上 下
45 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

41話 解体とわたし

しおりを挟む
  死闘の末、エルダートレントを倒したわたしは倒したまま放置していた魔物の死骸を回収しながらガストの街に戻るため、森からの脱出を目指しています。
  操られていた魔物はエルダートレントが討伐されると、バラバラに逃げて行きました。
  今回は本当に死ぬかと思いました。
  帰ったらお菓子でも食べてダラダラしたいです。


  森からの離れた平原で野営し、翌朝、ガストの街へ帰って来ました。
  取り敢えずギルドに行きましょう。
  この街は門からギルドまでがとても近いのですぐそこです。
  軋まないスイングドアを抜け、カウンターへ向かいます。

「おいおい、お嬢ちゃん。怪我しない内にママの所に帰りな」

「ギャハハ、このお嬢ちゃんのママなら宿の俺の部屋で寝てるぜ」

「バーカ、お前と寝るくらいならオークと寝たほうがましだろ」

「「「ギャハハ」」」

「……」

   !   !   !

  何時ものように、絡んで来た冒険者のあごを殴っておきました。
  今日は疲れているのでお約束も手短に済ませます。
  立ち上がろうともがく3人ですがフラついて倒れてしまいました。
  軽い脳震盪なので暫くすれば治るはずです。

「おかえり、ユウちゃん。なんだかお疲れね」

「森で魔物の群れに襲われまして……」

「あら、じゃあ依頼は失敗?」

「いえ、依頼の品は確保していますよ。
  ただ、仕留めた獲物が多くて解体をどうしようかなって」

「それならギルドに依頼すればいいじゃない」

「そんな事できるのですか?」

「ええ、もちろん。有料だけどね。
  どれくらいの数があるの?」

「え~っと、オークが11体、ハイオークが1体、グリーンベアが2体、フラワーウルフが9体、マンイーターが5体、マジックパペットが9体、キラーパペットが2体、ブッシュスネークが2体、トレントが26体、エルダートレントが1体です」

「すごいわね、それだけの数を1度に狩るなんて、なかなかできる事じゃないわ」

「偶然ですよ。かなり死に掛けましたし」

「でもそれだけの数だと職員だけじゃ手が足りないわね……ねぇ、ユウちゃん。
  解体の人手として冒険者を雇いたいんだけど、当然その分費用がかかるけどいいかしら?」

「はい。大丈夫です。確かわたしが受けている依頼の納品はギルドで行われるのですよね?」

「ええ、今回の納品依頼は追加の納品物があるからね。
  追加の納品分の報酬が適正な額であるか、わたしが立会人として同席するわ」

「ギルドとはそこまでしてくれるのですか?」

「もともとギルドは貴族や商人から冒険者の権利や利益を守るために作られたものだからね」

「そうだったんですか」

「まぁね。」

  リゼさんはそう言って苦笑するとギルドのホールに良く通る声で募集をかける。

「依頼よ!魔物の解体、募集は3名、報酬は1人銀貨2枚」

「俺、受けるぞ!」

「俺も!」

「まてまて、俺の方が解体が上手い!」

「私が受けるわ!」

「僕、解体得意です!」

  おお!安全な街の中での解体依頼に銀貨2枚は破格ですから多くの冒険者が依頼を受けにカウンターに駆け寄って来ました。

「ハイハイ、大人しくしなさい。
  じゃあ、ロイドとネレと……ナビにお願いするわ」

「任せろ」

「やった!」

「よ、よろしくお願いします」

「待ってくれよ、リゼさん! 俺の方が速かったじゃないか」

「あんたは何時も解体が雑なのよ」

「そんなぁ」

「さぁ、解体場に移動するわよ」

  ギルドの裏にある解体場にやって来ました。
  数人の職員さんが働いています。

「じゃあ、ここに獲物を出してくれる?」

「はい」

  リゼさんに、言われた所に獲物を取り出していきます。

「「お~」」

  どんどん出します。

「「お~」」

  まだまだ出します。

「「……」」

「聞いたのと見るのじゃ、やっぱり違うわ。
  ユウちゃんよく無事だったわね」

「これで最後です」

「えっ! ユウちゃんなにそれ?」

「え? エルダートレントですよ」

  リゼさんが驚いて聞いて来ますがエルダートレントがあると説明していたはずです。

「ユウちゃん、この魔物、魔法使って来なかった?」

「はい。氷と闇と木の魔法を使ってました。
  でもエルダートレントは魔法を使うと聞きましたし、普通では?」

「ユウちゃん、エルダートレントが使うのは木魔法だけよ。
  この魔物はあまり知られて無いけどエルダートレントの更に上位種のエンシェントトレントよ。
  ちなみにAランク」

「えぇ!?そうなんですか?
  ゴブリンロードと同じBランクと考えると少し強すぎるとは思っていましたがまさか上位種だったとは、考えもしませんでした」

「はぁ~、ユウちゃん、身体を休めたら護衛依頼を受けなさい」

「なぜです?」

「護衛依頼を経験すればCランクに上がる条件を満たせるわ。
  そしてCランクに上がったらすぐBランクに上がる試験を受けてちょうだい」

「そ、そんなにランクを上げて良いのですか?」

「あなたの戦闘力はAランク級なのは確定よ。
  冒険者としての経験を加味してBランクは妥当だわ」

「分かりました。なるべく早く護衛依頼を受けます」

「お願いね。
  さて、じゃあ解体しましょう。
  職員はオークから、冒険者はトレントから初めてちょうだい」

  「「はい」」

  わたしは職員さんや冒険者さん達の手を借りて解体を進めていったのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々の間では異世界転移がブームらしいです。《サイドストーリー》

はぐれメタボ
ファンタジー
《番外編》 神々の間では異世界転移がブームらしいです。の番外編です。 《マーリンさんの学業奮闘記》 大賢者イナミの弟子、マーリンは師匠の命令でミルミット王国の学院に入学する事になった。 マーリンは、そこで出会った友人達と事件に巻き込まれて行く。 《迷宮都市の盾使い》 ミルミット王国最大の迷宮都市ダイダロスで迷宮に挑む冒険者達と全身鎧を身に付けた謎の冒険者の物語り。 《炎の継承者》 田舎に暮らす少年、カートは憧れの父親の背中を追って成長して行く。 《盃を満たすは神の酒》 エルフのジンとドワーフのバッカスは2人組の冒険者である。 彼等は神が醸造したと言われる伝説の酒を探して旅を続けていた。 そんな彼等が居た帝国の街に、とてつもない数の魔物が迫っていた。 《1人と1振り》 冒険者のヴァインはある日、奇抜な冒険者アークと出会う。 やがて共に旅をする様になった2人はミルミット王国のある街でとある依頼を受ける事になった。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~

平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。 三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。 そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。 アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。 襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。 果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

処理中です...