神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ

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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

102話 飛翔とわたし

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  ラグラーナに戦斧を打ち込む手を休めること無く、少しづつ顔の方に移動します。
  ラグラーナは激しく身を捩り、抵抗しますが、半身をズタズタにされてバランスが取れないのか、その場に留まったまま暴れるだけです。
  顔の辺りまで来ると、双斧を水龍の戦斧に持ち替え、一瞬のタメのあと、2層の魔力を纏わせ、レイピアの様な鼻先に振り下ろします。
  鼻先は断ち切られ、ラグラーナは無理矢理身をくねらせて、わたしから距離を取ろうとします。

「ぐっ!」

  ラグラーナがわたしから離れるさい、振るわれた尾ビレを受けてしまいました。
  夜天のローブのお陰で、致命傷は避けられましたが、太腿を大きく切られてしまいました。
  追撃したい所ですが、ここは水面に浮上するべきですね。
  少し苦しくなって来ました。
  水中で得られる酸素が少なくなって来ています。
  急いで作製し、水人の丸薬に込めた魔力が通常より少なかったせいか、効果が短い様です。
  それに、傷の手当てもしなければなりません。
  水中では、止血が出来ませんし、どんどん血が流れて行ってしまいます。
  あと、超痛いです。
  塩水が鬼の様にダメージを与えてきます。
  治癒魔法が使えれば、水中でも手当てが出来るのですが、残念ながらわたしの、回復手段はポーションです。
  水中では使えません。

(なんですか⁉︎)

  浮上しようと、水面に向かう泳ぐわたしを急に不自然な水の流れが海底へと、押し返しました。
  視線を移すとかなりの距離を置いてこちらを見つめるラグラーナと目が合いました。
  どうやら奴は、同じ土俵での接近戦は不利だと悟ったのか、水を操りわたしの浮上を阻害している様です。
  魔物は総じて、普通の動物よりも頭が良いです。
  ハーピィに、してもエンシェントトレントにしてもきちんと考え、作戦を練ってきます。
  わたしの秘策を逆に利用しするとは、敵ながら天晴れです。
  つまり、何が言いたいかと言うと…………今、わたし、ピンチです!
  超身体強化を使い、海底を蹴ってラグラーナに近付こうとすると、またしても不自然な水の流れが、わたしを押し返します。
  近付かせず、浮上させず、このまま溺れさせるつもりの様です。
  人間が、水中で長く活動出来ないのを理解しているのでしょう。
  不味いです。
  もう、ほとんど薬の効果が切れています。
  水人の丸薬無しだと、わたしの息は1分ちょいくらいしか持ちません。
  兎に角、今は海面に出ることが優先です。
  わたしは、アイテムボックスから種を取り出し、海底に押し付けます。

(生い茂る緑の子らよ 大地を掴め)

  わたしが取り出した種は、木属性の魔力によって急成長し、ぐんぐん伸びて行きます。
  ラグラーナが水流を操り、わたしを押し返し出来ますが、成長する木に掴まったわたしは、水流に逆らい水面へと向かいます。
  
「な、なに⁉︎」

  水中から突如生えてきた木にアイゼンさんが驚きますが、わたしはそれどころでは有りません。
  アイテムボックスからポーションを2本取り出すと、1本を傷口に振りかけ、もう1本を飲み干します。
  ポーションの使い方は、2通りあり、傷口に振りかける場合と飲み干す場合があります。
  傷口に直接かけると、その傷を治癒する事ができ、飲み干すと直接掛けた場合より効果が落ちるが、全身の傷を治癒し、また、少しの間、自然治癒力が上昇します。
  尾ビレでやられた太腿の傷と、鋭い鱗により、顔や手などに出来た傷が消えて行きます。
  水中からの脱出に使用した木から飛び降り、水天の靴の効果を使い、水面に着地します。
  この木は、暫くすれば枯れてしまうでしょう。  
  可哀想な事をしてしまいました。
  水龍の戦斧を構えるわたしにラグラーナが、向かって来ます。
  もう一度、チャーシュードンをお見舞いしてやりましょう。
  水龍の戦斧に魔力を纏わせます。
  水中に居たときは、水圧や水の抵抗をずっと魔法で相殺していたので、2層が限界でしたが、今は問題有りません。
  水天の靴も起動時に多くの魔力を込めて、一時的に魔力の供給を切ります。
  6層もの魔力を込めた水龍の戦斧は淡く光始めます。
  こちらに向かってくるラグラーナの速度に合わせて水龍の戦斧を振りかぶった時、前方から大きな水しぶきが上がります。
  なんとラグラーナは、勢い良く水中から跳び上がると、トビウオの様に滑空します。

「そんな事も出来るのですか⁉︎」

  最後の力を振り絞ったラグラーナが向かうのは、土属性魔法で作られた壁です。
  このままでは、飛び越えられて、しまいます。
  しかし、土壁の上にラグラーナの行く手を遮る人影が有りました。
《無垢なる愛》の3人です。
  
「いくわよ!」

「ええ!」

「はい!」

「我らを護りし大地にこい願う  戦を終焉へと導く刃を ここに 愛と大地の大剣ガイアブレード

  ドミニクさんの魔法は、聞いたことのない物ですね。
  恐らく、固有魔法オリジナルです。

「強靭なる刃 勇き勲を貴方に捧ぐ 愛の上級多重付与エクストラエンチェント

  トロンさんの付与魔法も固有魔法オリジナルですね。

「はぁぁぁあ‼︎」

  ドミニクさんの作り出した巨大な剣を手に、トロンさんの魔法で強化されたアイゼンさんがラグラーナの真正面に飛び上がります。

貴方に捧ぐ愛ラブ♡スラッシュ‼︎」

  あらゆる意味で強烈な斬撃が、ラグラーナを撃ち落としました。
  凄いです!
  ただ、技名はダサいと思います。
  わたしは落下して来たラグラーナに戦斧を振ります。

「必っ殺! 魚切り‼︎」

  6層の魔力を纏った斬撃はラグラーナの強靭な鱗を断ち切り、首の辺りを切りとばしました。
  ようやく討伐終了です。
  今回は水中での行動が多く、かなりの疲労が有ります。
  早く戻ってゆっくり休みたいです。
  あと今回の技名もイマイチです。










  
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