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神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

34話 治療薬とわたし

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  その日の夕刻、調合が終わり、ちょうど夕食に呼びに来てくれたシルバさんに薬が完成した事を伝えると、夕食後にユーリア様の治療を開始する事になりました。
  
「こちらがメデューサ症候群の治療薬です。1日に1杯飲んで下さい。
  飲むと魔力切れの状態になり、つよい疲労が有ります。
  休息を取り魔力を回復させ、また薬を飲むこれを10日ほど繰り返すことになります」

「分かりました。お願いいたします」

  ユーリア様は1杯目の薬を飲み干しました。

「ひゃっ!」

  短い悲鳴を上げたユーリア様の身体から大量の魔力が流れ出します。

「おぉぉ!」

  魔力がほとんど無いと思われていたユーリア様から大量の魔力が流れ出した事にガスト辺境伯やミッシェル様が驚いています。
  ユーリア様はほとんどの魔力を失い目を回してしまいました。
  数時間経てば魔力が回復し、目を覚まします。
  これを何度も繰り返せば魔力回路が拡がりメデューサ症候群は回復するのです。
  ユーリア様が目を覚ましたら温かい飲み物を飲ませるように言ってわたし達は部屋をあとにします。

「ユウ殿、ユーリアは無事、完治するだろうか?」

「はい。ユーリア様は薬に拒絶反応も起こしませんでしたし、この土地は魔力の回復を早めますから治療もスムーズに進む筈です」

「そうか。ではユーリアが完治するまで我が屋敷に逗留して欲しい。
  ユーリアの治療が完了したら依頼完了の書類と報酬を支払う」

「分かりました。しばらくの間お世話になります」

  夕食の後、シルバさんに客室へと案内されました。
  
「しばらくの間、この部屋をお使い下さい。
  何かご用が有りましたら机の上のベルを鳴らして下さい。直ぐにメイドが伺います」

「ありがとうございます」

  用意された部屋はとても豪華でした。
  恐らく貴族の客を泊める為の部屋だと思います。
  かなりの高待遇です。
  まさか天蓋付きベッドで眠る日が来るとは思いませんでした。
  そして、何と言ってもここは貴族のお屋敷です。
  そう、お風呂が有るのです。
  この部屋にもお風呂が付いています。
  この世界のお風呂は貴族や大商人くらいしか持っていません。
  庶民はお湯で身体を拭いたり川で水浴びをしたり、少し裕福なら公衆浴場を利用したりします。
  わたしは久し振りに落ち着いた入浴を楽しみ、眠りに着きました。

  翌日、すでに10日分の薬は調合しているので朝食のあと、街を散策してみる事にしました。
  シルバさんから大体の街の構造を教えてもらい、取り敢えず冒険者ギルドに行ってみることにしました。

  ガストの街の冒険者ギルドは門の近くにあり、ガナの街に比べてかなり大きな建物です。
  軋まないスイングドアを通り抜け、ギルドに入ります。
  ギルドの基本的な作りはガナの街と同じです。
  しかし、ガナの街よりも大きなクエストボードに大量の依頼書が貼り付けられています。
  それに、朝の混み合う時間を外して来たのに結構人が多いです。
  ユーリア様が完治するまで依頼を受けるつもりはありませんが、暫くこの街に居るつもりなので1度ギルドの職員さんに挨拶しておきましょう。
  ギルドの職員さんだって横暴な冒険者より礼儀正しい冒険者の方が好ましいはずです。
  わたしがクエストボードを横目にカウンターへ向かって歩き出すといくつもの視線が向けられます。
  久し振りの感覚です。

「こら、クソガキ!ここは冒険者ギルドだぜ。ガキが遊びて来る場所じゃねぇぞ」

「ハハハ、おいガキが泣いたらどうすんだ」

  どこかで聴いた台詞です。
  台本でも有るのでしょうか?

「あぁ、お構いなく。わたしは成人していますし、Dランクの冒険者です」

「はぁあ、お前みてぇなガキがDランクだと、嘘ならもっと上手く付きな」

「別に信じなくても構いませんよ。
  どいて下さい」

「ダメだな。手めえみたいなガキが調子こいて居られる場所じねぇんだよ」

「あなた達の様な雑魚が調子こいて居るのだから別に良いでは無いですか」

「な……んだと手めえ!!」

「このクソガキが!」

  やはりこの手のバカは煽り耐性が皆無ですね。
  少し挑発すればすぐ殴り掛かって来ました。
  不良冒険者Aの拳を顔を傾け躱わし、ボディーにカウンターを入れます。
  不良冒険者Aを沈め、不良冒険者Bに向かって投げ飛ばします。 
  こちらに向かって来て居た不良冒険者Bは不良冒険者Aを正面から受け止めてしまい一緒に吹き飛んで行きました。
  先程から囃し立てていた周りの冒険者達が急に静かになりました。
  わたしが視線を向けると目を逸らします。
  ここは舐められない様にしなければいけません。
  わたしも好きで暴れている訳ではないのです。
  強さが売りの冒険者にとって舐められることは今後の仕事に悪影響を与える重要な要素です。
  決してガキと言われ怒った訳では有りません。
  わたしはいつだって冷静な淑女です。
  彼らを無視してカウンターへ向かいます。
  
「いらっしゃい。あなたかなり強いわね」

  さすが辺境の街の受け付け嬢さんです。
  わたしが暴れても動じる事なく対応してくれました。
  それに彼女自身もかなりの強者だと思います。何と無くですが。
  
  辺境とは伊達ではないのですね。
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