神々の間では異世界転移がブームらしいです。

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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

50話 錬金術師とわたし

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  昼食にも誘われましたが流石に遠慮しました。
  そろそろ依頼者の所に行かなければなりません。
  孤児院を出たわたしは屋台でサンドイッチを買って、食べながら歩きます。
  ガストの街の東側、大きな商会や職人さんの工房などが集まった商業区に着きました。
  ガルフさんの工房もこの辺りに有ります。
  ようやく依頼者の工房に着きました。
  と言うかガルフさんの工房の隣です。

「ごめんください」

  取り敢えず工房に併設されたお店に入ります。
  返事は有りません。
  お店に並んでいるのはマジックアイテムです。
  どうやら依頼者は錬金術師みたいですね。
  お店のカウンターにベルが置いてあります。
  多分、よくある鳴らすと定員さんを呼ぶベルだと思います。
  わたしは早速、ベルを鳴らしました。
  するとお店の奥から20代半ばくらいの男性がダラダラと出て来ました。

「お~、いらっしゃい。
  なんか探しもんか?」

「いえ、わたしはBランク冒険者のユウと言います。
  風魔石の納品依頼を受けたのですが、先ず依頼者から説明を聞く様に言われて来ました」

「なに、あの依頼を受けたのか!」

「はい」

「そうか、そうか、俺ほ錬金術師のエドガーだ。
じゃあ説明する。
  先ず、手に入れて欲しいのは風魔石だ。
  風魔石は見たことあるか?」

「いえ、聞いたことがあるくらいです」

「ちょっと待ってろ」

  急に元気になったエドガーさんはお店の奥に引っ込んだと思ったら直ぐにもどって来ました。
  手には500円玉くらいの大きさの石を持って居ます。
  エドガーさんが持つ石からは魔力を感じます。
 
「これが風魔石だ。
  魔力の高い土地で発見されることが多い。
  鉱脈の目星は付いているんだが俺には辺境の魔物とまともにやり合う力が無いからな。
  俺の代わりに鉱脈に行って風魔石を取って来て欲しい。
  報酬は手に入れた風魔石の純度と量で決めさせて貰いたい。
  この条件で依頼を受けてくれるか?」

「はい、構いませんよ」

「そうか、助かるよ。
  風魔石にはよく似た鉱石も有るんだがその辺の説明は必要か?」

「わたしは鑑定が使えるので大丈夫です」

「それは頼もしい、ではよろしく頼む」

  エドガーさんの工房を出たわたしは彼から貰った鉱脈の位置が記された地図に従い、モモと走って行きます。
  エンシェントトレントと戦った森の先、木々が姿を減らし岩がゴロゴロとした岩石地帯になって来ました。いくつかの岩山を通り過ぎひときわ大きな岩山を登って行きます。
  
「何かおかしいですね」

  森の辺りまではゴブリンやオークを始め、多様な魔物が襲い掛かって来たのですが岩石地帯に入ってからほとんど魔物が現れません。

「これは……まさか……ラッキー!?」

  そんな訳は有りません。
  恐らく強力な魔物でも現れて辺りの魔物が隠れているのでしょう。
  早く風魔石を探して撤退した方がいいですね。
  わたしはマッピングスキルを使う事にしました。
  このマッピングスキルは、いろいろと検証した結果、わたしがしっかりとイメージ出来る物なら探知する事ができることが分かりました。
  たとえば、沢山の人混みのなかで、名前しか知らない人を探す事は出来ませんが、リゼさんを探す事は出来るのです。
  風魔石もエドガーさんのお店で実物を見ていますから問題なく探知できるはずです。
  わたしは風魔石を強くイメージしました。
  すると頭の中の地図に青い点がポツポツと点ります。
  近くの小さな点を掘ってみると小指の爪くらいの小さな風魔石が出て来ました。
  成功です。
  なるべく大きな点を探しながら岩山を登って行きます。
  すでにエドガーさんに見せて貰った物と同じくらいの大きさの風魔石を30個ほど手に入れました。
  マッピングスキルはチートが過ぎますね。
  自分用にいくつかキープしておきたいです。
  前のエンシェントトレントの木材もキープしているものが有りますからこれで何か作れないものですかね?
  おお! 此方からとても大きな反応が有ります。
  最後にこの大きな風魔石を手に入れましょう。
  欲張り過ぎるとよく無いですからね。
  マッピングスキルで見えている点に向かって岩の道を進み、角を曲がった所でそいつは居ました。
  頭に生えた大きなツノ、しなやかな筋肉が見て取れる脚、硬い鎧でも簡単に噛み砕けるような鋭い牙、この岩山の支配者に相応しい貫禄を持ったBランクの魔物、アイアンビースト…………を美味しく頂いている生きた岩山の様な魔物、ストーンドレイク。
  まずいです。
  まさか、軽く受けた依頼で下級とはいえ、竜種と遭遇するとは予想して居ませんでした。


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