上司が心配そうな顔をして声をかけてきた。
別に帰って休むほどでもないし、なんならまた会えるかもと少し期待している。
ダメ元でサインを貰ってもいいものなのか聞いてみると、驚いたような感じをされながらも大丈夫だと返ってきたので、高瀬さんを探すため席を立つ。
あっという間に金曜日となり、上司に連れられてアフレコスタジオへと来ていた。
事前に女性が多いけど大丈夫なのかと確認を取られたので少し不思議に思っていたが。
このスタジオで働く男性を見ていないため少し納得した。
少し変な感じを受けながらも俺の目の前では現在手がけているアニメの声が吹き込まれており、なんだか素晴らしいものを見た気がする。
まだ絵は出来上がっておらず、絵コンテのものを流してやっているため、声優って凄いんだなと漠然と感じた。
聞いたことのあるような声だけれど、名前も顔も分からないのでどうしようもない。
だからといってここで上司に声優さんの名前を聞くのも失礼であるため、取り敢えず持ってきていたクロッキー帳に今見ているものをスケッチしていく。
中の人にハマったと言っても極一部の好きな人たちだけであり、世間一般に認知されている有名な人でも名前を聞いて分からなかったりする。
もう少し興味を持った方がいいとは思っていても中々思うようにはいかない。
機材へと触れないように、なおかつ邪魔にならないようウロチョロしてはスケッチしていく。
何か言われたら辞めないといけないが、今のところ気になるのかチラチラ見られるだけなので大丈夫だろう。
「絵、上手いね」
集中していて周りが見えておらず、声をかけられてようやく見られていたことに気づき。
反射的にそちらへ振り向き、誰であるかを認識した瞬間。
「んぅぇっ!?」
変な声を上げながらクロッキー帳をその場に落とし、腰を抜かしてしまう。
「え、あ、ご、ごめんねっ。だ、大丈夫……?」
そんな俺の反応に声をかけてきた人──高瀬春は慌てふためき、腰を抜かした俺に手を差し伸べようとしては引っ込めるを繰り返していた。
このちょっとした騒ぎで人が集まってきてしまい、何故か高瀬さんが責められる雰囲気になっているため。
慌てて落としたものを拾って立ち上がり、ただ驚いただけだと説明していく。
なんとか事は収まったものの、収録は一度休憩を挟んでからの仕切り直しとなった。
その事に申し訳なさを感じつつも、未だに内心ドキドキしている。
何故なら高瀬春さんが今現在ハマっている五人組声優アイドルユニット『Hōrai』のメンバーであり。
もし出来るのなら結婚したいと思うほど推している二人のうちの一人なのだ。
まさかいきなりあんな至近距離で顔を合わせる事になるとは思わなかったのに加え、俺の第一声は奇声であり、腰を抜かすという姿まで見られた始末。
「桜くん、さっきは大丈夫だった? あれなら今日はもう帰って休んでもらっても構わないけど」
「い、いえ。自分、高瀬さんのファンで。まさか居ると思わず、嬉しさと驚きで変な声出して恥ずかしかったです」
自販機で缶コーヒーを買い、空いていた椅子に座ってゆっくりしていると上司が心配そうな顔をして声をかけてきた。
別に帰って休むほどでもないし、なんならまた会えるかもと少し期待している。
ダメ元でサインを貰ってもいいものなのか聞いてみると、驚いたような感じをされながらも大丈夫だと返ってきたので、高瀬さんを探すため席を立つ。
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