上 下
12 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

11話 昇格とわたし

しおりを挟む
  ガナの街の街に帰ってました。
  東門でギルドカードを見せて街に入ります。
  ギルドに向かう前に宿屋を取りましょう。部屋が埋まってしまうかも知れません。

「また、一泊お願いします」

わたしは小銀貨を2枚差し出しました。

「ありがとうございます。前と同じ部屋が空いていますよ」

宿屋の娘さんが鍵を渡そうとしてくれましたが、わたしはそれを断わります。

「少しギルドに用事が有りますので鍵は後でいただきます」

「分かりました」

  宿屋を後にするとギルドへと脚を向けます。
  ギルドの軋むスイングドアを抜けるといくつもの視線を感じます。

「ガキが何の用だ」

  ニヤニヤしながら下品を絵に描いたような巨漢が声をかけて来ました。
  お約束は昨日やりましたのでうざいだけです。
  昨日同様、男を無視してラティさんの居るカウンターに向かいます。

「おい、聞いてんのか!」

するとわたしに無視された男が顔を真っ赤にして、肩を掴んで来ました。どうしてこんなに沸点が低いのでしょうか?きっと前世は瞬間湯沸かし器とかに違い有りません。

「邪魔ですよ」

ドガ

  わたしの拳がニヤニヤ男の隙だらけのボディに吸い込まれ、男は意識を手放し、崩れ落ちます。
  小さなわたしの一撃で巨漢が声も出せず気絶した事に、こちらを伺っていた野次馬達も唖然としていました。
  よし!ここでクールな一言を決めておきましょう。

「わたしに声をかけたいなら、もう少しマナーを身に付けて来て下しゃい」

………噛んだぁぁあぁ!!

なんと言う事でましょう!
この大事な場面で!
わたし、痛恨のミスです。

野次馬達の生暖かい感じの視線に耐えながら少し頬を赤くしたわたしは平静を装い、生暖かい目をしたラティさんに報告を行います。

「お疲れ様です。問題は有りませんでしたか?」

「それが、ゴブリンは30匹以上居ました」

!?

「ほっ本当ですか!?30匹以上の群れなら上位種が居る可能性が高いです。
  直ぐに討伐に向かう冒険者を集めないと!」

「いえ。既に全部討伐して有ります。群れを率いていたのはホブゴブリンでした」

「ぜっ全部討伐したんですか?」

「はい。これが討伐証明と魔石です。
  依頼の完了と魔石の買取、それと序でに採取した、薬草やキノコも買取をお願いします」

  わたしはカバンから取り出した様に見えるようゴブリンの右耳と魔石、薬草やキノコを取り出しました。
  高価では有りますが見た目以上に物を入れることの出来る魔法鞄マジックバックは一般に流通しています。
  上位の冒険者や商人なら大抵は持っています。
   アイテムボックスが知られたら騒ぎになる可能性が高いですが、こうしておけば、皆ただのマジックバックだと思ってくれるでしょう。

「たしかにホブゴブリンの耳です。 
  本当にユウさんが1人で討伐したのですか?」

「はい。わたしの従魔は戦闘系ではないので闘ったのはわたし1人ですよ」

「ギルドマスターが認めるわけですね。では、ギルドカードをお預かりします。   
  魔石や素材の買取の査定をしますので座っておまちください」

  わたしは査定が終るまでカウンターの隅にある椅子に座って待ちました。
  10分くらいしてラティさんに呼ばれカウンターに行くと報酬と売却金を受け取ります。

「まず依頼の報酬が小銀貨5枚、依頼以外のゴブリンは常時依頼扱いで1匹につき銅貨5枚、28匹分で銀貨一枚と小銀貨4枚、ホブゴブリンは小銀貨6枚で薬草とキノコは全部で銀貨1枚と銅貨3枚です。合計で銀貨3枚、小銀貨5枚、銅貨3枚になります」

ラティさんから硬貨を受け取ります。
新人冒険者の稼ぎとしては中々の物です。

「それからユウさんはギルドランクEに上がりましたよ」

  わたしのギルドランクが上がったようです。しかもF、Gランクを飛ばしていきなりEランクです。
  ラティさんに聞くと、稀に冒険者になる前に兵士や狩人だったりすると低ランクとは言えない実力を持つ人が居る時が有るそうです。
  そんな人達が低ランクにいると実力の低い人達の仕事を奪ってしまう為、ギルドマスターの許可があれば、ある程度ランクを上げてしまうらしいです。
  兎に角これでわたしはEランク冒険者です。D、E、Fランクの依頼が受けられます。
  わたしはラティさんから受け取ったギルドカードを懐に仕舞う振りをしてアイテムボックスに仕舞い、お礼を言ってギルドを後にしました。

  冒険者達とギルド職員の生暖かい視線を受けながら。

泣きたいです。
しおりを挟む
感想 890

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

神々の間では異世界転移がブームらしいです。《サイドストーリー》

はぐれメタボ
ファンタジー
《番外編》 神々の間では異世界転移がブームらしいです。の番外編です。 《マーリンさんの学業奮闘記》 大賢者イナミの弟子、マーリンは師匠の命令でミルミット王国の学院に入学する事になった。 マーリンは、そこで出会った友人達と事件に巻き込まれて行く。 《迷宮都市の盾使い》 ミルミット王国最大の迷宮都市ダイダロスで迷宮に挑む冒険者達と全身鎧を身に付けた謎の冒険者の物語り。 《炎の継承者》 田舎に暮らす少年、カートは憧れの父親の背中を追って成長して行く。 《盃を満たすは神の酒》 エルフのジンとドワーフのバッカスは2人組の冒険者である。 彼等は神が醸造したと言われる伝説の酒を探して旅を続けていた。 そんな彼等が居た帝国の街に、とてつもない数の魔物が迫っていた。 《1人と1振り》 冒険者のヴァインはある日、奇抜な冒険者アークと出会う。 やがて共に旅をする様になった2人はミルミット王国のある街でとある依頼を受ける事になった。

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。 しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。 修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!? 乗客たちはどこへ行ったのか? 主人公は森の中で一人の精霊と出会う。 主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...