上 下
7 / 418
神々の間では異世界転移がブームらしいです。 第1部 《漆黒の少女》

6話 目的とわたし

しおりを挟む
  行商人のロキさんと冒険者のパーティ〈遥かな大地〉の3人と出会って1日が経ちようやくガナの街が見えて来ました。
  ジークさんも意識を取り戻し顔色も良くなって来ました。

「おぉ!あれがガナの街ですか」

 大きな外壁で囲まれた街はまさにファンタジーです。
 感動しました。

「ガナの街は辺境と王都の中継地として栄えた街です。
 辺境の珍しい素材などの掘り出し物も有るかもしれませんよ」

「辺境の掘り出し物ですか。楽しみですね」

  馬車が並んで3台は通れそうな大きな門で生きたまま捕縛した盗賊を犯罪奴隷として奴隷商に売る手続きと盗賊の頭を衛兵に引き渡す手続きをしました。
  犯罪奴隷を売ったお金と盗賊の頭の褒賞金を3人(護衛されていたロキさんと戦えなかったジークさんは辞退しました。)で分けて、身分証を持たないわたしは幾つか質問を受けた後、通行料の小銀貨1枚を払いガナの街に入りました。   門では嘘発見器的な水晶玉を期待していたのですが、普通の質問だけでした。

「それでは僕はここで失礼します。暫くの間はこの街を拠点に近くの町や村を廻るつもりなので、また何処かでお会いするかもしれませんね」 

「俺たちは治療院に寄ってからギルドに行くよ」

「兄さんが回復するまでは薬草採取とかをしながらこの街に留まる積もりよ」

「ユウ、世話になったな。お前が居なければ俺は死んでいる所だった」

「わたしこそ、いろいろと教えて頂き有り難うございました。
わたしはこのままギルドに行って登録をしようと思います。身分証が無いと不便ですから」

  ガイルさん達は案内すると言ってくれましたが遠慮しました。
  わたしの目的の為には1人でギルドに行かなくてはなりません。
   東門から街を貫く様に西門まで大通りが通っており、街に出入り出来る門は3箇所、東門と西門、北門です。
  わたし達が入って来た東門から大通りを街の中心に向かうと木造の大きな建物が見えて来ました。
杖と剣が交差した看板が掛けれています。

「ここが冒険者ギルドですか」

わたしの期待がどんどん膨らんでいきます。早速中には入りましょう。

   軋むスイングドアを開けてギルドにはいります。
 ギルド内は正面に受け付けの窓口が3ヶ所右側の壁一面に依頼書が貼ってあるボードがあり、左側にはギルドが経営している酒場が併設されています。
   まさにザ・ギルド。数々の物語で語られる典型的なギルドです。
  これならわたしの“目的”も期待できます。
  太陽が真上に来るこの時間はギルドに居る冒険者も少ない様ですが、今日は休みなのか、仕事終わりの打ち上げなのか昼間から酒場には何人かの冒険者がいます。
  少数ですが依頼ボードや情報ボードを確認している冒険者もいます。
  酒場で酔っ払ている人達は中々期待がもてます。
  カウンターに向かって歩いているわたしに、値踏みや興味、欲望など多くの視線か向けられています。

「よぉ、嬢ちゃん。ここは嬢ちゃんみたいなガキが来るような所じゃないぜ。さっさとママの所に帰りな」

「ククク、オイ、キース、可哀想だろ。ガキがビビってションベン漏らしたらどーすんだ」

「ギャハハ。違いねぇ」

!?
キターーーー!!
  これです!異世界!ギルド!と来たら絡んで来る不良冒険者です。
  今、わたしの異世界に行ったらやりたい事ランキング2位、『ギルドで絡んで来る不良冒険者』が実現しました。
  ここはクールに決めなければいけません。  
  わたしはニヤけそうになる顔をなんとか取り繕い、絡んできた2人の冒険者を無視して、左端のカウンターに居た受け付け嬢さんに話しかけました。

「すみません。冒険者として登録をしたいのですが手続きをお願い出来ますか?」

「は…はい。あの、手続きは問題無いのですが…」

受け付け嬢さんはわたしと不良冒険者達を交互に見ます。
  受け付け嬢さんの言いたいことは分かっています。ですが、これで良いのです。

「おいおい、俺の聞き間違えか?手めぇ見てぇなガキが冒険者だと、ナメてんじゃねぇぞコラ!」

「オイ、嬢ちゃん。悪い事は言わねぇからさっさと帰りな」

「ちょ、ちょっとやめて下さい。キースさん、ボリオさん。子供の言った事じゃないですか」

受け付け嬢さんが仲裁してくれようとしていますがわたしの夢を叶える為、そして、暫くこの街で活動するに当たって舐められない様にする為、ここは火に油を注いでおきます。

「さっきから五月蝿いですよ。大体ひとの事をガキ、ガキと。
わたしは15歳です。
もう成人していますよ。レディーに対する対応では有りませんね。
どんな教育を受けて来たのですか?ゴブリンにでも育てられたのですか?」

「このガキ!!」

わたしは殴り掛かってきた不良冒険者Aの足を払い身体が浮いた所に蹴りをいれます。
  不良冒険者Aは3メートル程吹き飛び静かになりました。

「キース!?てめぇ」

  不良冒険者Bは鞘に入ったままの剣を振り降ろして来ました。
  抜刀し無いだけの常識はある様です。右にステップで躱わし左足で剣を抑えます。

「ぐ!」

武器を抑えられ重心が崩れた不良冒険者Bを合気道の様に投げ飛ばします。

「ガァは!クソ!」

   不良冒険者Bの方はまだ意識がある様ですが全身を打ち付けた痛みで動け無い様です。
  まぁこんな物でしょうか。
  わたしは満足して、登録の手続きに戻ろうとすると、受け付け嬢さんがわたしを見て青い顔でプルプルと震えています。
  さっきわたしを子供扱いしたのでビビッてるようです。
  別に怒ってい無いと伝えようと一歩近づきます。

「ひぃ、ご…ごめんなさい!」

………少しやり過ぎたかも知れません。

「おい!これは、なんの騒ぎだ!!」

カウンターの奥からスキンヘッドで筋肉ムキムキの大男が出てきました。

これはまさか!!
再びわたしの期待感が高まります。

「ギルドマスター!」

そして、期待通りの受け付け嬢さんの言葉にわたしは、予想が当たった事を確信しました。
しおりを挟む
感想 890

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

神々の間では異世界転移がブームらしいです。《サイドストーリー》

はぐれメタボ
ファンタジー
《番外編》 神々の間では異世界転移がブームらしいです。の番外編です。 《マーリンさんの学業奮闘記》 大賢者イナミの弟子、マーリンは師匠の命令でミルミット王国の学院に入学する事になった。 マーリンは、そこで出会った友人達と事件に巻き込まれて行く。 《迷宮都市の盾使い》 ミルミット王国最大の迷宮都市ダイダロスで迷宮に挑む冒険者達と全身鎧を身に付けた謎の冒険者の物語り。 《炎の継承者》 田舎に暮らす少年、カートは憧れの父親の背中を追って成長して行く。 《盃を満たすは神の酒》 エルフのジンとドワーフのバッカスは2人組の冒険者である。 彼等は神が醸造したと言われる伝説の酒を探して旅を続けていた。 そんな彼等が居た帝国の街に、とてつもない数の魔物が迫っていた。 《1人と1振り》 冒険者のヴァインはある日、奇抜な冒険者アークと出会う。 やがて共に旅をする様になった2人はミルミット王国のある街でとある依頼を受ける事になった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使う事でスキルを強化、更に新スキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった… それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく… ※小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

器用さんと頑張り屋さんは異世界へ 〜魔剣の正しい作り方〜

白銀六花
ファンタジー
理科室に描かれた魔法陣。 光を放つ床に目を瞑る器用さんと頑張り屋さん。 目を開いてみればそこは異世界だった! 魔法のある世界で赤ちゃん並みの魔力を持つ二人は武器を作る。 あれ?武器作りって楽しいんじゃない? 武器を作って素手で戦う器用さんと、武器を振るって無双する頑張り屋さんの異世界生活。 なろうでも掲載中です。

処理中です...